ハチモト「うわあああああん!…はるこ様ぁ…うぅっ、ぐす…」

やわも「いい加減泣き止みーやー。ハチモトぉ」

ハチモト「だって、だって…!はるこ様に、ボク、ずっと探してたのにっ、とんでもないことを…」

あみ「まぁ…それは否定できない…」

ましろ「今後口聞いてもらえるかどうかもわからないっていうねー」

ハチモト「うあああああああああああああん!!!はるこ様ぁ!ごめんなさいですー!!」

 

 

どうしてハチモトは泣いているのか、話は今朝にさかのぼる。

スターフェアリー王国の王女であったはるこが正式に編入することになり、

その歓迎式典も兼ねた編入式が行われたのだが…

 

 

はぁ!?なによソレきーてないわよ!?転入記念式典!?ばっかじゃないの?

いやーとある筋から要望があったもんでねー

ほんの少し壇上に出てくれるだけでいいんです…!

挨拶だけしてくれたらいいんよー

挨拶!?ちょっと、押さないでよ!!

 

「臨時教師のリョウです。国語の教諭として勤務します」

 

あの新しいせんせーの後に出てな!

い や よ !

もう無理だってー諦めなー

 

「みなさんの学園生活がもっと楽しくなるよう、全力でお手伝いします。よろしくお願いしますね」

 

終わったみたい!では、よろしくお願いします!

え、ちょ、やだやだやだやだー!!!

押すでましろ!せーーのっ!

 

はるこ「ぅわっ!!………チッ……はるこよ。言っておくけど、あんたたちとなれ合うつもりはないわ。

式典だかなんだか知らないけど、くだらないことに時間を使いたくないから。ここで失礼させていただくわ」

 

 

 

そして話は冒頭に戻る。

 

 

「いやーあれは会場冷え切ったよねー」

「もう、シーーーーーーーーーーーンッ!ってなったもんなぁ」

「ほらもう泣かないで。悪気があったわけじゃないでしょ?話せば分かってくれるよ。…たぶん」

「たぶん、です!?」

「あみちゃんもあんま慰める気ないなぁ」

「ってか、そんないつまでもめそめそしてていいのー?」

「うぅ…はるこ様のところへ行ってきますです…(ふらふらふよふよ)」

「ガンバレ!うちらがついてるで!気ぃつけてなー」

 

 

「おや、なにやら賑やかですね」

「あ、さっき挨拶してはった」

「はい。この度こちらの学園で臨時教員を務めさせていただきます、リョウと申します」

「わ!すみません。どたばたしていてご挨拶が遅れてしまって…わたし、生徒会長の」

「あみさん、ですよね?学園長から紹介を受けていました。才色兼備、容姿端麗。今後がとても楽しみな女性だと」

「へぁ!?そ、そんなことはないです!」

「ひゅー!べた褒めじゃん!あみちゃん、学園長にいくら包むー??」

「やめんかいましろ」

「短い期間ではありますが、皆さんも。どうぞよろしくお願いします。授業が始まりますので、この辺で」

 

それではまた、と背を向け歩き出すリョウ。にこにこと温和な表情が一転し、冷たく、不敵な笑みを形作る。

だが、その笑みを咎める者はこの場にいない。

「(この町でもより光を強く感じる場所…忌々しいプリキュアも、我が手中)」

「(ここならブラウバームもリフォイユの目も届かない)」

「(ふふっ。さて、潜入捜査を始めるとしましょうか)」

 

 

 

*             *      *

 

 

 

いつも通りに見えて、少しずつ変化している日常は進み、放課後。

いままで使っていた生徒会室…ではできない話が多すぎたので、

あみの部屋に場所を移すことにした。

 

<今日のおやつは姉特製のパウンドケーキとゆず茶だよ!姉が帰ってくるまで寂しいだろうけど、いい子で待っててね(はぁと)>

「学校に行く前に鍵をかけたはずなのに…どうしてメッセージカードがわたしの部屋にあるの…」

「なにそれこわー」

「今日ねーさんは?」

「お仕事みたい。…盗み聞きされることもないと思う」

「いや、姉妹でもさすがにそれはせぇへんやろ…と思いたいけど…」

「…」

「…」

「…」

 

 

「そ、それにしてもハチモト、帰ってこないねー。毛皮のマフラーにでもされちゃったかなぁ」

「そうね…って、さりげなく物騒なこと言わないでよ!?」

「ましろちゃんって前から思ってたけど結構毒吐くよなぁ」

「ほんとにね。悪口で怪物消すって正直訳が分からない」

「あ、それねー、スターリージュエリーの力みたいなんだぁ」

「どういう意味?」

「ちょ、ちょっと待って、なんでそんなん知ってるん?」

「なんかね、夢で見たのー。魔法を使う時のモチーフ?イメージ?で能力って変わるみたいでー」

「あみちゃんは万華鏡。光の力を反射だったり収束させることで闇を浄化できるんだって」

「そうなんだ…」

 

