いのちの電話が繋がらなかった。


もう生きていたくない気持ちが身体中をこわばらせた。


誰かに話したくて、でも、親しい人にこんな話はできなくて。


苦しい。


楽しいときもある。

大切な人といるとき、ご飯を食べているとき、景色がきれいなとき、面白い作品に出会ったとき。

ちゃんと幸せを感じる。


けれど、ふと考え込むと、だめになる。

がらがらとなにかが自分の中で崩れ落ちていく。


愛猫のこと、恋人のこと、友達のこと、仕事のこと、自分の容姿のこと、将来のこと、過去のこと。


考えれば考えるほどに心がすり減る。


考えても仕方のないこともあるけど、考えてしまう。


「いろいろな出来事を経て今がある。だから過去の全てが今の私を使っている。今を幸せに感じられるから結果オーライ」

なんて言ってみるけれど、わかってる。

強がりなだけだ。


確かに、今私の周りにいてくれている愛猫、恋人、親友はかけがえのない存在で、その人たちに出会ったのは過去があったおかげだ。


でもどうだろう。


それ以上に苦しかった出来事がどうやっても多い。


人の数だけ悩みもあって、苦しさも人それぞれなのもわかっている。わかった上で、それでも辛いものは辛い。


生きている以上、この辛さはきっと消えないと思う。

どんなに幸せだったとしても。


未来は変えられても過去は変えられない。


過去に縛られて身動きが取れていない。


人のせいにするのはいけない。全ては自分のせい。

そう思って、自分を奮い立たせてきた。


男性を、愛する恋人を、完全に信頼できないのは自分のせい。

深夜の清掃のバイトをして、朝方帰るときに襲われたのも、お金のためだと危ないかもしれないということに蓋をした自分のせい。

電車で痴漢に遭うのも隙があるであろう自分のせい。

ろくでもない男に依存して、そんな人でもどうしても愛おしくて、別れる決断をずっとできなくて、ボロボロになってから別れて、何度も自分の心傷つけた自分のせい。


お金がないのも自分のせい。

もっと働けば、もっと上を目指せば稼げるのにそれをできないやらない自分のせい。


自分に自信がないのも自分のせい。

薬の副作用で太るのに、同時にストレスで過食するのは自分のせい。

自己肯定感低くて他人と比べてしまうのは自分のせい。


親に愛されなかったのも自分のせい。

ネグレクトされて、兄のほうが愛されていて、私は愛されなかったのは器量の悪い出来損ないの自分のせい。


全部、自分のせい。


どんな状況でも這い上がれる人もいるから。


知ってる。


だけど、もういっぱいすぎる。


自分のせいだけど、誰かのせいにしたい。


そうじゃないと、辛い。


自分のせいなんて、わかってるから。

それを選んだのは、そうしてしまったのは私だから。


変えられない過去に囚われて、今を、未来を嘆いているのは私だから。


誰かのせいにしたとしても、苦しいことに変わりはないから意味もないのに。


逃れるためには、と考えると、生きていることへの執着がなくなりそうになる。


苦しい。


でも、いつか本当に自ら生きることを諦めてしまいそうで怖い。


矛盾だ。


生きていたくないのに死ぬのは怖い。

だからまだ生きてる。


あほらしい。


YouTubeで、自ら命を絶った人のニュースが流れてきて見てみると、コメント欄の中には「生きたくても生きられない人もいるのに」「悲しむ人がいるのに」「死ぬという選択はしなくてもよかったのに」「誰かに相談すればよかったのに」と書かれていたりする。


それを書いている人たちは、幸せな人生を歩んできたか、心がない人なのか、ただのばかのどれかなのか、と思ってしまう。


私の想像でしかないけれど、自らその道を選んだ人たちは、たくさん考えたんだと思う。

それでも、生きていくことのほうが難しいように思えてしまったんだと思う。


私も考える。

私がそれを選んだとしたら、こんな私にもそれを悲しんで後悔してくれる人は少しばかりいる。

大切な、かけがえのない愛猫もいる。

私がいなくなったあと、私がいなくなったことによって苦しめられるかもしれない。

でもきっと、それも考えた上で選ぶのだろう。


私はまだ、選べないけれど。



愛猫と、ずっと一緒にいたい。お迎えしたからには日々を幸せと思ってもらいたい。


恋人と、親友と、もっといろんな話をして、いろんなところへ行きたい。


おいしいものをたくさん食べたい。


おしゃれをしたい。


いつか自分の子どもを授かって、たくさんの愛情を注ぎたい。


誰かの役に立ちたい。



やりたいこと、たくさんある。


未来を、諦めたくない。



でもどうしても、生きるということが苦しい。


思考するという行為に苦痛を感じる。


そこから逃れたい。