「ホステル」シリーズのイーライ・ロス監督

オーシャンズシリーズでおなじみ、ブルース・ウィリス主演

1974年にチャールズ・ブロンソン主演で作られた「狼よさらば」のリメイク

お話としては、強盗によって、妻を殺されて、娘を意識不明の重体に追い込まれた主人公が警察の無力を知って偶然手に入れた銃を使って自分で街の無法者たちを始末して行くという物語


先月のロサンゼルス旅行の時に機内映画として鑑賞
今回10月のラインナップからは外されていた


1974年の「狼よさらば(原題 Death Wish)」という映画はビジランテ映画、復讐映画というジャンルを確立したという意味では歴史に残る映画であり、筆者は昔テレビの洋画劇場で見たのだが、一般人が変わって行く様子に衝撃を受けた

ヒットに乗っかってその後全て同じ主演で1994年の第5作目までなんと20年に渡って作り続けられたが、毎回ストーリーは同じで
主人公は新しい家族と新天地で頑張ろうとするとギャングに襲われて家族を奪われ、またビジランテ行為を行うという流れ


主演のチャールズ・ブロンソンといえば当時日本では俳優というより男性化粧品「マンダム」のCM(大林宣彦演出)で有名であった
あまり感情を表現するのが上手くないので逆にこの映画のように感情を押し殺して禁断の行動に出るところにそこはかとない哀愁があった

前回の記事で記述したように、筆者はシリーズ物の映画の過去作を見ないで新作を観るのが嫌いなのだが、今回に関してはとりあえず、最初の作品とおそらく2作目までは見たことがあったが、それ以降は観たことがなく、いつもの動画配信サービスでも見つけることができなかったので、泣く泣く諦め



で、今回の「デス・ウィッシュ (原題 Death Wish)」
結論から言うと74年の映画化の正統的な継承であり、映画的なダイナミズムにおいてもセリフや撮り方も現代でこの原作をやるならこのやり方しかなかっただろうと思わせる優れた作品だった

主演がブルース・ウィリスというところも絶妙
この映画が取られる前に何度か「狼よさらば」のリメイクの話があったようで
シルベスター・スタローンの監督及び主演
この映画の脚本家でもあるジョー・カーナハンの監督でリーアム・ニーソン(ジョー・カーナハン監督作の「特攻野郎Aチーム」「The Grey 凍える太陽」での主演)主演
の可能性もあったらしいが、スタローンもリーアム・ニーソンもこの話には無条件に強すぎる
また、もっと若い俳優でもダメだったはず
ブルース・ウィリスの普通の親父なんだけど状況によってとんでもないことをしかねない感じが合ってる

前作との比較によって今回の映画化の方向性が浮かび上がってくる

1 主人公の職業が前作は大手建設会社の部長で、今作ではベテラン外科医
本来は人の命を救うのが使命である医者が人の命を奪う選択をするようになることが前作よりも決断の重さを感じさせている

2 銃の入手方法が前作ではアメリカの開拓時代の精神的伝統を残す西部に住む客からの贈り物としてもらうのに対して、今作では運び込まれた患者の持ち物であったものを不法に奪う
ここは次の第3の変更点にも関わってくるのだが、前作での受動的な入手から能動的な入手に変わっていることは主人公が禁断のエリアに踏み込む決断を自身で行ったことを強調することになる

3 主人公がビジランテ行為を行う精神的なきっかけが前作は前述の西部の客からの開拓時代の精神を聞くことであったのに対して、今回は殺された妻の父親が自分の生活を脅かすものに対して厳然とした態度で反撃するのを目の当たりにすることによる
これは、身近な人物が行動によって示す「目には目を」の精神がよりダイレクトに主人公に影響を与えることになってくる

4 前作の主人公は妻を殺した強盗たちには直接復讐をしないが、今作では妻を殺害したグループの結局ほぼ全ての人物を殺害する
ここが今回の一番大きな改変点であろう
これによって主人公の目的が結局は復讐に帰結することを明確に示すことになる

他にもラストシーンの警察の決定とか色々あるのだが、これだけ見てもわかるのは
今作では「理不尽に家族を奪われた主人公が自警行為に進むのと、理不尽に人を傷つけて自分の欲望を満足させるギャングのどっちが守られるべきか」ということを観客に考えさせることを主眼にしていることであろう


(一部追記、変更の上再掲載)