まずは「俳優心構え」シリーズ から以下の文章をお読み下さい。


(前略)
この際、弊害となるのは間違った「集中」の仕方をしてしまう事だ。この間違った「集中」の仕方というのは俳優に限らず、何かを行う時の日本人(外国籍でも事実上の日本育ちであれば同じ)には非常に多い事のように感じる。

 

 間違った「集中」とは何か? 一言で言えば無駄に「気合い」を入れてしまうという事だ。

 分かり易く言えば、一点に凝縮するように「気合い」を入れて集中を図るという事。この型の「集中」を行うと「何かをやっている」という実感が非常に感じ易い為、この型の集中を行う俳優というのは多い。


(中略)
 この集中の仕方をした場合、精神と肉体に力みを生じさせるので、俳優自身の実感と反して演技は上滑りし易くなる。特に微妙な演技になればなる程、この型の「集中」は俗に言う「クサイ芝居」へと俳優を導いて行く。
 自分で良い演技をしたつもりなのに演出家にノーと言われ、自分がダメだと感じた時にOKを出された経験が多い俳優は、この型の「集中」をしているケースがよくある。


(中略)
抽象的な表現になるが、本当に集中した時というのは「波紋ひとつ無い水面」のように精神が静かになる。この状態で役に入った時に劇世界は初めて自分の居場所となりえるのだ。これが「リラックス」と「集中」が融合した瞬間である。


-以上- 元記事俳優心構え♯4~緊張と集中とリラックス


さてこれ読んで「?」と思った方も多いと思います。
「で本当の集中ってどうやるの?」って事が書いてないですよね?


これをアップするときに出し惜しみしたんじゃなく、この演出家さんの原文にも書いてませんでした。
この方もご自分で事務所を構えられてますので、恐らく「企業秘密」に当たるからなんでしょう(*^^*ゞ


と言う訳で、その方法を簡単にではありますが、僕が解説致しましょう♪

・・と言っても、演劇の世界で学んだ方法では無く、古武術の世界で学んだ方法ですが^_^;


実は意外でしょうが、古武術の世界でも「一点集中型」はよくない集中の仕方です。
テレビや映画の時代劇で、侍同士が対峙するシーンは定番ですが、弱い設定の侍ほどカー!っと目を見開いて、手や足、全身を無駄に力ませて構えてますよね?で達人になればなるほど( ´,_ゝ`)フッと力を抜いて、目も半眼にしてリラックスして構えています。


これは単に「強い者の余裕」を表現しているだけじゃなく、実際の武術の世界でも、技の熟練度が高くなるほどに、構えや動きから「力み」「ガン見(笑)」は削ぎ落とされて行きます。


不思議ですよね?
相手の攻撃に反応する為には、構えてる相手の手の動きを見てないといけないんじゃないかと、普通はそう思うんじゃないかと思います。


が、これは実際にやってみるとわかりますが、相手の手、或いは「目」と言った特定の部分を凝視していると、確かに反応は出来るんですが、結構慌てた感じの反応になる為、そこを上手く突かれて「フェイント」と言った騙し技に簡単に引っ掛かってしまいます。

それに一点にだけ意識を集中させると、他の部分の動きが見えなくなってしまう(見えてても認識するのが遅れると言う意味)危険もあります。


何故なら、一点に意識を凝縮させて集中してしまうと、無意識の内に身体が力んでしまうからなんです。
目と言うのは、頭蓋骨の「眼窩」を通って、唯一身体の外に出ている「脳」の一部です。
目が一点を凝視していると言うことは、言い方を変えれば、目そのものが「力む」と言うことで、脳と直接繋がっている目が力んでしまうと言うことは、それに連動して脳も力んでしまうと言う事です。
で脳が力むと言う事は、当然それに連動して、身体もやっぱり力んでしまう訳です。
何せ脳からの指令(反応?)で肉体は動いている訳ですからね。(脊髄反射は除く)


力が入っていると反応が遅れると言うのは、誰もが経験してわかっている事なので、ここでは詳しい説明は省きますが、ではどう言う「見方」をすればいいのか?


お待たせしました。

相変わらずの長い前振りでごめんちゃい(笑)
では今回の本題『武術に於ける賢い“目付け”』の方法を解説します。


古武術の世界では、相手と対峙している時の目付のひとつに「遠山の目付」と言うのがあります。
読んで字の如し“遠くの山を見るように相手を見る”と言う意味です。

決して遠山左衛門少尉(金四郎)景元、所謂「遠山の金さん」の事ではありません(笑)


つまり、相手を直接見るのではなく(焦点を合わせるのではなく)、相手の後ろにある風景に焦点を合わせて、相手がぼやけて映るように見る方法です。
例えるなら、目の前の敵があたかも「風景の一部」としてボーッと見えている・・そんな感覚です。

※間違っても本当に( ゜ ρ ゜ )ボーーっとだらけててはいけません(笑)


こうする事で、それまで力んでた「目」の力が緩み、それにつれて身体の無意識の力みも取れます。
そして不思議なことに、相手の動きが手であろうが足であろうが、身体のどの部分であろうが、手に取るようにわかる様になります。嘘ではありませんので、誰か他に人がいたら、是非試してみて下さい。


“古(いにしえ)の武術の叡智”にきっと驚きますよ(^^)

「それ“しか”見えない」のとそれ“も”見える」の違いは大きいのです。


そしてその感覚が更に発達すると、後ろから殴り掛かってくる相手の“気配”までわかる様になります。
これは僕も実際に体験しましたので、間違いなく「出来る」と胸を張って言えます(^^)v


大事なのは一点に凝縮ではなく、全体に意識を拡げると言うこと。

その為に重要なのが「リラックス」する事。


「遠山」にしても、「背後の気配」にしても、無駄に力んだり一点だけに集中していると途端に出来なくなります。
その詳しい(肉体的)メカニズムは僕にはわかりませんけど、確かにそうなると言う事は経験としてわかっていますので、この演出家さんの言う「間違った集中」「波紋ひとつ無い水面」に凄く納得出来ました。


※この方法で得る事の出来る「感覚」についてですので、上記の方法を直接演技の場に持ち込むと言う事ではありません。


武術で培った経験が「演技」にも活かせる可能性がある事に驚いている今日この頃です(*^^*ゞ


ご参考までにm(__)m


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【今日のありがとう】

・割引券のお陰でカラオケ6時間が500円ちょっとになったことに(笑)

・何度もしつこく書いてるけど「無駄な経験なんて何一つ無い」と言うことに(^^)v

・違う世界の経験でも視点をちょっと変えるだけで別の世界にも応用出来ることに♪

・生きている奇跡に

・生かされている奇跡に


by:しゃと俳優沙人(しゃと)の日記

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