さんたろす?」
「ちがうよ、リュウタ。サ ン タ ク ロー ス。」
「さ ん た ろーす?あたらしいイマジン?」
「おーい小僧はサンタもしらねえのか!」
「さんた・・・?」
「ほらほらリュウタロちゃーん♪」
すっかりクリスマス気分のナオミちゃんが、
色鮮やかな絵本を持ってくる。
「この、おじいさんがサンタクロースですよ~」
「わあ、ご本、読んで読んで!」
「ちぇっ、ガキが」
「モモタロスは黙っててよ。」
「はいはい、サンタクロースってのは、
クリスマスイブの夜、子ども達にプレゼントを届けてくれる、おじいさんのことだよ」
と、僕。厳密に言うとそれだけじゃないけど。
子どもにはそれくらいでいいよね。
「わーーーーーあ!プレゼント!?」
「朝目が覚めると枕元にプレゼントが置いてあるんだよ」と良太郎。
「あれ?靴下の中じゃありませんでしたっけ?」
とナオミちゃん。
「ぷれぜんとってなんや、食えるんか」
キンちゃん・・・。
みんな好きずきに言いたいことを言う。
が、プレゼントに興味津々の子どもは気にしていない。
「ねえねえ、ぼくのところにもくるかなあ!」
紫色の瞳をきらきらさせる子どもに、みんなやさしく目を細める。
が、
「知らねえのか小僧。サンタさんってのはなぁ、
いい子のところにしか来ねえんだよ!」
・・・大人げないよ、先輩。
「そうなの・・・?」
小さい顔が一瞬で曇る。
「確かにそうだね。」
良太郎がほほえむ。
「ぼく・・・」
「ぼくいい子だよね・・・?」
「「「・・・。」」」
相手はあのリュウタだから。
一概に「いい子だ」と言えなくて、
皆、思わず言葉を濁す。
僕らの反応と、自分自身の行いに思う所があったらしい。
「で、でもぼくいちばん強いし!」
「関係ねーだろ!」
「らっぷも歌えるし!」
「だから関係ねーっって!」
「でも、でもちゃんと十まで数えられるし、」
「なんかいったか、あぁ!?」
子どもは泣き出しそうになっている。
「いいか!良太郎殺しにきたんだー☆なんていうヤツがいい子な訳ねえだろ!」
「~~~~!」
言葉を失った子どもは、しばらく口を一文字に結んで先輩を睨み付けていたが、やがて涙を飛ばしながら自室へ走っていってしまった。
先輩・・・。
「な、なんだよ、俺のせいかよっ!」
先輩は居心地の悪さをごまかすように、コーヒーカップに手を伸ばした。そこへ、しゃんとした姿勢で近付く良太郎。
「自分がサンタさん来なくて寂しいからって子どもに当たるのよくないよ」
「ぶふぅッッ」
先輩が盛大に吹く。
「な、な、な、な、な、な」
ハナさんのため息。
「アンタってホンット、カッコ悪いわね」
「俺、おれおれ俺は真実をだなあッ・・・」
「僕も、両親が死んでから、サンタさんは来なくなったから分かるよ。寂しいけど、大人になるってそういうことなんじゃないかな。」
「良太郎・・・」
ハナさんがつぶやく。
「だから、ね。リュウタロスにも普通の子と同じようなクリスマスを送らせてあげたいんだ。」
「ちぇ」
「先輩」
「わーったよ!やりゃあいいんだろ!
やるなら徹底的にやるぞコノヤローーーー!!」
なにをやるんだ、と思いながら。
小さいリュウタと、それから、良太郎にもプレゼントを用意しようと考えて頬の筋肉が緩む。
・・・あーあ。先輩にも用意しないと、またすねるかな。
「起きたら枕元に・・・は譲れねーだろ!」
「靴下はだめですかあー?」
「起きたら枕元の靴下に・・・でええやんか」
「深夜に忍びこんで靴下に入れるっつーことかよ?」
「無理無理。リュウタは敏感だから部屋に入った瞬間起きちゃうよ」
一つの机に押し集まって、熱く議論する。
僕らが一番恐れるのは、僕らの目論見がバレ、
子どもが大人の裏切りを知ってしまうことだった。
「ぼくをだましてたのー!?うそつきぃぃーーー!」
と泣き叫びながら銃を乱射する姿がはっきりと目に浮かぶ。
議論が無理っぽい方向に傾くと、みんなその姿を思い浮かべるらしく・・・。
それぞれ定期的に遠い目になっていた。
「リュウタロス、大丈夫かな・・・」
良太郎の言葉にみんなが静止する。
「・・・けっ。おい亀!ちょっと様子見てきやがれ!」
「お ね が い し ま す でしょ!」
ハナさんの拳に赤鬼が沈んだ。
「おへはいひまふ・・・」
「かめちゃん・・・」
末っ子は部屋の隅で体育座り。
「なあに」
「もう、ぼく良太郎やっけようなんておもってないもん・・・」
「・・・知ってるよ・・・?」
「・・・今からいい子になりますって言ったら、
サンタロスゆるしてくれるかなあ?」
ああ、言いたくても言えないのがもどかしくてならない。
今、食堂車では、鬼やら熊やら化け物みたいの、それを牛耳る小さなレディー、やさしい僕らの憑依主。滑稽なサンタ達が、お前を喜ばせる為にあれこれ考えてるんだよ!
