「 だから あんたの言い方が
ムカついてるんだよ!」  

中途半端な長さ白髪混じりかなり
ボサボサの頭
無精髭 
 身だしなみを気にする様子はない
負け犬のような目つき をしている
 古ぼけた作業着の上着と擦りきれたジャージ

  50代半ばくらいだろうか
市役所の隣にある  社会福祉センターの入り口で
騒いでいた

「私の言い方のどのあたりが いけなかったの?」

対応する女性職員は 30代前半
長い髪を後ろでひとつに結び 
真っ直ぐに立っている 
スラッと 背が高く  キリッとした眼差し

この手の対応になれているのか 
少しも動じない

勝手な想像だが、 昔バレー部などで
キャプテンなどしていたっぽい

「電話だから 強気に言いやがって 
歩いてこいって  俺は足が悪くて 困ってるんだから よ  !」

男はさらにむきになって 女性職員をにらむ

「では  、どうやってここまで来たの?」
平然と聞き返した職員は
 将棋で言う所の王手  といった場面だが
表情はかわらぬままだ



仕事を辞めて早3ヶ月が過ぎていた
収入は当然なく  知人を頼って 部屋を借り
だらだらと過ごしていた  
これといって やりたい事もなく
夢中になるような趣味も恋人もない
何かをやらなくてはと 古本屋に行き
為になりそうな本を買って来るが
半分も読まないうちに 飽きてしまう

スマホをいじっても 誰からの電話があるわけでもなく   

タイムラインなどは
 闇の深い女の子の 意味ありげな呟き
読むだけで鬱陶しくなり ブロックした

なんとなく行ったスナックの女の子
ライン交換しても  なにか連絡来る訳でもなく
タイムラインだけは 淡々と流れてくる

救済処置   のタイムラインを読んだのは
その時だった

国の支援策として 色々ある
仕事もなく
今日の食事にも飢えていた俺には
ありがたい文章だった

その支援策を受けるにはまず電話をして予約
とあったので、すぐ電話した

市役所とは別の機関で 福祉センターという
場所があり   その入り口での場面だった

無精髭の男が 言葉に詰まっていたのを横目に
奥へ進む
様々なプレートを見ても  わからない

近くを通りがかった職員に問いかける

「すいません、タイムライン見て ここまで来たのですが、」
と 携帯の画面を見せ 説明した



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