「やわもさんはこんぺいとうね。流れ星みたいに相手に降らせることも、身に纏って身体能力の底上げにも使えるわ」

 

「ほー。って、結局あめちゃんなんやないかーい!」

「そうそう!そしてわたしは音!音に力が宿ってるみたいで、癒しの歌を歌うことも言葉の暴力でダメージを与えることもできるんだよー!って…あれ?」

 

「よくも、さっきはやってくれたわね」

 

いつの間にかあいていた窓。その向こうに白い翼と、黒髪をなびかせ

「はるこちゃん!?」

青筋をぴっきぴきに立てた女帝が立っていた。

 

 

「はーるこさまぁ!!は、早いですぅ…(ぜーはーぜーはー)」

「あなたが遅いのよ。ハチモト。」

ふん、と鼻を鳴らしたはるこは翼をたた…

「…ぅわっ!?」

たたもうとしたが、風にあおられ、よろけた。

「あぁっ!はるこさま!?大丈夫ですか!?」

「も、問題ないわよ!まったく、イタズラな風ね…」

「…ぶふぅっ!」

「(ちょい、ましろ、笑ったらあかんって…!)」

 

うつむいて肩を震わせる2人を睨み付け(よく見ればその頬は少し赤い)

「あみさん…だったわよね?大事な話があるの。入ってもよろしいかしら?」

 

 

ここに、星の力を宿すプリキュアが4人集うこととなる。

 

 

「あの、土足はちょっと…。玄関から入りなおしていただいてもいいですか…」

「なによそれ!知らないわよそんなの!!」

 

 

 

*             *      *

 

 

 

玄関からはるこを招き入れ、どうにかこうにか靴を脱がせた3人は

「なに、この飾り気のないケーキ。あたしはもっと果物とか生クリームたっくさんのものでないと食べないわよ」

「あたし、酸味の強いのキライなの。しかもゆず?おばさんくさい…」

 

高飛車なお姫様に餌付けを試みていた。

 

「えー、でもこれおいしいで?果物とか乗せる前のシンプルな味が楽しめるんやで」

「ゆずもお湯に溶かすととろっと甘くておいしいんだよねー」

「姉の作ったものなので、はるこちゃんの口に合うかわからないけど…」

「はぐはぐっ!ん~!でりしゃすですぅー!はるこさま!お毒見させていただきましたです!」

「キャラ変わってるんだけど。っていうかまだ毒見頼んでないし…」

 

しかたないわね…とケーキに手を伸ばすはるこ。

「フォークとナイフもないのね…原始的だわ…。いただきます…」

 

はぐっ

 

「…どや?」

「は、はるこちゃん?」

「固まってるー」

 

「…………………なにこれ」

「は、はるこさま…お口に合いませんで」

「おいっしいじゃないの!!!ふわふわよ!ふわっふわ!」

「よかったぁー。あ、よかったらゆず茶も飲んでみて。ケーキで甘くなった口がさっぱりするよ。」

 

ほっと胸をなでおろすあみ。これでダメだったら姉へ一週間接近禁止を言い渡そうかと思っていたがそれはまた別の話。

 

「ゆず茶。ジャムみたいなものなのね…ロシアンティーの庶民版…かしら」

「ほわぁー。身体があったまるですー」

「最初は薄めにして、あとからゆずを足すと最後まで飽きないよー」

「パウンドケーキにゆす茶ごと乗っけてもおいしいで!」

 

「うん…あまずっぱくて、おいしい…」

 

ほんのりと立ち上る湯気。はるこの冷えた心に染み入るように、辺りを温めた。

 

 

 

「大事な話、って言ってたよね。はるこちゃん」

それからしばらくして、意を決したように、あみがはるこに切り出した。

「そうね。スターリージュエリーに選ばれしプリキュアが4人揃った以上、あたしは王国の人間として話さなきゃいけないことがあるの」

居住まいを正し、話し始めるはるこ。唇の端にケーキのくずがついていたが、こっそりハチモトが拭った。

 

 

「あたしやハチモトがいた国、スターメロディア王国は闇の組織<D-voi-S(デスボイス)>に侵攻を受けた」

「戦ったけど、スターメロディア王国の騎士、アウローラが奴等に討たれて…。そこからはもう、どうしようもなかった」

「デスボイスの王、ブラウバームの手によって…あたしたちの国は、【完全なる黒】に染め上げられてしまった」

 

