ハチモト「うわあああああん!…はるこ様ぁ…うぅっ、ぐす…」
やわも「いい加減泣き止みーやー。ハチモトぉ」
ハチモト「だって、だって…!はるこ様に、ボク、ずっと探してたのにっ、とんでもないことを…」
あみ「まぁ…それは否定できない…」
ましろ「今後口聞いてもらえるかどうかもわからないっていうねー」
ハチモト「うあああああああああああああん!!!はるこ様ぁ!ごめんなさいですー!!」
どうしてハチモトは泣いているのか、話は今朝にさかのぼる。
スターフェアリー王国の王女であったはるこが正式に編入することになり、
その歓迎式典も兼ねた編入式が行われたのだが…
はぁ!?なによソレきーてないわよ!?転入記念式典!?ばっかじゃないの?
いやーとある筋から要望があったもんでねー
ほんの少し壇上に出てくれるだけでいいんです…!
挨拶だけしてくれたらいいんよー
挨拶!?ちょっと、押さないでよ!!
「臨時教師のリョウです。国語の教諭として勤務します」
あの新しいせんせーの後に出てな!
い や よ !
もう無理だってー諦めなー
「みなさんの学園生活がもっと楽しくなるよう、全力でお手伝いします。よろしくお願いしますね」
終わったみたい!では、よろしくお願いします!
え、ちょ、やだやだやだやだー!!!
押すでましろ!せーーのっ!
はるこ「ぅわっ!!………チッ……はるこよ。言っておくけど、あんたたちとなれ合うつもりはないわ。
式典だかなんだか知らないけど、くだらないことに時間を使いたくないから。ここで失礼させていただくわ」
そして話は冒頭に戻る。
「いやーあれは会場冷え切ったよねー」
「もう、シーーーーーーーーーーーンッ!ってなったもんなぁ」
「ほらもう泣かないで。悪気があったわけじゃないでしょ?話せば分かってくれるよ。…たぶん」
「たぶん、です!?」
「あみちゃんもあんま慰める気ないなぁ」
「ってか、そんないつまでもめそめそしてていいのー?」
「うぅ…はるこ様のところへ行ってきますです…(ふらふらふよふよ)」
「ガンバレ!うちらがついてるで!気ぃつけてなー」
「おや、なにやら賑やかですね」
「あ、さっき挨拶してはった」
「はい。この度こちらの学園で臨時教員を務めさせていただきます、リョウと申します」
「わ!すみません。どたばたしていてご挨拶が遅れてしまって…わたし、生徒会長の」
「あみさん、ですよね?学園長から紹介を受けていました。才色兼備、容姿端麗。今後がとても楽しみな女性だと」
「へぁ!?そ、そんなことはないです!」
「ひゅー!べた褒めじゃん!あみちゃん、学園長にいくら包むー??」
「やめんかいましろ」
「短い期間ではありますが、皆さんも。どうぞよろしくお願いします。授業が始まりますので、この辺で」
それではまた、と背を向け歩き出すリョウ。にこにこと温和な表情が一転し、冷たく、不敵な笑みを形作る。
だが、その笑みを咎める者はこの場にいない。
「(この町でもより光を強く感じる場所…忌々しいプリキュアも、我が手中)」
「(ここならブラウバームもリフォイユの目も届かない)」
「(ふふっ。さて、潜入捜査を始めるとしましょうか)」
* * *
いつも通りに見えて、少しずつ変化している日常は進み、放課後。
いままで使っていた生徒会室…ではできない話が多すぎたので、
あみの部屋に場所を移すことにした。
<今日のおやつは姉特製のパウンドケーキとゆず茶だよ!姉が帰ってくるまで寂しいだろうけど、いい子で待っててね(はぁと)>
「学校に行く前に鍵をかけたはずなのに…どうしてメッセージカードがわたしの部屋にあるの…」
「なにそれこわー」
「今日ねーさんは?」
「お仕事みたい。…盗み聞きされることもないと思う」
