私たちの身体には206個の骨があります。その中でも、頭蓋の中心にある「蝶形骨」と、骨盤の中心にある「仙骨」は、特に重要な働きを担っています。武道や身体操作の分野では、仙骨の重要性はよく語られますが、蝶形骨の役割については、あまり言及されてきません。しかし、蝶形骨の働きは仙骨に劣らず、場合によってはそれ以上に、身体全体の“同期”に影響を与えていると考えられます。

 

古来より武道においては、「観音の目」という目の使い方が重視されてきました。この観音の目とは、焦点を一点に合わせるのではなく、全体を包むように広く柔らかく見る目の在り方です。この視覚のあり方は、実は蝶形骨を通して頭蓋全体、さらには上半身の感覚の広がりに密接に関係しているのです。

伝統的な装身具──たとえば、たすき、帯、鉢巻き──は、身体のエネルギーを整えるために用いられてきました。これらは、仙骨と蝶形骨を結ぶライン、すなわち下半身と上半身の同期を助けるための工夫でもあります。中でも「鉢巻き」の巻き方には、蝶形骨との関係が特に深くあります。

 

現在の鉢巻きは、後ろで結ぶのが一般的ですが、古い時代の鉢巻きは前で結ぶものでした。前で結ぶことで、目元、額、こめかみ、さらには蝶形骨周辺の意識が高まりやすくなるのです。これは観音の目、つまり“柔らかく周囲を感じる視野”をつくりやすくします。

 

このように、蝶形骨を意識して視覚を整えるとき、胸部もまた自然に開き、呼吸が深くなります。つまり、「観音の目」と「胸部の開き」は同期し、上半身全体が調和してくるのです。これが「Synchro Soma(シンクロソーマ)」──身体の各部が一つの意識に“同期”すること──の核心にほかなりません。