「そうなってしまう前にボクは王からスターリージュエリーを授かり、星の輝きを宿したものを探しに出たのです。」

「【完全なる黒】になった以上、もうそこに光は生まれない。星の力も吸収されるだけで意味をなさない」

「あたしたちの身体は人間に近いけど、ここに心臓はない。心臓の代わりにみんなスターリージュエリーをもってる」

「身体がなくなってしまっても、星の力は残って、持つものに戦う力を授ける。あなたたちが持っているものが、それ。」

「キャンサー、アリエス、サジタリアス。そしてあたしの…タウラス」

 

牡丹、薄水、若草、白銀。4人のプリキュアの胸に光が宿る。

 

「じゃあ私に夢で力のことを教えてくれたのも、サジタリアスだったんだぁ…。」

「…サジタリアスは活発なのです。勝手に出てきたりするです」

「そういやこないだハチモトの身体から出てきてたなぁ」

「はるこちゃん。わたし達は…どうすればいいの?」

 

 

「わからない」

 

ぽた、ぽたと、こぼれる滴がはるこの膝を濡らす。

「わからない、わからないの。最初はただ奴等への復讐の気持ちでいっぱいで、自分への後悔でいっぱいで」

「はるこ様…」

 

「あたし、逃げたの!…怖くて…怖くてたまらなくて…」

「アウローラがあたしを守って倒れた時も、お父様やお母様が最後の力であたしに転移の魔法をかけてくれた時も」

「…身体が石みたいに凍り付いて、動けなかった」

「なにも、なにもできなかった!!!」

「【Re:birth】の力もうまく使いこなせないくらい、あたしのかがやきは弱っていて」

「転移している間も、この世界に降りてからも、悔しくてたまらなかった」

「悔しいの!王国を守れなかった自分も、そこから逃げ出してしまったことも!!!」

 

 

「そっか…だから変身したはるこちゃんは、あんなに苦しそうにしていたんだね」

 

爪の跡がつくくらい握り締められたはるこの拳に、そっと手が重ねられる。

 

「わたし達にできること、思いついたよ。はるこちゃん。」

「そうだねあみちゃん。私、はるこちゃんと仲良くなりたいなー」

「え…?」

「うちらだってスターリージュエリーに選ばれたプリキュアなんやろ?だったら仲間やん!」

「はるこちゃんが出来なかったことも、4人だったら何とかなるかもしれないよー?」

「やわもさん…ましろさん…」

「さんづけなんていらんって。はるこ。今度こそ助けさせてな?」

 

手を伸ばし、はるこからこぼれる暖かい滴を、あみの手がぬぐう。

「ひとりでいっぱい背負ってきたんだね。でも、もう平気だよ。わたし達にも手伝わせてほしいな」

 

たとえ人間とは違う生き物でも、悔しくて悲しくて流れる涙はきっとホンモノだから。

 

 

to be contained!

「どぉおおおおいううううことだあああああああああ!!!!!」
「あーもう閣下うるさい!さっきから説明してんじゃーん」
「少しその喧しい口を閉じてください。ブラウバーム様。」



あっれー?なんだーこれ。夢ー?私が、夢をみてる私、を見てる。めいせきむっていうんだっけ。


「う、うむ…すまない、ブリュッケ…」
「えっーとぉ、スターメロディア王国を【完全なる黒】にできたから、
『じゃあ次の星行っちゃおっかー☆』ってブラウバーム様が選んだ星にぃ」
「我々の天敵であるプリキュア…光の戦士が居たということですよ。閣下。お分かりになりましたか?」


ぷりきゅあ?なーんか最近それっぽい単語聞いたぞ?


「しっかも3人も!目覚めちゃってるからねー。1人はこっち側に堕とせそうだったんだけどなぁ…」
「ねー、リフォイユ、頑張ってたのにねー。どんまい☆」
「まったくもって慰められて気がしないんですけど!オールビッスのばか!もう知らない!」
「プリキュアめ…我等デスボイス帝国の【完全なる黒】計画を幾度となく邪魔しおって…」
「ご安心ください、すでにやつらの居場所は特定しております」
「おー☆ブリュッケえらーい☆ボク偵察行ってこよっか?」
「あーじゃあついでにあんぱん買ってきて。閣下。」
「な、なんで我輩なのだ!?」

「そうですね…私も潜入の準備がありますし…マヌケで詰めが甘くて仕事の遅い、使いっ走りしか能のないあなたに皆付き合わされているのですから、当然では?」
「マヌケ…仕事の、遅い…我輩の扱いってなんなのだ…」
「あ、じゃあボクも閣下と一緒に行く☆」
「オールビッス…信じられるのはお前だけだ…」
「いちおー同期だし☆偵察ついでに行ってきまーす☆


わー…一番えらそうなのに一番信頼されてない感じだー…って!そうだよ!


