「帰りはスーラで参りましょう。」
そう言って、リズンはロザンジェを連れてエレベーターに乗り込んだ。高速ではあったが、静寂な空間だった。
「長いけど、何階まで行くの?」回数の書かれていないボタンを不思議そうに見てロザンジェが聞いた。
初めての感覚だった。
「ドアが開く所までですよ。」

ずいぶん上まで上がるのね。とロザンジェが聞いた頃、エレベーターが止まり、ドアが開いた。

 スーラと呼ばれるものは、エレベーターのドアの前に用意されていた。乗用車のような乗り物であったが、それは更に丸みを帯びタイヤもなかった。
 「どうぞ」リズンはロザンジェを乗せ、自分も乗り込んだ。

「学校は如何でしたか。」そう訊ねるリズンをよそに初めて乗るスーラに、ロザンジェは目を丸くした。
 「ハンドルとかないの?」
 「ございません。」
 「どうやって動かすの?」
 「此方にあるボタンで。基本、自動制御ですので目的地を入力しておけば、無事に到着しますよ。」リズンは改めて聞いた。「で、如何でしたか、学校は。」
 「よく分からないけど、私の想像してたのと違う。」ロザンジェは残念そうに言った。
 「でしょうね。」リズンは話を続けた。「多分講義でザーラの話が出たと思うのですが、あそこはそのザーラ採掘の為の学校です。」
 「ザーラってなぁに?」
 「万能物質です。それを多く採掘しなければならない。それには『費用』が掛かる。だが私達の社会には『お金』というものが存在しない。だから下で稼がねばならない。つまりあそこは下の社会に順応し、金を稼ぎ、ザーラを此方に持ってくる人間を育てる所なのです。普通の教養程度の事は家庭教師がいるのですから必要ありません。」
 「では父様やポールもあの学校で学んで下でそのようなお仕事を?‥って、下ってなんでいうの?」
 「彼らは地上で生活しているからです。」
 「え?」ロザンジェはびっくりして聞いた。「ここは?」
 「この星の大気の逃げぬギリギリの辺りと言えば分かりますか。」
 「空?雲の上?」
 「はい。仰有る通りです。」
 「なんで?息苦しくもないし、太陽が眩し過ぎもしない。」
  「はい。すべてザーラで囲われていますから。」
  「その為にザーラが必要なのね。」
 「はい。でも一番の目的は船造りの為です。」
 「船?海もないのに?」
 「静の星に行く為です。」
 「静の星?どこにあるの?」
 「別の恒星を回る惑星の一つです。ずっと遠くです。」
 「ここは公害や人口の増加で住みにくくなったから?」
 「いえ。ここには緊急避難で来ただけで、本来来る場所ではありませんでした。ギルさんlからそういうお話は伺ってませんか。」
 「いえ、まだ‥。」
 「ではこれから詳しく知って行く事でしょう。」

 長い旅の間、話はずっと続いた。


うさぎはおだんごが大好き

今夜もおだんごを食べながら

のんびりお月さまをながめてました。

「こうしておだんごをお月さまにかざすと

おんなじ大きさぐらいかな。お月さまがかくれちゃう。」

そうやって一つ一つお月さまにかざしながら食べていたら、

手がすべってうっかり落としてしまいました。

「待って、待って。」

うさぎはあわてておだんごを追いかけました。

おだんごはコロコロ坂になった草むらを転がって行きます。

「待って、待って。待ってよぉ!」

(ポチャン)

おだんごは池に落ちてしまいました。

うさぎが残念に思ったその時です。

「た、大変だぁ!お月さまが池に落っこっちゃった!」

うさぎはあわてて走り出しました。

どのくらい走ったでしょうか。

うさぎは海辺でカニを見つけました。

「カニさん、カニさん、助けてよぉ!お月さまが池に落っこっちゃったの!」

カニはうさぎのあわてようにびっくりして、

海の中にもぐってしまいました。

うさぎはおどろきました。

「あぁっ!お月さまが海に逃げちゃった!」

うさぎはまた走り出しました。

うさぎは泳げないのです。

でもお月さまを助けたくて必死でした。

しばらく走るとそこにはライオンがいました。

「ライオンさん、助けてよぉ!お月さまが池に落ちて、海に逃げちゃったの!」

ライオンは振り向いて言いました。

「ガォゥ!うるさいと食ってしまうぞ!」

うさぎはびっくりしてまた走り出しました。

(誰か助けてよぉ!)

すると前に人間の女の人が水がめを持って歩いているのが見えました。

うさぎはその女の人に言いました。

「娘さん、娘さん。お願いです。助けてください。お月さまが池に落ちて、海に逃げちゃったの!」

その女の人は、うさぎを見てにっこりしました。

「うさぎさん、お月さまはここにいますよ。」

うさぎがその女の人の持った水がめをのぞくと、そこには小さいお月さまがゆらゆら遊んでいます。

「私がお空に帰しておきますね。」

そう言って水がめを高く持ち上げました。

するとどうでしょう。

お空にまぁるいお月さまの姿がありました。

「ごめんなさい、お月さま。ぼくがお月さまとおだんごをくらべっこしてそのおだんごをお月さまに見立てて食べちゃったから、お月さま、怒っちゃったんでしょう?」

するとその女の人が、

「いいえ、うさぎさん。お月さまは水の中でゆらゆら遊びたかったのよ。」

「いたずらっ子なお月さまね。」

「そうだね。ぼくびっくりしていっぱい走っちゃったから、お腹すいちゃった。」

そう言うとまた来た道を走って帰りました。

お空に戻ったお月さまをながめながら、おだんごを食べ始めました。

終わり





「さて、諸君、先程話した通り、本講義はお客様同席の為、言語は日本語、内容は諸君らが本校に入学した時のものだ。また一部の固有名詞はそのままの言語を用いるので日本語に疎い者でも大筋が掴め、勉強になる筈だ。それでは始める。
おおよそ人の考える事は同じ‥」教授の話が始まった。「我々人類は同じ道を進む。繰り返し。良くも悪くも。これを我々自身、強く戒める為に、語り継ぐ。アー、ミーム、ラーと。」
一瞬の沈黙が過ぎた。
「我々の祖先は過去に過ちを犯し、図らずもこの星に身を寄せざるを得なくなった。この黒の星は恐ろしい。我々が排除した者がいる。だがこの黒の星に大量に眠る資源を採掘しなければ我々は安全で平和な星に向かう事は出来ない。
ついては代々受け継がれているザーラの発掘を君たちの代でも引き続き行ってほしい。下の人間と共生するべく援助を我々は惜しまない。一日も早く船を完成させこの星から去る。それだけを考えて日々勉学に励んでくれたまえ。以上だ。では通常講義に戻る。」
気がつくとロザンジェは一人ドアの外側にいた。あまり理解できないまま迎えにきたリズンと学校を後にした。