
スイボクが好きなアーティストを所沢に招いてジョイントする
音楽喫茶MOJOとの共同企画"所沢ジプシー@MOJO"。
記念すべき第一回にお招きしたのは"日比谷カタン"さん。
過去に何度か"くものすカルテット"でご一緒して頂いたご縁で、
その後も同じ"ジャンゴ系ギター"を使う者の誼で仲良くさせて頂いておりましたが、
スイボクと共演させて頂くのは今回初。
しかし、その実態が"共演"ではなくて"狂宴"であったということが、
このライブを観たお客さんの共通の見解ではないだろうか。

妖艶な詩の世界、七変化のボイス、軽快ながらも神出鬼没なMC、鋼鉄を切り裂くギターの音色。
聴衆がカタンワールドに引き込まれていくのに時間はかからなかった。
彼が紡ぎ出す独創的な楽曲の中でも一際異彩を放っていた
"フェイクファーの曲"には度肝を抜かれた。(正式なタイトルは "Fake Fur Bought By Summer Sale Bot")
サマーセールでフェイクファーを買ってもらったという件を、耳馴染みのあるポップソングの調べにのせて延々と歌う。ネタになったメロディーは数十曲にも及ぶ。
矢継ぎ早に繰り出されるヒットチャートの歌詞を"フェイクファー"に置き換えられ思わずニヤリとしてしまう。
表向き面白可笑しい"ネタ的"なナンバーだが、曲の繋ぎ方のセンス、計算されつくした構成は秀逸で、何よりカタンさんがいだく近年のJpopシーンに対する皮肉が感じてとれたのは私だけではないはずだ。
そして長年カタンさんのステージのラストを飾って来た"対話の可能性"で締めくくると
アンコールでいよいよスイボクとのジョイント。
曲はさいたまんぞうの"なぜか埼玉"
80年代にヒットした歌謡曲をジプシースウィング風にアレンジして全員で謡う。
哀愁漂うメロディー、そして分かり易い詩の内容は、なぜか"所沢"と"ジプシー"を繋ぐ架け橋のようであってならない。
そして最後にカタンさんのオリジナル曲"ヲとといヲいで"
―スイボクのメンバーはこの曲をジョイントするにあたり、この曲が脳裏に焼きついて眠れない夜が続いたという、狂気の曲―
で幕を閉じた。
この日の"狂宴"が、聴衆にも眠れない夜へ誘ったのは、間違いなさそうだ。
次回の"所沢ジプシー"の"狂宴者"も今から楽しみである。
文:平野広泰