「来、てくれる、よねぇ・・・?
こたえ、ぜっったい、きいてない・・・!」
自分のひざを抱きしめて。
震えだす肩を抱いてやる。
「大丈夫だよ」
お前はやさしくていい子だから。
「せんぱぁい、これ本当に意味あるの?」
「おめえら台本通りやれよー!」
赤鬼は、間違った方向に燃えている。
どうしてもこのイベントを成功させたいらしく、
「リハーサルやるぜぇぇぇぇ!!」と言い始めた。
・朝枕元にプレゼントがないと気付いたリュウタが、
僕と食堂車に入ってくる、設定。だそうです。はあ。
不可解なことに僕はリュウタ役のキンちゃん
(「イマジン」と同じイントネーションで「亀ちゃん」と言う)
と手を繋いでいるのだ。
「亀ちゃん、僕、悪い子やからぷれぜんと貰えへんかったで」
「亀!セリフ!」
「・・・そんなことないよりゅうた。さあこのとびらをあけてごらん。」
「亀ぇッ!抑揚なさすぎ!」
「わーいわーいぷれぜんとやー」
「ハイ!亀そこで感極まって泣く!」
「はぁ!??」
「泣く?泣けるで!」
ごきっ
僕らが考え抜いた当日のプラン。
・部屋に忍び込むのは不可能。 結局、プレゼントは食堂車のツリーの下に置くことにした。
・リュウタ対策で、部屋から出ないよう当日は僕が沿い寝。
・万が一の為に、扉の前に先輩が待機。
という徹底っぷり。相手はリュウタだから、これ位でちょうどいい、のかなあ・・・。
・僕らがリュウタを見張っている間、他のみんながプレゼントを置く。
ちいさいリュウタへのプレゼントは全部で7つになった。
みんなの思い思いの贈り物が入っているんだろう。
オーナーが、
「これは、私からです。」
と、カラフルな包みを託してきた時は正直驚いた。
良太郎をやっつけに来た、と現れた当時は、
災いの種でしかなかった子どもの笑顔を思い浮かべる僕達は本当に滑稽だ。
子どもは、「いい子の所にしか来ない」騒動の後も、
相変わらずやんちゃではしゃぎ通しだが、
いたずらのあと、ハッと思いだして
「ごめんなさい・・・」というようになったのをみんな知っている。
絶対成功させよう、絶対喜ばせようと
僕達もわくわくしていた。
僕が女の子とのデートを全て断る位に。
「これから、聖夜の特別路線に入ります。」
イブの夜。
リュウタはもちろんの事、
僕らも今夜、そして明日の朝を思ってそわそわしていた。
「とくべつろせん?」
「朝になれば、分かります。」
ふぁあ、とあくびをしたリュウタごしに、
先輩が全身で変なサインを送ってくる。
なにそれ。作戦決行って事?
「リュウタ、もう遅いから寝よう」
「もうー?」
まだあそびたい、という視線を、
良太郎の笑顔が封じ込めた。
「いい子は早寝出来るもんね、」
「ねー、かーめちゃーん。」
「なあに、リュウタ。」
「ぼく、ほんとはほんとは、ぜんっぜん眠くないけど寝るよ!
