2009年10月16日毎日
地球温暖化がこのままの勢いで進むと、栄養不足の乳幼児が2050年には、温室効果ガス排出削減で気温が上昇しない場合に比べ2500万人以上増えるとの分析を、日本など各国が出資する「国際食糧政策研究所」(本部・ワシントン)がまとめた。生産量の減少と価格高騰で、人々が食糧を得るのが難しくなるのが原因。温暖化に伴い食糧生産の変動が栄養状態に与える影響を詳細に分析したのは初めてという。
国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」などの予測に基づき、50年の地球の平均気温は00年に比べて約1~2度上昇し、降水量は陸地の約2~10%で増えると想定。研究所が開発したモデルを使い、32種類の穀物と畜産物の生産量や価格への影響をコンピューターで分析した。
その結果、穀物に高温障害などが発生し、途上国での生産量は小麦が30%、コメが15%減ることが分かった。また小麦の価格は、現状の気候のままでも人口増などに伴う需要増で40%高騰するが、温暖化が進むことで3倍近く高くなると推測した。さらに、コメは温暖化なしの場合でも60%高騰し、温暖化が進んだ場合は2.2倍になるとした。
現在、栄養が不足している5歳未満の乳幼児は1億4800万人。温暖化がなければ、穀物の生産効率改善などもあって50年には1億1300万人に改善するが、温暖化防止策が不十分の場合には2500万人増の1億3800万人と予測している。
研究所は「農業は最も気候変動にもろい産業だ」と指摘。温暖化に伴う栄養不足を抑えるには、高温に強い穀物の研究開発や灌漑(かんがい)設備の整備など70億ドル(約6300億円)が必要と試算している。【田中泰義】