【ソウル西脇真一】韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領は25日、青瓦台(大統領府)で開かれた会議で、海軍哨戒艦沈没事件について「わが軍は過去10年間、主敵概念を確立できなかった。この間、足元の脅威を見逃していた」と指摘した。「北朝鮮は主敵だ」との表現は、南北和解ムードの中で05年以降の「国防白書」から削除されていた。韓国メディアは政府が「主敵概念」を復活させる方針だと報じている。
北朝鮮を国防上の「主敵」とする概念は、94年3月の南北実務協議で北朝鮮側が「ソウルは火の海になるだろう」と発言したのを受け、韓国が国防白書(95年発行)に初めて盛り込んだ。
しかし北朝鮮は、金大中(キム・デジュン)政権時代の00年の南北首脳会談以降、同白書から「主敵」との表現を削除するよう強く要求。これを受け入れる形で、盧武鉉(ノ・ムヒョン)前政権時代の04年版国防白書(05年発行)から削除され、08年発足の李明博政権でも踏襲されていた。
25日付の韓国紙、文化日報は「概念を復活させる実務作業に入った」との政府当局者の言葉を紹介。北朝鮮の挑発には即刻、自衛権を発動するような状況下では不可避な措置だと認識しているためのようだと伝えた。
一方、朝鮮中央通信によると、南北軍事会談の北朝鮮側代表団長は25日、韓国側に「海上侵犯行為が続けば、われわれの海上水域を守るための軍事的措置が実行される」と警告した。
韓国は北方限界線(NLL)を黄海上の南北境界としているが、北朝鮮はこれを認めない立場で、NLLの南に独自に線を設定している。
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毎日新聞 2010年5月25日 21時08分(最終更新 5月25日 23時26分)