えらいー?」
ぷうっとほっぺをふくらませる。
「ははは。うん、偉い偉い」
体温の高いちいさな体を寝かしつけていると、
僕も眠くなってくる。
「サンタロス、来てくれるといいなあ・・・」
ちいさな背中を撫でながら、
まどろみの中で、僕は鈴の音を聞いた気がした。
「・・・ウタ、リュウタ、オイ!コラ亀起きろぉおおお」
ドン、ドン、
やさしい何かに包まれるようなしあわせな眠りから、
扉が叩かれる音と、先輩のこもった声で目が醒めた。
「・・・先輩・・・?」
全く持って台本通りではないじゃないか。
時計は午前四時を指している。
「起きろ!亀ぇッ!はやく開けやがれッ!」
騒音に、腕の中の子どもが「むー」とうなる。
僕は顔をしかめながら扉のロックを外した。
「・・・先輩、あれだけ自分で台本通りって・・・」
「なにもたもたしてんだよッ!はやくこっち来い!
すげーんだ!」
「・・・何・・・」
「いいから!小僧連れて、はやく!」
食堂車から歓声が漏れる。
仕方なく、「・・・もうあさ・・・?」とむにゃむにゃ言うリュウタを抱き上げた。
食堂車には、もうみんなが揃っていて、
歓声を上げながら一様に景色を見ていた。
窓を覗き込んで、息を飲む。
雪が、降っている。
「わあ、白いの、なあにコレーー」
いつもの砂漠ではなく、氷山の並ぶ氷の上を、
キラキラしたかけらを飛ばしながら列車が走行していた。
見慣れた砂漠と同じ色のオーロラが、
透明な氷を七色に染めている。
「すごい・・・」
と、良太郎もまだパジャマ姿だ。
「きれいね・・・」
鈴の音が聞こえる。
「あ♪あそこ!」
ナオミちゃんの指さした空中には、トナカイを引き連れた見慣れたシルエット。
「ま、さか・・・」
「サンタロス来てくれたー!」
「・・・ほ、本物・・・」
茫然とする僕達をよそに、オーナーがシルエットに敬礼をした。
「あ、じゃあプレゼント!プレゼントはー!?」
腕の中から子どもがぴょんっと飛び降りる。
「彼一人、一夜で世界を周るのは無理がありますからねえ。
時の列車も、協力しているんです。」
「りゅう、たろすくんへ、ってこれぼくのだよね?
あ、こっちも、わあ、こっちも!いっぱい!
これ開けていいよね??答えはきーてなーいっ☆」
僕らは口を開けたまま、シルエットの消えた先を見ていた。
「かめちゃん!くまちゃん!
みんなの分もあるよーーー!」
「え・・・?」
「ほらー!」
青い包みを抱えながら、リュウタが飛びついてきた。
「・・・世界を守る為に働いている私達への、
いわば、ご褒美、ですねえ。」
オーナーが開いた包みから、美しい銀のスプーンのセットが出てきた。
青い包みの中身が、
アルマーニのスーツ上下だったのは正直びっくりした。
うれしい、けど、
「僕、宗教違うのに、いいのかなあ・・・」
「何言ってるんや亀の字。ご褒美、なんやから。
有難く貰うて、大事にしたらええんや。」
そんなキンちゃんは、金色の包みの中身、
冷凍塩鮭と演歌のカセットテープを持ってにかっと笑う。なになに、「男なみだの一人峠」?
ハナさんには、小さいのと大きいのと、二つのサイズのワンピース。
ナオミちゃんには新しい腕時計。
先輩は僕がこっそり用意した「いちからじゅうまでのえほん」にかんしゃくを起こしている。
良太郎には、本物からのレトロなカメラ。
使いかけの香水は、僕からの。
この一年、良太郎に憑くときにつけていたもの。
だけど、もう一緒に釣りなんて、出来ないかもしれないから。
消えていく忘れていく思い出が形に残るように。
すごーいかわいーいおもしろーいと、包みを破っては
はしゃいでいたリュウタが、急に静かになって、
何かを考えるように首を傾げた。
「あれえ?」
皆が固まる。
「・・・どうしたの、リュウタ。」
きょろきょろ、と僕らを見て、
手に持ちきれない程の贈り物を見て。
数を数えて「うーん?」なんて言うものだから、
思わず僕らもドキリとする。
思わず脳裏をかすめる当初の悪い想像。
「リュウタロス、どうかした?」
良太郎がしゃがんで目線を合わせる。
「・・・あのね、」
皆が息を飲み、空気が凍る。
だけど、想像に反して
子どもはこぼれそうな笑顔で。
「えへへ、あのねえー、」
少し得意そうに、
本当に嬉しそうに、くすぐったく笑って。
特別に秘密を教えるように声をひそめて。
「ぼくの分、みんなより多いね!」
愛しくなって、抱き締めた。
「良太郎ちゃん、お手紙届いてますよー♪」
午後。
食堂車のドアをくぐると、待ちかまえていたかのように。
「え?」
お手紙?誰から?と思ったけど、
わくわくした視線のビームと、画用紙を折っただけの便箋。
灰色のクレヨンで、『りょうたろう』 と書かれている。
末っ子は端の席で膝を抱いて、僕が来たのにも気が付かない振り。
こっちが視線を向けると目を逸らすけど、
こっちが目を逸らすと、じーーっと見てくる。
「リュウタロちゃん、良太郎ちゃんが来るのずっと待ってたんですよ」
お陰で私なんか十六枚もお手紙貰っちゃいました♪
見ればナオミさんだけじゃなく、他の机にもお手紙が山ほど。
かくんかくん、と船を漕ぐキンタロス以外は、何故かぐったり机に伏していて。
その間も、うずうずわくわくと視線が訴える。
(りょーたろーはやくあけて!はやくはやくー!)