「いや、姉妹でもさすがにそれはせぇへんやろ…と思いたいけど…」
「…」
「…」
「…」
「そ、それにしてもハチモト、帰ってこないねー。毛皮のマフラーにでもされちゃったかなぁ」
「そうね…って、さりげなく物騒なこと言わないでよ!?」
「ましろちゃんって前から思ってたけど結構毒吐くよなぁ」
「ほんとにね。悪口で怪物消すって正直訳が分からない」
「あ、それねー、スターリージュエリーの力みたいなんだぁ」
「どういう意味?」
「ちょ、ちょっと待って、なんでそんなん知ってるん?」
「なんかね、夢で見たのー。魔法を使う時のモチーフ?イメージ?で能力って変わるみたいでー」
「あみちゃんは万華鏡。光の力を反射だったり収束させることで闇を浄化できるんだって」
「そうなんだ…」
「やわもさんはこんぺいとうね。流れ星みたいに相手に降らせることも、身に纏って身体能力の底上げにも使えるわ」
「ほー。って、結局あめちゃんなんやないかーい!」
「そうそう!そしてわたしは音!音に力が宿ってるみたいで、癒しの歌を歌うことも言葉の暴力でダメージを与えることもできるんだよー!って…あれ?」
「よくも、さっきはやってくれたわね」
いつの間にかあいていた窓。その向こうに白い翼と、黒髪をなびかせ
「はるこちゃん!?」
青筋をぴっきぴきに立てた女帝が立っていた。
「はーるこさまぁ!!は、早いですぅ…(ぜーはーぜーはー)」
「あなたが遅いのよ。ハチモト。」
ふん、と鼻を鳴らしたはるこは翼をたた…
「…ぅわっ!?」
たたもうとしたが、風にあおられ、よろけた。
「あぁっ!はるこさま!?大丈夫ですか!?」
「も、問題ないわよ!まったく、イタズラな風ね…」
「…ぶふぅっ!」
「(ちょい、ましろ、笑ったらあかんって…!)」
うつむいて肩を震わせる2人を睨み付け(よく見ればその頬は少し赤い)
「あみさん…だったわよね?大事な話があるの。入ってもよろしいかしら?」
ここに、星の力を宿すプリキュアが4人集うこととなる。
「あの、土足はちょっと…。玄関から入りなおしていただいてもいいですか…」
「なによそれ!知らないわよそんなの!!」
* * *
玄関からはるこを招き入れ、どうにかこうにか靴を脱がせた3人は
「なに、この飾り気のないケーキ。あたしはもっと果物とか生クリームたっくさんのものでないと食べないわよ」
「あたし、酸味の強いのキライなの。しかもゆず?おばさんくさい…」
高飛車なお姫様に餌付けを試みていた。
「えー、でもこれおいしいで?果物とか乗せる前のシンプルな味が楽しめるんやで」
「ゆずもお湯に溶かすととろっと甘くておいしいんだよねー」
「姉の作ったものなので、はるこちゃんの口に合うかわからないけど…」
「はぐはぐっ!ん~!でりしゃすですぅー!はるこさま!お毒見させていただきましたです!」
「キャラ変わってるんだけど。っていうかまだ毒見頼んでないし…」
しかたないわね…とケーキに手を伸ばすはるこ。
「フォークとナイフもないのね…原始的だわ…。いただきます…」
はぐっ
「…どや?」
「は、はるこちゃん?」
「固まってるー」
「…………………なにこれ」
「は、はるこさま…お口に合いませんで」
「おいっしいじゃないの!!!ふわふわよ!ふわっふわ!」
「よかったぁー。あ、よかったらゆず茶も飲んでみて。ケーキで甘くなった口がさっぱりするよ。」
ほっと胸をなでおろすあみ。これでダメだったら姉へ一週間接近禁止を言い渡そうかと思っていたがそれはまた別の話。
「ゆず茶。ジャムみたいなものなのね…ロシアンティーの庶民版…かしら」
「ほわぁー。身体があったまるですー」
「最初は薄めにして、あとからゆずを足すと最後まで飽きないよー」
