あるオーディションにレーベル担当者として審査員で参加してきた。

審査員として参加して、俺も偉そうな事いえるような立場な人間でもないけど、自分達のレーベルでやるならどんな子がほしいか、この子達に何を言ってあげれば成長のきっかけになってくれるか?そんな事を考えながら真剣に見させてもらった。

色んな子がいたけど、1人の女の子をクローズアップしたい。


その子は同じオーディションの前回(半年前)の時は、書類選考で 落ちたようだ。

それでも自分は夢を掴みたいという思いから、このユニット企画の、一般参加の有料レッスン生として参加した。



しばらくして、ダンスレッスンをお願いしてるKACCHANから報告が入る。

『1人ヤバい子いますよ!』

もちろん何がどう優れているのかを聞く。

たった週一度のレッスン。
当然、教えたい事を全て教える事は出来ない。
だから必然的に宿題が出されるわけだが、彼女は誰よりも完璧に仕上げてくるらしい。

ことダンスだけで見れば、すでに踊れる子も何人かいるにも関わらず、ど素人の彼女は必死に食らいついてきてるという。

もちろん人前に立つ以上、努力するだけではどうしようもない。

事実、最初のメンバーから追加のメンバーをレッスン生から選ぶ時に彼女の名前はあがらなかった。



しばらくして、彼女に転機が訪れる。

それまでは6人で考えていた構成を7名にする事が決まった。
そこで再度メンバーを決定するためのスクール内オーディションを開催。

彼女はメンバー入りを掴み取った。


しかし、あくまでもサポートメンバーであり、自分が露出される事はなかった。


それでも腐らずに、コツコツと自分を信じて頑張ったのだろう、少なくともサポートメンバーから外される事はなかった。



そして今回。
同企画にして2度目のオーディションが開催される。
普通は同じ企画で2回も3回もオーディションを行う事はあまりない。

あるきっかけがない限りは。


それは活動メンバーが抜けたというきっかけ。


あの日。
一次審査で書類で落とされた、あのオーディションと同じ状況が、再び彼女のもとへとやってきた。



俺の手元には、1回目の時の応募資料がある。

名前がコールされ出てきた彼女。

手元の資料に思わず目を疑った。


その資料写真には、わずか数ヶ月前の彼女がうつっている。

目の前の彼女とはまるで別人である。

書類選考で落ちてしまったのも納得の写真。

写真のとり方が悪い?

いや、それだけじゃない。

では、整形でもしたのか?
俺は整形に関しては否定しない派だけどね。

目も、鼻も、口も、輪郭も、それ自体は変わっていないようだった。というより、整形でもすればまず講師が気づくだろうし。


何というか、人間自体の持つエネルギーが変わったような感覚。
見た目だけのハリボテじゃなく、中身からしっかりと湧き出てる。そんなイメージ。


オーディションの工程が終了し、いよいよ審査発表。


彼女は見事 優勝を勝ち取った。




彼女は時間が許す限り、ひたすらダンスに歌に練習を重ねたようだ。



イチロー選手の話を思い出す。

努力なんか一度もしたことがないと天才は言う。

ただ、野球が好きだったから、ひたすらボール投げてたし、ひたすら素振りをしていた。人が帰った後でもやっていた。


それを人は努力というのだろうか?


答えはいつだってシンプル。


好きだからやってる!


好きな事やってる時は言い訳なんてしない。あるのは向上心のみだ。


Do you like ~?