2010年4月28日 毎日新聞
政府の行政刷新会議(議長・鳩山由紀夫首相)は28日、独立行政法人を対象にした「事業仕分け第2弾」前半の最終日の作業を行い、15法人41事業のうち18事業を廃止と判定した。23日からの4日間の累計では、47法人149事業のうち、34事業を廃止とした。毎日新聞の集計では、廃止事業の国費等投入額は計619億円(09年度)だった。国鉄清算業務の利益剰余金1兆3500億円など資産の「国庫返納」の判定も16件、「事業縮減」が51件に上ったが、返納や縮減の規模は明示されず、歳出削減効果は不透明だ。
28日の作業では、国立大学への資金貸し付けなどを行う「国立大学財務・経営センター」の8事業のうち主要7事業を廃止とし、事実上の解体宣告となった。
枝野幸男行政刷新担当相は作業終了後の記者会見で「今までの独法改革は組織がどうあるべきかから入り、いらない部分も含め全体が残った」と語った。公益法人を対象にした後半を5月下旬に行ったうえで、6月にも独法の統廃合を含む改革案をまとめる方針だ。
他の法人と重複する事業も重点的に取り上げられた。東京23区外に本部を持つ3独法が23区内に設けた「東京事務所」では、文科省の担当者が「(統合で)改善が図れるなら検討したい」と白旗を掲げ「事業縮減。会議室の共用化」と判定された。
前半の対象は当初151事業だったが、時間不足で2事業減の149事業になった。
「政権浮揚」の期待をかける首相は28日、仕分け会場を訪れるパフォーマンスを見せた。しかし小沢一郎民主党幹事長の問題などで、成果は打ち消され気味だった。【影山哲也、小山由宇】
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事業仕分け:第2弾前半終了 「突っ込み足りない」 傍聴者、不満の声
◇「議論かみ合った」評価も
国から3兆円以上の補助金などが流れる独立行政法人の事業を対象にした「事業仕分け第2弾」の前半戦が28日、4日間の議論を終えた。会場は傍聴者であふれ、民間業者が行ったインターネット中継でも書き込みが絶えなかった。官僚たちが立ち往生した場面も目立った昨年11月の第1弾と比べ、落ち着いた議論も多かった今回の仕分けだが、傍聴者や仕分け人、専門家の目にはどう映ったのか。【長谷川豊、森禎行】
東京・日本橋の会場を訪れた傍聴者は、4日間で約3200人に上った。松山市の無職、吉村伊久雄さん(65)は「議論を聞いて必要ないと感じた事業も、結論は『事業縮小』で、まだ甘いと思った。結論通りの改革ができるのかという心配もある」と話す。千葉県富津市の無職男性(72)も「民主党は独法原則廃止と言っていたはず。原則ゼロの視点が足りないと感じた」と不満そう。埼玉県春日部市の無職、進藤実さん(66)は「短い時間で議論するのは難しいが、仕分け人側も突っ込みが足りない」と注文を付けた。
ネット中継でも、連日のように30万人以上が議論を見守った。「国際観光振興機構」が海外に13の事務所を持つ是非が問われたこの日の議論で、仕分け人が「現地事務所スタッフの給料も国民の皆さんに教えていただきたい」と切り込むなど、ネットを意識した発言も目立った。議論が沸騰すると、ネットの中継画面にも書き込みが相次いだが、「ネットを意識しすぎて、わざとらしいと思った」(千葉県の30代の無職男性)という声もあった。
一方の仕分け人。土居丈朗・慶応大教授によると、居丈高だという批判もあった前回のような誤解を招かないよう、事務局から事前に「こうした方が意見を聞いてもらえる」というニュアンスのアドバイスを受けた。土居教授は「真摯(しんし)に議論してコメントしようと心がけた」と明かした。
「構想日本」の中村卓・政策担当ディレクターは「金の話が中心だった前回よりも事業仕分けらしくなった。比較的地味だけど、中身が濃い議論ができた」。福嶋浩彦・前千葉県我孫子市長も「省庁が事業は必要とだけ主張した前回よりも議論はかみ合った」と評価したが、「要不要を判断しやすい国の事業に比べ、独法は事業自体は必要なものが多く、議論するのは難しかった」とも付け加えた。
専門家はどう見るのか。独法制度に詳しい東京大の山本清教授は「制度をどうするのかという議論がないまま、国民のいらいらを解消するために小粒な独法を狙い撃ちにしていると感じた。本来は国会でやるべき議論で、公務員への信頼低下はサービス低下につながる恐れもある」と指摘した。
◇公募で4月就任、理事長がっくり 事業ほぼ全廃
大学病院などに資金を貸し付ける「国立大学財務・経営センター」(千葉市美浜区)は、議論された8事業のうち、7事業が廃止と判定され、残る一つの「東京連絡所の運営」も別法人との統合を求められた。ほぼ全業務が不要と判断された形だ。
前三重大学長の豊田長康理事長は、公募を経て4月に就任したばかり。「大学と病院の役に立つことが地域住民のためと張り切っていたのに大変残念。過去のことが話題になって、私のプランニングが話題にならなかった」とショックを隠しきれない様子。センターの存続が危ぶまれることについては、「事後処理もしないといけない。改革のために来たのにつらいものがある」と言葉少なだった。【小山由宇】
毎日新聞 2010年4月29日 東京朝刊