「パウンドケーキにゆす茶ごと乗っけてもおいしいで!」
「うん…あまずっぱくて、おいしい…」
ほんのりと立ち上る湯気。はるこの冷えた心に染み入るように、辺りを温めた。
「大事な話、って言ってたよね。はるこちゃん」
それからしばらくして、意を決したように、あみがはるこに切り出した。
「そうね。スターリージュエリーに選ばれしプリキュアが4人揃った以上、あたしは王国の人間として話さなきゃいけないことがあるの」
居住まいを正し、話し始めるはるこ。唇の端にケーキのくずがついていたが、こっそりハチモトが拭った。
「あたしやハチモトがいた国、スターメロディア王国は闇の組織<D-voi-S(デスボイス)>に侵攻を受けた」
「戦ったけど、スターメロディア王国の騎士、アウローラが奴等に討たれて…。そこからはもう、どうしようもなかった」
「デスボイスの王、ブラウバームの手によって…あたしたちの国は、【完全なる黒】に染め上げられてしまった」
「そうなってしまう前にボクは王からスターリージュエリーを授かり、星の輝きを宿したものを探しに出たのです。」
「【完全なる黒】になった以上、もうそこに光は生まれない。星の力も吸収されるだけで意味をなさない」
「あたしたちの身体は人間に近いけど、ここに心臓はない。心臓の代わりにみんなスターリージュエリーをもってる」
「身体がなくなってしまっても、星の力は残って、持つものに戦う力を授ける。あなたたちが持っているものが、それ。」
「キャンサー、アリエス、サジタリアス。そしてあたしの…タウラス」
牡丹、薄水、若草、白銀。4人のプリキュアの胸に光が宿る。
「じゃあ私に夢で力のことを教えてくれたのも、サジタリアスだったんだぁ…。」
「…サジタリアスは活発なのです。勝手に出てきたりするです」
「そういやこないだハチモトの身体から出てきてたなぁ」
「はるこちゃん。わたし達は…どうすればいいの?」
「わからない」
ぽた、ぽたと、こぼれる滴がはるこの膝を濡らす。
「わからない、わからないの。最初はただ奴等への復讐の気持ちでいっぱいで、自分への後悔でいっぱいで」
「はるこ様…」
「あたし、逃げたの!…怖くて…怖くてたまらなくて…」
「アウローラがあたしを守って倒れた時も、お父様やお母様が最後の力であたしに転移の魔法をかけてくれた時も」
「…身体が石みたいに凍り付いて、動けなかった」
「なにも、なにもできなかった!!!」
「【Re:birth】の力もうまく使いこなせないくらい、あたしのかがやきは弱っていて」
「転移している間も、この世界に降りてからも、悔しくてたまらなかった」
「悔しいの!王国を守れなかった自分も、そこから逃げ出してしまったことも!!!」
「そっか…だから変身したはるこちゃんは、あんなに苦しそうにしていたんだね」
爪の跡がつくくらい握り締められたはるこの拳に、そっと手が重ねられる。
「わたし達にできること、思いついたよ。はるこちゃん。」
「そうだねあみちゃん。私、はるこちゃんと仲良くなりたいなー」
「え…?」
「うちらだってスターリージュエリーに選ばれたプリキュアなんやろ?だったら仲間やん!」
「はるこちゃんが出来なかったことも、4人だったら何とかなるかもしれないよー?」
「やわもさん…ましろさん…」
「さんづけなんていらんって。はるこ。今度こそ助けさせてな?」
手を伸ばし、はるこからこぼれる暖かい滴を、あみの手がぬぐう。
「ひとりでいっぱい背負ってきたんだね。でも、もう平気だよ。わたし達にも手伝わせてほしいな」
たとえ人間とは違う生き物でも、悔しくて悲しくて流れる涙はきっとホンモノだから。
to be contained!