寝具を蹴飛ばさんばかりの勢いでましろが起き上がる。
「プリキュアだよ!今日こそはあみちゃんをとっちめて全部丸ごと吐かせないと!」






「べーかりーかふぇ マーメイド?」
「そう。ましろの両親がやってるパン屋さん。ましろも学校終わりにお手伝いしてるんだ」
「そうなんや。なんや、さっきえらい剣幕で『今日、放課後、マーメイドに来て!!!』って言われて…
うち、イスから転げ落ちそうやったで。なんやろなぁ?」
「わかんない。新商品の試食とかだったら嬉しいんだけどなぁ…ふっかふかのパンケーキとか…あ、ここだよ」

「いらっしゃいませー、マーメイドにようこそー!ってあみちゃんとやわもちゃんかぁ。営業スマイルして損したー」
「入店5秒でそれかい」

ましろの案内で奥のイートインスペースに案内される。
ロイヤルミルクティーとバニラキャラメルマキアートがあみとやわもの前に置かれ、
ましろがその対面に座る。
開口一番
「あみたりすくー、今日は青色毛玉ちゃんいないのー?」
「アミタリスク言うなし。ハチモトだったら昨日はるこ様って人を追いかけて、そのまま帰ってこなかった…んん??」
「うちもおるで!」
「あのさー、私さー、こないだ取り憑かれたこととか、しゃべる青色毛玉ちゃんとか、アミタリスクのこととか、全部覚えてるんだよねー。
そんで、昨日体育館倉庫であった事も知ってるんだよね、私…窓から見てたよ?
空色ツインテールも可愛かったけど、カンフィエータちゃんの姿もやわもちゃんの新境地って感じで可愛かったよー。」
「おおきに!うちやで!…え、え?」
「ねーぇ、あみちゃん

な  ん  で  忘  れ  さ  せ  よ  う  と  し  た  の  か  な  ぁ ?」

「ひえぇっ!な、なんてプレッシャーや!?」
「あ、あああああ…(…怖い!昨日の戦いよりも怖いよこの幼なじみ!)」
あみは知っている。普段ぽやーんとして柔らかな雰囲気のましろだが、怒ったら誰よりも恐ろしいという事を…
「あみちゃん!!!」
「は、はい!!!!」
「なんでそんな面白そうなことに私も混ぜてくれないの!?」
「…はい?」

「すいませぇーん☆」
「会計を頼みたいんだが…」
「あ、お客さん来ちゃった。はーい!少々お待ちくださいませー!」
パタパタと踵を返しレジに向かうましろ。詰め寄られていたあみがテーブルに崩れ落ちたのは言うまでもない。
「どーいうことや…ましろちゃんには巻き戻し?の魔法をかけてたって話ちゃうかったん?」
「そのはずだよぉ…うぅ、怖かった…」
「あれ間違いなく効いてないよな。っていうか記憶力凄まじいな」


「えー、つぶあんぱんひとつ、こしあんぱんひとつ、よもぎあんぱんひとつ、さくらあんぱんひとつ、
しろあんぱんひとつ、ごまあんぱんひとつ…オールビッスは、なにか欲しいものはあるか?」
「ち、ちょっと待って閣下、そんなに買うの?」
「ん?そうだが?リーからのリクエストじゃないか。ただ、この店のあんぱんの種類が多いからな。
どれが奴の好みかわからん。全部買って、そこから選ばせたらよかろう。あ、あと牛乳をひとつ頼む」
「かしこまりましたー。お会計こちらになりますー」
「うむ。これで会計を頼む」
「ねーねー、ちょっと聞きたいんだけどぉ☆この辺で流れ星が降ってきたとか、そーいう事あった?」
「あー、ちょっとわかりかねますー。申し訳ございませんー」
「そうか…行くぞ、オールビッス。釣りはそこの募金箱にでも入れておいてくれ。」

あんぱんだけ6個、そして牛乳。
見た目の派手さは勿論、閣下と呼ばれていることや、言葉遣いによる独特の雰囲気。
怪しい…でも、悪い人というよりも…
「デーモン系の人なのかな?」


「特に情報はなかったねー。閣下。」
「ごまかされたようなような気もしたがな…確かに、この街には忌々しい光の気配がする」
「どーする?とりあえずこのお店…ボク達のモノにする?けっこー繁盛してるみたいだし、情報集まりそう☆」
「そうだな…【我が闇に染まりし影よ。最果てより姿を現せ】あの人間を我が傀儡とするのだ」
ブラウバームの人差し指が足元から伸びる影を掬う。ずるりと引き出された影は実体を持ち、人型となった。
「ボクも加勢しますね。イュース、ドラコー、おいで。お店の中にいる女の子達に取り憑いてきて☆」

