階段を上がって、部屋の入り口で見えたのは箪笥。
そこにずっとあった箪笥。だけど、ちょっといつもと違っていた。
ドキッとした。
もともと中には入ってなかった。もうほとんど使われてない箪笥だったから。
けど最近、そこには物が入っていくようになっていた。
下着が少しずつ、増えていった。
それが、なくなっていた。
心臓がハッとした。

 部屋に入ると、誰もいなくて、
あの人の物もなくなっていた。
置き去りにされた、もう一人の物たちがバツ悪そうにそこにあった。
ごめんね、そう言っているような。

 ベッドに横になって、部屋を眺めても
やっぱり世界は変わらない。
あの人はいなくなってしまった。
そう認めるとクラクラした。
吐き気がしてきた。

 目をつぶって、夢を見ようと思っても
目が覚めてしまうのが怖くて、呼吸が止まってしまえばいいのに、と
ふと思った。

 日常に戻る。
それができるには、朝になるのを待とう。