今回は、10月に飛行機の機内映画で見た3つの「殺し屋」映画に関して

 

 

「ザ・ファブル」

週間ヤングマガジンで連載中の南勝久氏の同名の漫画の実写化

劇場で公開されたのは今年の6月

 

どんな相手でも6秒で始末できるという伝説の殺し屋「ファブル」が1年間大阪で「普通の」人間として生活する中で、巻き起こる出来事に殺しを封印して対応する

という話

 

この機会に原作の単行本19巻すべてと、いまのところ最新話である236話まですべて読了

面白かったので一日ですべて一気に読むことができた

もともと、日本のこの手の「裏社会」物は筆者の好みではないのだが、このお話に関してはいろんなところをくすぐられる魅力が満載なので拒否反応も起きなかった

一番の魅力は、なんといっても主人公佐藤明の「なめてた相手が殺人マシンでした」ぶり

 

今回の映画化では最初のかたまりの話(単行本だと1巻から7巻)になる

 

映画自体を一言で言うと

岡田准一の類まれな身体能力によって主人公の魅力が十分に表現されているが、細かい部分はアラだらけ

という感じだろうか

 

格闘場面はとにかくすごい

「ボーン」シリーズで有名なアラン・フィグラルツ氏と実に数種類の格闘技の師範の資格まで持つ岡田准一が共同で構成した殺陣は、今の日本映画の水準をはるかに超えているし、細部までのこだわりが見える

さらに、それを岡田が自分の身体でビジュアル化することに成功している

 

だが、それ以外の部分に脚本や編集上のアラが多すぎなので映画全体で見ると単純にどっぷりはまり込むということはできない

また、最初の大量殺戮シーンは原作では数人を相手にする程度の内容をなぜにここまで拡大したのかという疑問がわくし、一番重要なクライマックスの戦闘シーンも最初がすごすぎるのでかなりスポイルしてしまうような状況にもなってしまっているのが残念

 

おそらくハマる人には最初のシーンからハマる映画であろうが、ダメな人はまったく受け付けないだろう

 

 

 

「ジョン・ウィック チャプター3 パラベラム」

 

キアヌ・リーブス主演のジョン・ウィック・シリーズの3作目で、現在も劇場公開中

 

この主人公も「3人の男を鉛筆だけで始末した」と言われる伝説の殺し屋で第一作時点ではすでに引退している

 

このシリーズはこれまでの2作が好きだったので、当然この3作目も劇場に見に行こうと思っていたのだが、乗った飛行機内で公開とほぼ同時に見ることができた

 

これも「ザ・ファブル」と同様に、主人公の超人的なスキルを楽しむものだと思うのだが

2回3回と回を追うごとに、相手がどんどん強くなるのでその部分はどんどん薄められてしまっている気がする

そういう意味では「なめてた相手が~(以下略)」を楽しむには1作目が最適であることは間違いない

 

主人公が殺し屋の組織に属する伝説の殺し屋であること以外に

戦闘時にそこら辺にあるものを使用すること

クラシックカーに乗っていること(ファブルがハコスカGT-Rでジョン・ウィックがクラシックのマスタング)

動物を飼っていること(ファブルがインコでジョン・ウィックは犬)等

相似点が多い

ファブルの原作が連載開始したのも、ジョン・ウィックの1作目は公開されたのも2014年であることから、どちらかが参考にしたということも考えられないのだが、この年は他にも同じような超人的なスキルを持つ主人公の映画である「イコライザー」も公開された当たり年だった

 

 

「Diner ダイナー」

 

平山夢明の原作を元に蜷川実花監督が作った極彩色の異形の空間を楽しむ映画

これも元殺し屋がコックを務める殺し屋組織ご用達のレストランを舞台としたものだが、上の2つとはかなり雰囲気が異なる

 

そもそも最初っから現実のリアリティというものはどっかに投げられていて、現実にはどこにもいない登場人物たちが、現実ではないかなり小さな世界の中でバタバタするだけなので筆者としても最後まで見るのが辛かった部分はあった

 

こんな感じずっと昔に味わったような気がすると思ってよく考えたら

1982年の長嶺高文監督の「ヘリウッド」だった

この映画、今では伝説となったエア・ドーム移動映画館「シネマ・プラセット」で見たのだが、ストーリーも画面もぶっ飛んでいて、当時のまともな神経では楽しむことはできない映画だった

当時、"イケてる"文系少年たちは、黒テントや状況劇場で芝居を観て、ハリウッドランチマーケット(聖林公司)で雑貨を買い、キース・へリングのポストカードを送ったりしていた

それらの流れ着く先として鈴木清順監督の『ツィゴイネルワイゼン』を上映するために1980年に「シネマ・プラセット」は作られた

「ヘリウッド」はそんなイカレタ場所で上映されたのだが、その後一度も見返してないのでストーリーなどは忘れたが、勢いだけでできてるような映画だった

遠藤賢司主演で斉藤とも子、佐藤B作等の出演で、ストーリーのキーとなるアップル君を演じたのはデーモン閣下になる前の小暮隆生

 

今考えれば「ロッキーホラーショー」の系譜にあるものであることは確実だが、チープであった

 

で、「ダイナー」に戻るが、結局は「シネマ・プラセット」の前段の70-80年代のアングラ劇団をけん引した蜷川幸雄の世界を娘が再構築したという志の映画なので、前の2つ以上にダメな人は最初からダメだろう

 

筆者もダメだったのだが、我慢して観続けてゆくとなんとも言えない感覚に陥って、クライマックスの蜷川御用達の藤原竜也と真矢ミキ率いる宝塚卒業生軍団の戦闘にいたっては、半分楽しんでみていた

 

にしても、振り返ってみると一番印象に残っているのは藤原でも宝塚軍団でもなく、窪田正孝だった

 

 

ということで、今回は「殺し屋」映画3本を紹介したが、まあどれも観客を選ぶえいがであることは間違いはない

 

 

そのうち、宝塚卒業生に関しても何か書こうと思っている