\パンティ!/\…/\パンのにおい…/

「うーん。変な人だったー。ただいまー。」
「あの人…あんぱん好きなんかなぁ?」
「あ、あああ…ましろが…帰ってきた…」
「ふっふーん、じゃあ、さっきの続きだね、あみちゃん…?」
「ひええええええ…。ん?あの黒いのって…?」

\パンティ!/ \…/ \パンやさん…/

「うわっまた出た!2頭身でバランスの悪い全身黒タイツの怪人だー!!!」

\バンディ!(ぐさっ)/

「あ、なんや1人痛そうにしてる」
「キャラクターとしても何番煎じ?って感じだよねー。オリジナリティに欠けるっていうか。イー!とか言いそうなのになんでまさかの下着の名詞を連呼してるわけ?」

\パ、パンティ…(ぐさぐさ)/

「しかも実際にパンツ被っちゃってるし。それ、どこから持ってきたの?お母さんの???え、もしかして自分で買ったの???笑えるー!!!」

\パ、パン…テ…ィ… (サラサラサラ…)/

「あみ!やわも!また敵の気配がしているです!すぐに変身を…!」
「ハチモト!で、でもさ、殆ど戦意喪失してるっぽいんだよね…」
「パンツ被ってる黒いのはうつぶせに倒れてほぼ消えかけとるし、1人こそこそ逃げようとしとるし、あと1人はパンの陳列棚に夢中…やな」

「でたわね青色毛玉ちゃん!!!!勝手に人の記憶を弄ってくれて…覚悟はできてるんでしょーねぇ…!」
「あ、あれ?この方には【Re:birth】をかけて、忘れて頂いたはずですよ??ボクの姿が、見えてryあ、やめるです、耳を引っ張らないでです!!
だ、だからと言ってしっぽが良い訳ではないのです!!あ、あみー!やわもー!!た、助けてですー!!」
「あ、わかった!やわもの時と同じなのかも!はるこちゃんが言ってたじゃない。完璧ではなかったって。」
「あー、ほんまやねぇ。なんやきっかけとかあったら思い出すのかも知れへんなぁ。そもそもハチモトがかけた魔法やったから力が足りてなかったとか?」
「2人で納得してないでボクを助けてですー!!!」


*  *  *


「…もう帰ってもいいか?我輩平和すぎて頭痛くなってきた」
物陰から様子を見ていた2人だったが、ブラウバームが痺れを切らしたように呟いた。
オールビッスもそれに同意する。
「怪人達があぁなっちゃどうしようもないね…。帰りましょっか。牛乳温くなっちゃった。【空間転移】」
「あ、怪人戻し忘れた…まぁ、いいか」


*  *  *


「うりゃうりゃうりゃー!!もみくちゃにしてやるー!!」
「も、もう、やめるですぅ…!」
「…あれ、毛玉の奥から、宝石出てきたよ?」
ハチモトのふさふさの毛並みがモップのようにもっさりになったころ、観念したように黄緑の光が顔を出した。
「あみちゃん、あれって…」
「スターリージュエリー!でも、私達の持ってる色じゃない。」
「…どうして出てきたです、サジタリアス…強引だけど自分の可能性を探してる姿勢は嫌いじゃない?
…ボクたちの姿が見えてるなら、星の輝きを持ってる…なるほどです」
「スターリージュエリーがキミを選んだようです。この宝石はキミのものです。」

宝石が夕日を受けて輝いた。
すうっと浮き上がり、暖かい黄緑の光がましろを包む。

「4つのスターリージュエリーがすべて目覚めた…ようやくこれで、ボクの役目も…」
「はい、勝手に死亡フラグ立てないの。」
「ふぎゅっ」
一時緩んだましろの攻撃が再開される。今度はハチモトの頬を両手で潰すようにこね始めた。
「なんか、ましろちゃん、イキイキしとるな…」
「わたしも、こんなましろ初めて見る」
「私ずっと自分以外の何かになりたかったの!だからどうしたらいいか教えてよーハチモトちゃんー」
「ふぎぎゅぅ。す、【スターリーボイス☆ライブスタート】で変身できるです…。」
「なるほどー。で、あたしもプリキュアになれるってことでいいんだよね?」
「そういうことになるんやろなぁ。」
「なんか無理やり認めさせた感じありまくりだけど…」
「あのキモウザいパンティ野郎をぼこぼこにできるならあたしもプリキュアやるよ!!」

\ヒィッ!/ \…ィ… (サラサラサラ…)/

「黒いの、消えたね。」
「ウソやん。」
「と、とんでもない力です…」
「とーりーあーえーずー!【スターリーボイス☆ライブスタート!!】」

「流れる星に、白き願いを!キュアフェアリー!」
「スターリーボイス☆プリキュア!わ、ほんとに口と身体が勝手に動くんだぁ」
「そんじゃあ改めて、これから宜しくね!アミタリスク、カンサイエータ!」




to be contained!


