01, 白い少女(8)
しばらく左に進んでいくと、さっきの少年の姿が見えた。ちょうど曲がり角のところで少年はこちらに背を向けて立っていた。こちらに気づいたのか、少年は振り返る。俺と目が合うと、優しく微笑む。俺は急いで少年の手をつかもうと走った。しかし、少年はふらりと道を曲がる。俺は慌てて走ったが、少年と同じ道に曲がった時には、もう少年の姿はなかった。消えたかのように、どこにもいない。しかし、ずっと遠く。白いなにかがうっすらと見えた。ゆっくりと近づいて行くと、そこには小さな女の子がいた。白い髪の毛をした少女がこちらに背を向け、蹲っている。俺はさらに近づいて、少女の肩に手を伸ばした…その時だった。『近寄らないで!!!!!!!』激しい頭痛とともに、脳内に高く大きな声が響いた。その声とともに、地震のように地面が揺れ、ズドォンと一際大きな音が耳を貫く。差し伸べた俺の手は鈍く痛み、俺はその痛みから、少女に手を叩かれたことに気付いた。当の少女はこちらを睨み、涙を浮かべている。その瞳には微かに恐怖の感情が滲んでいた。今の声は…?と、そう思ったが、その疑問を打ち砕くように、時折地面が揺れた。このままでは建物が崩壊する恐れもあるかもしれない。次、大きな衝撃が与えられたら。この少女も俺も瓦礫に埋もれてしまうかもしれない。俺はとっさに少女を抱き抱え、来た方向に走り出した。少女は目を丸くし、状況を理解するとばたばたと抵抗する。「少しだけ我慢して。ここにいたら危ないんだ。」俺は少女を安心させようと笑ってみせた。うまく笑えていたかは分からない。なんせ子供は得意じゃない。幸い、少女は抵抗をやめた。しかし、その表情には強い恐怖が滲み、俺はなんとなくこの子を放っておけないと思った。