1、ユーロ防衛90兆円 異例の政策総動員 | NPO法人生涯青春の会

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79、欧州情報

欧州連合(EU)の情報が世界経済におおきな影響を与える段階になった。

よって、このブログで独立した項目で主要な情報を収録します。




 欧州連合(EU)の緊急財務理事会は10日、財政危機のユーロ導入国に対する最大7500億ユーロ(約90兆円)の大規模融資制度の創設を発表した。欧州中央銀行(ECB)も同日、ユーロ圏の国債購入を決め、欧州発の信用不安封じ込めのため、異例の包括対策に乗り出し、政策総動員の姿勢を示した。これを受けて、金融市場は落ち着きを取り戻しつつあるが、ギリシャの財政健全化の行方は依然、不透明さが残るなど市場の安定化には不安要素も根強い。【ブリュッセル福島良典、ロンドン会川晴之、坂井隆之】


 ◇がけっぷちで大同団結

 「ユーロを救うため大同団結した」。約11時間に及んだEU緊急財務相理事会を10日未明に終えて、フランスのラガルド財務相は欧州メディアに語った。EUが巨額融資制度を発表し、ECBも「禁じ手」とされてきた国債購入を決定。市場に驚きが広がり世界連鎖株安にひとまず歯止めがかかった。だが合意に至るまではさまざまな駆け引きが繰り広げられ、異例のロングラン会議だった。


 EU筋によると、融資の当初案は、08年のリーマン・ショック後に経済危機に陥ったハンガリーやラトビアに適用した救済基金(500億ユーロ)に600億ユーロを新たに加える規模が想定されていた。EUと国際通貨基金(IMF)がすでに合意しているギリシャ一国への支援額(総額1100億ユーロ)並みにとどまり、信用不安が財政難のポルトガルやスペインにも波及する中、市場から「力不足」と受け止められ、週明け10日の市場が大荒れとなる恐れが強かった。

 このため、欧州委員会は財務相理事会で支援額の上限を示さない案を示した。これに対し、大きな負担を迫られるドイツは反対し、上限を設けるよう強く求めた。ユーロを採用しない英国は「ユーロ圏で解決すべき問題」(ダーリング財務相)と距離を置いた。


 EUはギリシャ支援でも足並みの乱れが目立ったが、危機拡大を目の前に「背水の陣」に追い込まれており、決裂は許されなかった。最終的にユーロ圏諸国が政府保証して市場から4400億ユーロを調達し、融資額を確保することで折り合った。

 一方、ECBの国債購入は、トリシェECB総裁が6日の会見で消極的な姿勢を示していた。だが、バローゾ欧州委員長がトリシェ総裁に電話をかけるなどして政策協調を探った。


 EUやECBの対策を巡っては、日米からも強い働きかけがあった。先進7カ国(G7)の財務相・中央銀行総裁は6日夜以降、断続的に電話協議を実施。信用不安の拡大を危ぶんだ日米とカナダは「十分な規模の措置を取ってほしい」と欧州側に求め続けた。

 9日にはオバマ米大統領がドイツのメルケル首相、フランスのサルコジ大統領と相次いで電話協議した。ホワイトハウスによると「EU各国が市場の信頼を回復させる断固たる措置を取ることが重要」との認識を伝えたという。EUもECBも危機収束に向け政策協調を優先させた形だ。


 トリシェ総裁は10日、出張先のスイスで会見し、「政治的圧力で国債購入に踏み切ったのではない」と自主的判断を強調する一方、購入決定は理事会の全会一致ではなく、異論があったことも明らかにした。

 ◇危機収束へなおハードル

 震源地の欧州金融市場では前週末、金融機関が短期資金をやりとりする短期金融市場の金利が上昇し、ポルトガルやスペインの金融機関の一部は、上乗せ金利を払わなければ資金が調達しにくい状況だった。金融機関の資金繰りが逼迫(ひっぱく)すれば、信用不安が世界的に連鎖する恐れがあり、「EUやECBが大胆な対応に踏み出さないと、金融危機が再燃する状況に近づいていた」(市場筋)との見方が強まっていた。


 これに対し、EUは最大7500億ユーロの融資の枠組みを示した。これは、市場で予想されていた規模を大きく上回り、ギリシャやポルトガル、スペインなど財政難のユーロ導入国の支援に必要と試算される資金5000億~7000億ユーロもまかなえる。このため「他国への危機波及は封じ込められる」(第一生命経済研究所の田中理氏)と評価する声が多い。

 しかし、ギリシャでは、緊縮財政に対する国民の反発が強く、財政再建を実現できる保証はない。ECBは10日に国債購入を開始したが、購入規模などは未定。ECBが慎重姿勢を示してきただけに「購入が一時的となる可能性も残る」との指摘もある。格付け会社はギリシャやポルトガルなどの国債格下げも検討しており、格下げで国債価格が再び急落し、金融機関が大量の国債購入をECBに求めた場合も買い支えるのかどうかは「今後の対応を見なければ判断がつかない」との見方もある。


 また、日米欧の中央銀行が10日、短期金融市場にドル資金を再び協調供給すると発表したのは、市場の不安を沈静化させる狙いだが、欧州での短期資金金利はまだ高水準にある。支援策の実効性やギリシャの再建計画に疑念が生じるなど「ひとたび悪い材料が出てくれば、再びユーロが急落する可能性が高い」(三菱UFJ信託銀行の酒井聡彦氏)との不安が残る。


 ◇市場に好感広がる

 ユーロ防衛の包括対策が打ち出されたことで、市場の不安感は弱まり、10日の米ニューヨーク株式市場でダウ工業株30種平均が一時400ドル以上上昇するなど、世界的に株式や債券、ユーロを買い戻す動きが広がった。


 10日の東京株式市場の日経平均株価終値は前週末比166円11銭高の1万530円70銭、TOPIX(東証株価指数)は同12・90ポイント高の944・64と、3営業日ぶりに反発。東京外国為替市場は同日午後5時現在、前週末の1ユーロ=117円台から121円台まで戻した。


 10日の欧州金融市場では、ギリシャ国債10年物の利回りは、前週末終値の12%台から7%台に下落(価格は上昇)、ポルトガル、スペインなど深刻な財政赤字の国の国債も買い戻された。


 株式市場でも、スペイン株式市場が12%を超す上昇となったほか、ロンドン株式市場のFT100が4%、フランスのCAC40が8%以上、ドイツのDAXが4%上昇するなど、大幅に反発した。

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毎日新聞 2010511日 東京朝刊