「ってアミタリスクっていうなし!」
「なんやねんカンサイエータって!変に語呂えぇから腹立つわー!!」
「へへへー」
わーらえー わらうかーどにーフフフフンー♪
「…っう…」

鼻歌にしてはボリューム大きめの歌。
物陰にうずくまる はるこの意識がうっすらと浮かび上がる。
夢が、なにもかもがバラバラになってしまったような暗闇。
自分が脆くて、情けなくて、何も見えない。

うーちがーつーいーてるでっ とぉっておきーのまほぉおー…ん?
うおぇ!?人が、倒れとる!?





「なんやあんた!どーしたんや!?」
「…ここ、は…?」
「ここは学校やで。fracoco学園っていうねんけど…ほんまに、あんたどうしたんや。こんなところで倒れて…」
「がっこう…そう、ここは地球なのね…」
「んん?…とりあえず、保健室いこか?つれてったるからさ」
「いい。あたし、助けてもらう資格なんてないの」
「資格って…そんな今にも泣きだしそうな顔してるあんたを、うちはほっとけへんよ。ほら…」
バシッ!
「触らないで!!…声をかけてくれてありがとう。あたしはだいじょうぶ。だから、あたしのことは忘れて…」
「【Re:birth】」
純白の光が周囲を包む。時間を巻き戻す、選ばれた者だけが使える星の力。まだ、使える。
「あれ、うち…何してたんやっけ…そうや…生徒会室に、呼ばれてたんやった」
ごめんね。そうつぶやくはるこの声は、もう聞こえていないようだった。

「…あたし…逃げちゃったんだ…怖がって…ひとりで…みんなは…?みんな、いなくなってしまったの…?」
呟くはるこの身体が震えている。視界が滲むのは、固く握りしめた拳のせいだ。きっとそうだ。
「あいつらの…あいつらのせいで…!!!」


    *   *    *   


スタボ☆ 第2話


「転校記念パレード…やてぇぇ?」
私立fracoco学園の生徒会室からすっとんきょうな声が響いた。
そんなん聞ーたことないわぁ…と腕を組むのは やわも。
誰にでも分け隔てなく仲が良く、ポケットの中には常に人に配る用のあめちゃんが入っている。
ざっくばらんな性格で活発、運動部で部長を務めていることから生徒会との関わりも多い。
「そうなの…転校生の保護者…的な立場の人が、どーしてもそうしたいって要望を言ってきてて…」
苦悩の溜息を吐くあみ。それもそのはず。
「そうです!ボクたちではるこ様を迎える準備をするんです!」
要望は絶えず頭上から降ってくる。青毛玉…スターリージュエリーの妖精、ハチモトが自己主張を繰り返しているのだ。
しかも、乗っかられているあみにしか聞こえない声だから始末が悪い。
「だってあたしがやってくるのよっ!?平民全員で歓迎してしかるべきじゃない!とかって虚栄心満々で言いそうだよねー」
にこにこと毒を吐く ましろ。先日謎の怪人に乗っ取られかけたが、特にダメージはないようだ。
そして、巻き込まないように、とハチモトがかけた【Re:birth】も実は効いていない。

「いくら生徒のための生徒会とはいえ、一個人にそれだけの予算かけれるワケないじゃんねー」
「しかもなんやの。純白のハトを三千羽、純白のオープンカー、レッドカーペットって」
「レッドカーペットの上をパレードすることではるこ様が在校生に存分にアピールされるのです!!!」
ぴょんぴょんとあみの上で毛玉が跳ねる。重くはないけど頭が痛い。
「で、最後にfracoco学園からの歓迎のしるしとして純白の鳥たちが飛び立つんだそうよ…」
「いったいどこのハリウッドセレブやねん!」
あみが悩み、やわもがつっこみ、ましろが微笑み、ハチモトが跳ねる。今日の生徒会室は賑やかだ。
パレード案の代わりとして、全校集会で学園長直々に紹介される、(新任教師でもないのだからこの待遇だって十分VIPだ)
という案で話を進め、ハチモトを納得させたところで、
「あみちゃん、ましろちゃん。ごめんやけどうち、部活の時間や。はい、あめちゃんあげる」
「あー…ありがとう…。おいひい…」
「わーい!ありがとうー!」
「うちのとっておきのあめちゃんやからな!元気出るで。残りのお仕事頑張りぃな」
へへっと笑い手を振りつつ去っていく。やわもはこういった所作から【男前】と称されることが多い。
どっちかっていうと女の子にモテそうねー。と誰に向けてでもなくましろが呟いた。



