今年は何かと「平成最後の…」という言葉が盛んに言われます。先日、1月16日に皇居・宮殿「松の間」で、平成最後となる新春恒例の「歌会始の儀」が行われました。天皇陛下は、今年4月末に退位されるので、これが最後の出席となるようです。今回のお題は「光」でした。その「歌会始の儀」で、陛下は「贈られし ひまはりの種は生え揃ひ 葉を広げゆく 初夏の光に」と詠まれました。この歌を聞いたとき、「これが国の象徴である、天皇陛下という人なんだなぁ」と思いました。

 

 2005年、阪神大震災から10年となった追悼式典でのこと。被災者遺族を代表して懇談されたのが小西さん。あの日自宅で眠っていた長女の希ちゃんが亡くなった。その時の様子を陛下にお話したとき、「おつらかったですね」と声をかけられた。その時、一緒に居た次女の理菜さんがヒマワリの種を差し出した。

 

 この種は、同じく震災で亡くなった加藤はるかちゃんの自宅に咲いていたヒマワリを、地域の住民らが各地でその種を捲く活動を始め、それを理菜ちゃんが意を決して皇后陛下に手渡したものなのです。しかも、両陛下はそれを庭に捲き、花から種を取って、毎年育てられたというのです。

 

 そのあと宮内庁の侍従から自宅に電話があり、ヒマワリが咲いていることを理菜ちゃんに伝えるよう両陛下が望まれたことを伝えたのですが、数多く接した被災者の一人に、このような気配りと心遣いをされるということは、なかなかできることではありません。被災地や病院、いろんな施設を訪問される両陛下ですが、いつも感心させられるのは、つねに同じ目線で相手の立場に立って接しておられるということです。苦しんでおられる人々に寄り添い、同じ気持ちになっておられるからこそ、できることなのでしょう。

 

 退位を控え、最後の出席となるであろう歌会始めで、被災者に心を寄せるような歌を詠まれた。しかも、14年も経っているのに。よく言われるのは、災害が起こると、その時は注目が集まるけれど、時間が経てば、だんだん薄れていく。でも両陛下は、たった一人の少女からもらった種を大事にし、それを通して震災被害に遇われた方々に対し、今なお心を痛めておられる。

 

 阿弥陀如来様は、凡夫である愚かな私達を救う為に、五劫思惟ののち仏となられました。悩み苦しんでいる私達を、なんとか救いたい。その一心で全ての人が救われる道をお示しくださった。私たちの事を常に考え、寄り添い、手を差し伸べてくださる。私達は阿弥陀様のほうへ手を伸ばすだけでいい。そう考えるだけで、安心して生きていけます。

 

 地震によって、残念ながら少女は亡くなったけれど、その少女が残した花の種は全国で捲かれ、それぞれ大きな花を咲かせている。復興の象徴としてのヒマワリの花が、今年も咲いて初夏の光を浴びていることでしょう。