大晦日と君とアイツと嘘。
ホラ、まただ。
大晦日の夜。
薄暗い室内でもしっかりとわかる。
君の横顔から見える瞳に浮かぶもの。
それは涙。
アイツだろ?
全部アイツのせい。
:::
「蘭姉ちゃん・・・・?」
「えっ・・・あ、コナン君、どうしたの?」
はっとした蘭がこちらを振り向く。
目尻に残る涙を拭う君。
その仕草に胸が痛む。
「おじさんが出かけるから蘭に言っておいてくれって・・・。」
「そう・・・お父さんどこに出かけるって?」
「麻雀みたい。」
「もーお父さんたらこんな大晦日にまでそんなところに行かなくてもいいのに!」
呆れた蘭が顔を近づけてきた。
「コナン君、お父さんなんかほっといて、二人で美味しいもの食べよう!」
「うっ・・・うん。」
先程とは違う満面の笑み。
どうしてそんな顔するんだよ。
なんで、無理するんだよ。
蘭は立ちあがると部屋を出ようとした。
その時、俺の中の何かがこみあげてきて必死に手をのばし蘭の腕を掴んだ。
「え?」
驚いて振り向く蘭。
「・・・・・・んで?」
「ん?・・・ごめん、聞こえなかったからもう一回言って?」
蘭は屈んで視線を合わせてくれた。
自分では視線を合わせることも出来ない。
必死に手を伸ばさなければ触れることも出来ない。
胸に秘める想いを告げる事も出来ない。
ただ・・・・子どもでいるだけ。
「・・・・なんで、泣いてたの?」
俯いたまま告げる。
「・・・・・・。」
暫しの沈黙の後、静かな蘭の声がそれを破った。
「泣いてないよ・・・欠伸してただけ。」
また笑った。
嘘つけ。
嘘。
全てうそ。
「・・・・・新一兄ちゃんのせい?」
「ちがう・・・・本当に欠伸だよー・・・。」
「なんで?・・・どうして嘘つくの?全部・・・全部新一兄ちゃんのせいでしょ?」
「コナン君・・・・?」
「今日だけじゃない・・・・蘭姉ちゃん・・・いつも泣いてるじゃないか・・・一人で・・・・新一兄ちゃんがいけないんだ・・・!!」
興奮した俺に驚いている蘭。
もう止まらない。
自分の中の汚いものが全て飛び出していく。
「・・・・・・・新一兄ちゃんなんか嫌いだ・・・。」
力なく口から出てきた言葉。
ギュ
突然身体が温かいものに包まれた。
「・・・・・だめ・・・・そんなこと言わないで。」
蘭に抱きしめられていると気付いたのはすぐだった。
「・・・・悲しくて泣いてたんじゃないんだよ。」
「新一のこと好きで好きでしょうがなくて・・・想いが溢れて・・・胸が一杯になってこぼれちゃったの。」
「・・・・・っ。」
「新一のこと好きな自分が嬉しいの。」
「だからね・・・・悲しいんじゃない・・・悲しくなんかないんだよ。」
「コナン君だって、新一のこと大好きでしょう?」
「ごめんね・・・・嘘をつくの辛かったでしょう?」
どうして。
どうして君は。
君が求めてる人物は。
君が想っている人物は。
ここにいる。
ここにいるんだよ。
「新一は俺だ」と言ってしまいたい。
いや、そんなことが出来るわけがない。
こんなきれいな心の君にそんな不埒なことが出来るわけがない。
「本当は年末位帰ってきなさいよって思うけど・・・ホームズオタクは事件があればそんなこと関係ないだろうね。」
少し離れた距離。
そこから見えた君はまた違う表情。
けれどまた涙が滲んでいた。
いつか。
必ず。
その涙を拭いにくるよ。
俺の本当の手で。
必ず。
「でもアイツ頑張ってるから・・・・コナン君も一緒に応援してあげよう?」
にっこり笑う君。
「さー今から美味しいもの作ってあげるからね!」
そう言って蘭は今度こそ部屋から出て行った。
残された部屋中で窓から見える夜空を見上げた。
大晦日の夜。
:::
年明けと共に彼女に電話を入れた。
待ちくたびれているだろう憎きアイツの声で。
「蘭・・・あけましておめでとう。」
「・・・・っばか・・・・・・。」
電話先の君はやっぱり泣いていた。
今年こそ君のもとへ帰る。
そう誓った新年の夜。
FIN
:::あとがき
やっとかきおわったーーー!
って思ったら間違って消しちゃってそっこうで書き直しました。
二作文の労働力がつまった一作です。
嘘、嘘。
偽りのお話。
いつか嘘が全部なくなりますように。
コナンside久しぶりでした。
2010.12.31 kako
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