部活動の終わったやわもは、ひとり体育館倉庫にいた。
先ほどもあみ達にも披露した男前キャラに逆らえず、部活が終わった瞬間
「さぁ、暗くなる前に帰りな。お嬢ちゃんたち。」
などとのたまい、部員たちを送り出してしまった。

「はー…なんか忘れてる気がすんねんけどなぁ…」
備品などを片付けながら、独り言を呟く。
「白い光…うっ頭が…ってちゃうちゃう。転校生かぁ。
どんな子なんやろなぁ。VIP対応されるくらいやから、相当のお嬢様なんかなぁ。
手足長くって、美少女で、女の子らしくって、髪の毛だってサラサラで…とか…」
人知れず抱くコンプレックス。やわももまた、変化を願っていた。
「うちも…そうなれたらいいのに。」

「それ、叶えてやろうか?」
耳に残るバリトンボイスが響く。いつの間にか見知らぬ男が跳び箱の上に座っていた。
「だ、誰や!?」
「誰だっていいじゃーん。俺はアンタの願いを叶えに来たんだから」
「ウチの、願い…?」
「そう!アンタみたいに色気もなければ…なんだ?可愛げもない?押しが強そうで…あと元気!な感じする!」
「ケンカ売っとんか褒めてるんかどっちかにせぇや」
「どっちでもいいじゃん?これまでのアンタとは別の自分になれるんだぜ?」
「…別の自分って…それほんまに…?」
「そうそう!だから、ちーっとだけ俺たちに協力して!もー人手が足りなくってさぁ。助かるよー」
男が強引に話を進め、じゃあいくね、と指を鳴らした途端、糸が切れたようにやわもが倒れる。
「アンタのカラダだけ貸してもらうね。だーいじょうぶ。俺、女性には手ぇ出さないタイプだから。」
\パンティ/


「あみ!!!大変です!またあいつらが現れたです!!!」
「えっ!?ちょ、ちょっとごめんましろ!!トイレ、行ってくるね!?」
「おー。いってらーい。」
バタバタと生徒会室を後にするあみ。
がんばれー、とましろの声が聞こえた気がするが、相変わらず頭の上で騒ぐハチモトにかき消されてしまった。


「おー!いーかんじじゃーん!」
「…チャウチャウ…エセチャウ…ウエストサイドピーポー…」
「前回は乗っ取らせる前に浄化されちゃったからなー。これで当分俺の仕事はなくなる!よっしゃあ!!」
流れるツインテール。透き通る青と黒を基調としたコスチューム。その姿はどこか、憧れたお姫様のようで
「…ウチダッテ…ウチダッテ…カワイクナリタイ……グアアアアアアアア!」
暗闇をまき散らす魔女のようだった。


「そこまでよ!」「です!!!」

「【スターリーボイス ライブスタート!】」

「おぉ出やがったな!キュア…アスタリスク?だっけ?」
「不本意ながらそうよ!あなたは誰?何をしにきたの?この女の子は…」
「おぉっと。そんないっぺんに質問されても困るぜぇ?」
「こいつは、リフォイユ…ボクたちの国をめちゃくちゃにしたやつらの仲間です!!」
「んー?あぁ、あの平和ボケした国?なんだ、まだ生き残りがいたのかぁ」
にたりと笑みを作るリフォイユ。その眼は新しいおもちゃを見つけた子供のように輝いている。
「リフォイユ…!ボクたちの国を返せです!!!」
「そうよそうよ!あなたのせいでわたしも巻き込まれてるんだからね!」
「はっ。やーなこった。…やれ」
「…カワイク…ナリタイ…!グアアアアアアアアアア!!!!!!」

「あみ!危ないですうあぁっ!」
「え?…きゃぁあっ!!」
声に反応するも、突進を正面から受け、そのままハチモトごと反対側の壁に突き飛ばされる。
常人なら耐えられるものではないが、変身のおかげで身体能力は向上している。ただ、反射神経はそのままだ。
「…うっ、く…痛い…」
「はははっ!やるねぇ、いい子じゃん!」
全身を強打される感覚に意識が遠のきそうになる。恐怖が侵食していく。
「うぅ…あみ!?しっかりするですー!!」
「…なんて、速さなの…これが、闘い…?」
「よーしよし、魔女ちゃん、しっかり俺の代わりに働いてくれよぉー?」
「…ウチモ…オンナノコラシク…ウウウウウウ」
「…この口調…?まさか…やわもちゃん、なの…?どうして…」
「……カワイク…ナリタイ…ウチモ…」
「俺たちの力で怪人を憑依させたのさぁ。そのままもう一発やっちまえぇー!」


