僕と優はタクシーで渋谷から六本木へ移動している。

差し込む光の線が虹彩を縦に横切って残像をかすかに残して消えていく。

街を彩る光はいつもよりも人工的に感じる。

優も僕も無言だが、ここに緊張感は欠片も無く心地の良い静かな空気が流れている。



「ここで良いです、ありがとう」

優は自然な微笑みで恐ろしく美しく、透き通る声で言う。

「お釣りはそうだな…奥さんに何かプレゼント買ってあげて欲しいからあげちゃいます、運転ご苦労様」





僕らは六本木ヒルズの中枢、森タワーが見える場所に居る。

優は7階建てのビルを指差してあそこだよ、と言う。

「さっきのタクシーの奥さんにって?」僕は優に尋ねる。

「…え?…ああ、あれはさっきの運転手さん…今日が結婚記念日だったんだよ、奥さんは家でなんだかドキドキして帰りを待ってるのに旦那さんは忘れてしまってるって…そんなイメージ見えたから…まぁ俺があんな手助けしても実際にどうなるかは分からないよ、可能性は無限だし…俺があの人にしてあげれるのはあの程度のきっかけをあげれる位かな、それとあれは善でも偽善でもないんだ」


僕は優からまた以前の様な神々しいオーラを感じる。