11、「使いやすく」の積み重ねで100万台突破 PFUのスキャナー | NPO法人生涯青春の会

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                       2月17日 11:33ビジネス:最新ニュース


 身近にあふれる書類や名刺、雑誌の切り抜きなどを手軽に電子化できるドキュメント(文書)スキャナー。「ScanSnap」シリーズで個人向けドキュメントスキャナーの市場を切り開いてきたのがPFUだ。宮内康範(みやうち・やすのり)は同社のハードウエア設計者として20年以上にわたってイメージスキャナーの開発を担当し、ScanSnapを作り続けている。(千葉はるか)
 PFUが業務用のイメージスキャナー事業に参入したのは1985年。宮内はその3年後に入社し、業務用スキャナーの紙を搬送する機構や心臓部である光学ユニットなどを開発してきた。
 「入社して間もないころのことで今でも覚えているのは、先輩から『紙は生き物だ』と言われたこと。『何を言っているんだろう?』と思いましたが、実際に開発に取り組んでみてその言葉の意味がわかりました。まさに、紙は生き物なんです」
 紙のコシや摩擦、くっつき具合などは、温度や湿度といった周囲の環境によってがらりと変わるのだという。そしてもちろん、搬送すべき紙の種類は無数にある。
 「当社はグローバルにイメージスキャナーを展開しているので、開発現場では世界中からありとあらゆる紙を集めています。実は、この紙をそろえるノウハウがPFUの強み。新興国のあまり質のよくない紙も含め、多くの紙をさまざまな条件の下でテストしています。紙の状態は春夏秋冬で変わります。搬送技術にはたくさんのノウハウが詰まっていますが、基本は超アナログな世界。ここまで馬鹿正直に粘り強くやっているメーカーは、ほかにないと思いますよ(笑)」

■第一号機は在庫の山に
 社内で「個人向けのスキャナーを開発しよう」という気運が盛り上がってきたのは96年ごろのことだった。
 「紙の情報を電子化できれば便利なのだから、一般の人にも使ってほしいと思っていたんです。業務用スキャナーの技術を使い、98年に個人向けドキュメントスキャナー『Pragma(プラグマ)』を発売したのですが……」
 まったく売れず、在庫の山ができてしまった。初の挑戦は惨敗に終わったのだ。
 しかし宮内ら開発チームのメンバーはあきらめなかった。なぜ売れなかったのか。その理由を探るべく、ユーザーの声を集め、在庫を社員にばらまき、実際に使ってもらって意見を募った。
 「ユーザーの声からわかったのは、使い方が難しすぎるということでした。Pragmaは、パソコン側からスキャナーの設定画面を開き、条件を設定したうえでパソコンの画面のボタンを押すという手順が必要でした。フラットベッドスキャナーのように『写真をきれいに読み込んでレタッチする』といった目的があって、1枚だけスキャンするのであれば、ユーザーはこうした手間も厭いません。しかしオフィスにある大量の書類をまとめてスキャンするのに、いちいちパソコンの画面から設定するのは面倒です。『これでは使えない』という声を受けて、こうした手間を解消することに注力しました」
 01年、Pragmaの失敗を糧にScanSnapシリーズの第1号となる「fi-4110EOX」を開発した。紙をセットし、本体のボタンを押すだけでスキャンできる手軽さが受け入れられ、個人向けドキュメントスキャナーという新市場への足がかりができた。

■机の上に置く製品はデザインも重要
 しかしScanSnapの本格的なブレイクは、後継機の登場を待つことになる。
 「fi-4110EOXを出して、やっと机の上でドキュメントスキャナーを使ってもらえるようになってきた。では、もっと多くの人に使ってもらうにはどうするかと考えた時に、今以上に使いやすくてカッコいいデザインにしなければダメだと気づいたんです。要は、ちょっとダサかった(笑)」
 後継となる「fi-5110EOX」は、ハードウエアを一から見直して開発を進めた。ドキュメントスキャナーは常に机の上にありながら、使う時間は短い。サイズが大きいとどうしても邪魔に感じられてしまう。そこでまず、従来機よりコンパクトにすることが絶対条件となった。使っていない時の圧迫感をなくすため、原稿台を畳んでおける機構を採用することも決まった。
 「筐体を小さくし、それまで出しっぱなしだった原稿台も畳むには、内部を相当小さくしなければならない。原稿台には用紙ガイドがついていて、それが干渉しないようにする必要もある。理想とするデザインを実現するには、最も場所をとる光学ユニットの体積を20%カットしなければならない計算でした」
 宮内は原稿からCCDセンサーまでの読み取りの距離をできるだけ短くするため、それまで採用していたレンズの変更を決意。ScanSnap専用の短焦点レンズを独自開発することにした。だが、短焦点の広角レンズでは画像周辺に歪みが生じてしまう。
 「一眼レフカメラの世界なら、お金をかけて歪みを補正する特殊ガラスレンズを追加するのが一般的です。しかし、スキャナー用レンズでそれをやってしまうとコストに響く。そこで、社内に『レンズを1枚外すから、歪みをソフトで補正できないか』と呼びかけました。うちには優秀なソフトウエアエンジニアがたくさんいますから(笑)」
 ソフトウエアの担当者と二人三脚で開発を進め、宮内は小型化しながら歪みの少ない画像を出力できる光学ユニットを完成させた。
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