「そうはさせない」
刃のような冷たい声が場を切り裂く。流れる黒髪。
「この声!はるこ、様…なのですか?」
「【タウラス】。目覚めよ。我に力を。【スターリーボイス ライブスタート】」
ハチモトからあふれ出す純白の光。光は結晶となり、怪物の動きを止める。
光はやがて人のかたちになり、純白の戦士となった。
「黄昏に響く、私の羽ばたき。キュアエンプレス。」
「ちっ…今度は一目散にしっぽ巻いて逃げたビビり姫かよ」
「なんとでも言ったらいいわ。でも、あんた達は、ぜったいにゆるさない。」
「宇宙の塵となりなさい。【コズミック ダスク】」
はるこの手の中に光の渦が生まれた。暴力的なまでの白が広がり、闇を溶かしていく。
「グガアあアア!!」
「待って!消さないで!この子はわたしの友達なの!!」
「もうあいつらの、なかまでしょ?だったら、消すしかないじゃない」
「あみ!彼女に言葉をかけるです!動きが止まった今なら、侵食を止められるはずです!!」
「あちちちっ!!!!やっべ、消えちまう!こーなりゃ逃げるが勝ち、ってかぁ。やわもー最後まで頑張れよぉ。【空間転移!】」
最後までおちゃらけた調子でリフォイユが姿を消す。ひとり残された魔女は耐えきれずに倒れこんだ。
「ちょっと、待ちなさいよ!くそっ…」
「いやアアアあアアああアア…!」
「あみ!早くするです!」
「やわもちゃん…!あなたは…そのままで十分に可愛い女の子だよ?格好いいなって思う時も勿論ある。
でも、疲れた人を笑顔にさせてくれる。困った人がいたら放っておけない。そんなっ、優しい、女の子なんだよ…!」
込み上げる涙に、あみの声が詰まる。
「…グ…ホントに?…まだ、うち、ガンバレるかな…」
「ほんとだよっ!頑張って!闇になんて負けないで!!!」
消えかけている魔女…やわもの手を思わず握り締めると、ほのかに青い光が射した。
「これは…【アリエス】が反応しているですか…?」
「そう。あなたも、星の輝きを宿すのね…ハチモト!あたしが魔法を解く瞬間に【アリエス】を解放させて!」
「はいです!!」
「やわもさん…というのね。あたしの声が聞こえるなら、一緒に唱えて。」

「「【スターリーボイス ライブスタート!】」」

白が収束すると同時に、爽やかな水色の宝石が輝きだし、やわもを包みこんだ。

「……なんや…暖かいで…?う、口が、勝手に」
「みんなに届ける、きらめく星屑!キュアカンフィエータ!」
「スターリーボイス☆プリキュア!やで!ってなんやのこれ」

「口上を言うまでが変身です。仕方ないのです。」
「ってキツネが喋ってるぅー!?しかもプリキュアって、なにー!!??」
パニックに陥るやわもに、思いっきり抱き着くあみ。
「やわも!よかった、よかったよぉ…もう平気?痛いところない?」
「え、あ、ん?あみちゃんなん?平気やけど、これほんまどーいう…。あ。」
パ、パンティ…(コソコソ)
「うちの身体で好き勝手してたのはあんたか!【あめちゃん パーンチ!】」
やわもの握りこぶしを中心にカラフルな光が渦を巻き、そのままの勢いで叩き付ける!
     \パンティィィィィィイイィイィィ…/
「すごい…力押しだけで怪人が消えちゃった…」
「ふーっ!スッキリしたわー!」
「…よかった」
「はるこ様!はるこ様も地球に来ていたんですね!ずっと探していたんですよ…ご無事でよかったです」
「はるこ、様?あなたは…」

「あたしは…キュアエンプレス。スターフェアリー王国の王女」
「あー!思い出した!!!あんた、さっきの女の子やん!!!王女様やったんか!?」

「…【Re:birth】が完璧ではなかったのね。同じ、プリキュアとして選ばれたなら歓迎するわ」
「でも、あんたたちとなれ合う気なんてない」
「あたしが、あいつらを倒すの。だから、邪魔しないで」
それだけ言い捨てると、キュアエンプレスは飛び去って行った。
怒り、悲しみに満ちた冷たいまなざしと、白い羽根をその場に残して。




to be contained!