ちいさなかわいい贈り物をそっと開くと、
画用紙いっぱいに描かれた僕が、マグカップを持って笑っていた。
その下に紫色のクレヨンで、
『りょうたろうごはんたべた?』
頬が緩む。
「リュウタロ・・・」
お礼を言おうとしたら視線を盛大に逸らされた。
あくまでもお返事ちょうだいということらしい。
「モモタロちゃんがポストなんですよー!」
「オイオイ勘弁しろよナオミー。何十回目だと思ってんだよー。」
「モモタロス、遊んであげてよ」
「良太郎、こいつの手紙な、メールのテンションなんだよ!」
『ももたろす』
『なんだ』
『あのね』
『おう』
『ばか』
「朝からこれにハマっちまって口聞かねえの!」
「あはは、ナオミさん紙貸して貰えますか?」
なんで今日に限ってイマジン出ねーんだよ俺のイライラは
と、モモタロスが甘ったるい平穏を貧乏揺すりでなじるけど、
この空気に、ぬくもりを感じずにはいられない。
「はい。ポストさんお願いします。」
ぶっきらぼうなポストは、チッと舌打ちしてから。
「オーイ、エロ亀さーんお手紙ですよー配達してくださーい」
「えーー。僕四十八回配達して疲れてるんだよね。」
「しゃあないな!俺が渡しちゃる!」
「ごほん。えー、リュウタロスさーん、お手紙ですよー」
「はーい!ありがとー!白ヤギさん!」
「おおきに!」
キンタロスはいい人だなあ。
末っ子は、机の上に立って、僕からのお手紙をがさがさと開いている。嬉しそうに目を通して、小声でなぞった後で。
「うそーーーー!?おねえちゃんの手作りクッキーってなに!」
叫んだ後でハッとする。
あっ、おへんじ、えーと、おへんじ、ああもういいや!
「りょーたろーーーー!」
どーん!
「およ、」
胸に飛び込んでくる重さをよろめきながら受け止める。
「・・・中々来れなくて、ごめんね?
ちゃんとこっちで、待っててくれたんだね。」
「んーん。べつにー」
恥ずかしがってるのかな。
目を合わせないように抱きついてくる。
「ありがとうは目を見て言いたいな。」
子どもは顔を上げて、照れたように微笑んだ。
「お手紙ありがとうリュウタロス。」
「おてがみありがとー!りょーたろー!」
ぎゅーっ
午後。
食堂車のドアをくぐると、待ちかまえていたかのように。
「え?」
お手紙?誰から?と思ったけど、
わくわくした視線のビームと、画用紙を折っただけの便箋。
灰色のクレヨンで、『りょうたろう』 と書かれている。
末っ子は端の席で膝を抱いて、僕が来たのにも気が付かない振り。
こっちが視線を向けると目を逸らすけど、
こっちが目を逸らすと、じーーっと見てくる。
「リュウタロちゃん、良太郎ちゃんが来るのずっと待ってたんですよ」
お陰で私なんか十六枚もお手紙貰っちゃいました♪
見ればナオミさんだけじゃなく、他の机にもお手紙が山ほど。
かくんかくん、と船を漕ぐキンタロス以外は、何故かぐったり机に伏していて。
その間も、うずうずわくわくと視線が訴える。
(りょーたろーはやくあけて!はやくはやくー!)
ちいさなかわいい贈り物をそっと開くと、
画用紙いっぱいに描かれた僕が、マグカップを持って笑っていた。
その下に紫色のクレヨンで、
『りょうたろうごはんたべた?』
頬が緩む。
「リュウタロ・・・」
お礼を言おうとしたら視線を盛大に逸らされた。
あくまでもお返事ちょうだいということらしい。
「モモタロちゃんがポストなんですよー!」
「オイオイ勘弁しろよナオミー。何十回目だと思ってんだよー。」
「モモタロス、遊んであげてよ」
「良太郎、こいつの手紙な、メールのテンションなんだよ!」
『ももたろす』
『なんだ』
『あのね』
『おう』
『ばか』
「朝からこれにハマっちまって口聞かねえの!」
「あはは、ナオミさん紙貸して貰えますか?」
なんで今日に限ってイマジン出ねーんだよ俺のイライラは
と、モモタロスが甘ったるい平穏を貧乏揺すりでなじるけど、
この空気に、ぬくもりを感じずにはいられない。
「はい。ポストさんお願いします。」
ぶっきらぼうなポストは、チッと舌打ちしてから。
「オーイ、エロ亀さーんお手紙ですよー配達してくださーい」
「えーー。僕四十八回配達して疲れてるんだよね。」
「しゃあないな!俺が渡しちゃる!」
「ごほん。えー、リュウタロスさーん、お手紙ですよー」
「はーい!ありがとー!白ヤギさん!」
「おおきに!」
キンタロスはいい人だなあ。
末っ子は、机の上に立って、僕からのお手紙をがさがさと開いている。嬉しそうに目を通して、小声でなぞった後で。
「うそーーーー!?おねえちゃんの手作りクッキーってなに!」
叫んだ後でハッとする。
あっ、おへんじ、えーと、おへんじ、ああもういいや!
「りょーたろーーーー!」
どーん!
「およ、」
胸に飛び込んでくる重さをよろめきながら受け止める。
「・・・中々来れなくて、ごめんね?
ちゃんとこっちで、待っててくれたんだね。」
「んーん。べつにー」
恥ずかしがってるのかな。
目を合わせないように抱きついてくる。
「ありがとうは目を見て言いたいな。」
子どもは顔を上げて、照れたように微笑んだ。
「お手紙ありがとうリュウタロス。」
「おてがみありがとー!りょーたろー!」
ぎゅーっ
大人三人で入ったところで不便は感じない。どころか、更に脚を伸ばしたってまだまだ余裕がある。そんな広い浴槽が、この電車の中に設置されている。
電車には僕ら以外にも乗客は多数いる。その為か、この浴室は終日開放されていて、いつでも自由な時間帯に此処を利用できるようになっている。
「リュウタ。ちゃんと温まんないと駄目だよ」
今日はたまたま、僕ら四人で一緒に入浴。なのだけれど。リュウタが泳いだり、持ち込んできたあひる隊長で、ばっしゃんばっしゃん。普段外で遊ぶように浴室内で暴れまわっている。僕ら以外に人はいないから、一般客に迷惑をかける事はない。先輩にばっしゃんばっしゃんお湯がぶっかかろうと問題は無い。
それでも、身体を温めるという本来の目的は忘れてはならないと思う。
「リュウタ」
「えぇて。好きにさせとき」
風邪引くよ、と再び注意に口を開いた僕を、キンちゃんがやんわりと制する。
「子供いうんは体温が大人に比べて高こうなっとうから、湯に浸かりながら遊ぶだけでも身体は充分温まるねん」
へぇ。素直に感心。
……っていうかキンちゃんやけに子育て慣れてるよね。実は二児のパパでしたって言われても、何の疑問もなく受け入れられる気がするよ。
そんなお子様リュウタはこれまたキンちゃん直伝、両手使用の水鉄砲で先輩と白熱したバトルを繰り広げてる。先輩は遊んでて良いのかな。あ、子供体温?
楽しげで喧しい光景を背景に、キンちゃん背中流してあげる。と、先輩達を置いて湯船を後にする。
お父さんの背中流すってこんな感じなのかな。とかごしごししながら思ってたら、突然背中にべしゃりと濡れた感触。
「お背中流しっこー!」
リュウタの元気な声が背後から響く。
力が入ってないからちゃんと出来てないんだけど、子供ながらの微笑ましい好意を無碍には出来ないからそのままやってもらう事にした。三人で仲良く流し合ってれば。何か視線を感じる。ちらりとその方向を見やれば、やっぱり。一人寂しく湯船に浸かってる赤いのがいる。
「何、先輩寂しいの? 仲間に入れて欲しいの?」
一人でかわいそー、なんて笑ってやれば。うるせー、って怒声と一緒に洗面器が飛んできた。洗面器当たらなかったけど。ノーコン?
「モモの字来ぃやー。やったるでー」
「背骨折る気かコラ」
全力で拒絶する先輩。ホント、素直じゃないよね。
交代しよか? というキンちゃんからの申し出は、丁重にお断りしたけど。
僕だって命は惜しいんです。
お風呂から出たら、お約束。
キンちゃんが腰に手を当てて牛乳一気飲み。その隣でリュウタがいちご牛乳一気飲みしてた。
うわあ。良い飲みっぷりだね。
またキンちゃんから間違った教育受けてるな(キンちゃんの教育はたまに明らかに違う方向に爆走するよね)(しかも結構自分ルールで動くよね)とか思ってたら、
「ん」
フルーツ牛乳片手の先輩から珈琲牛乳を投げ渡されました。
あれ? これは僕もやらなきゃいけない雰囲気?
思わず受け取っちゃったけど、どうやら誰も答えは聞いてないらしい。
仕方ないから、入浴で失った水分の補給、と自分に言い聞かせ。今は懐かしい紙の蓋を潔く剥がしてやった
電車には僕ら以外にも乗客は多数いる。その為か、この浴室は終日開放されていて、いつでも自由な時間帯に此処を利用できるようになっている。
「リュウタ。ちゃんと温まんないと駄目だよ」
今日はたまたま、僕ら四人で一緒に入浴。なのだけれど。リュウタが泳いだり、持ち込んできたあひる隊長で、ばっしゃんばっしゃん。普段外で遊ぶように浴室内で暴れまわっている。僕ら以外に人はいないから、一般客に迷惑をかける事はない。先輩にばっしゃんばっしゃんお湯がぶっかかろうと問題は無い。
それでも、身体を温めるという本来の目的は忘れてはならないと思う。
「リュウタ」
「えぇて。好きにさせとき」
風邪引くよ、と再び注意に口を開いた僕を、キンちゃんがやんわりと制する。
「子供いうんは体温が大人に比べて高こうなっとうから、湯に浸かりながら遊ぶだけでも身体は充分温まるねん」
へぇ。素直に感心。
……っていうかキンちゃんやけに子育て慣れてるよね。実は二児のパパでしたって言われても、何の疑問もなく受け入れられる気がするよ。
そんなお子様リュウタはこれまたキンちゃん直伝、両手使用の水鉄砲で先輩と白熱したバトルを繰り広げてる。先輩は遊んでて良いのかな。あ、子供体温?
楽しげで喧しい光景を背景に、キンちゃん背中流してあげる。と、先輩達を置いて湯船を後にする。
お父さんの背中流すってこんな感じなのかな。とかごしごししながら思ってたら、突然背中にべしゃりと濡れた感触。
「お背中流しっこー!」
リュウタの元気な声が背後から響く。
力が入ってないからちゃんと出来てないんだけど、子供ながらの微笑ましい好意を無碍には出来ないからそのままやってもらう事にした。三人で仲良く流し合ってれば。何か視線を感じる。ちらりとその方向を見やれば、やっぱり。一人寂しく湯船に浸かってる赤いのがいる。
「何、先輩寂しいの? 仲間に入れて欲しいの?」
一人でかわいそー、なんて笑ってやれば。うるせー、って怒声と一緒に洗面器が飛んできた。洗面器当たらなかったけど。ノーコン?
「モモの字来ぃやー。やったるでー」
「背骨折る気かコラ」
全力で拒絶する先輩。ホント、素直じゃないよね。
交代しよか? というキンちゃんからの申し出は、丁重にお断りしたけど。
僕だって命は惜しいんです。
お風呂から出たら、お約束。
キンちゃんが腰に手を当てて牛乳一気飲み。その隣でリュウタがいちご牛乳一気飲みしてた。
うわあ。良い飲みっぷりだね。
またキンちゃんから間違った教育受けてるな(キンちゃんの教育はたまに明らかに違う方向に爆走するよね)(しかも結構自分ルールで動くよね)とか思ってたら、
「ん」
フルーツ牛乳片手の先輩から珈琲牛乳を投げ渡されました。
あれ? これは僕もやらなきゃいけない雰囲気?
思わず受け取っちゃったけど、どうやら誰も答えは聞いてないらしい。
仕方ないから、入浴で失った水分の補給、と自分に言い聞かせ。今は懐かしい紙の蓋を潔く剥がしてやった
