12月。
もうすぐ終わるスケジュール帳をパタンと閉じて、それから目を瞑って、女はひとつため息をついた。


ーー好きでもない男とツリーを観る、というのは
切ないような、悲しいような、それでいて少しの楽しみもあるようで、いささか複雑だ。


そもそも誰が「クリスマスは恋人と」なんて思いついたのであろうか。
もちろん家族や友人と過ごす人も大勢居るのは既知の事実であるが、私たちが街中で無意識に聴くクリスマスソングとやらは、大概「恋人とのクリスマス」をテーマにしたものが多いではないか。それら音楽の洗脳か、それとも空気による魔法なのか、きっとこの時期、世の中の恋人たちは、互いを見つめ合い、微笑み、幸せな気持ちで過ごすのだろう。


それがどうだ。
私は、好きでもない、付き合ってもない男と、クリスマスツリーを観にいくのだ。
辞めればいいとも思う。
だが、期間限定のツリーともあって、観てみたい自分がいるのも確かだ。
おまけにその男は私を好きだと言い、今度会った時に告白すると予告してきたのだ。(全く予告になってはいないが)
悪い気はしない。だから行くのだ。それではいけないのだろうか。


女は目を開けると、ゆっくりと立ち上がって浴室へと向かった。

ゆっくりとシャワーを浴びながら先ほどの続きをふと考えていた。

ーー嗚呼、でもどうせ男と同じツリーを観るのなら"あいつ"と観たほうが心はより満たされるだろうに。いや、もはやツリーはどうでもいい。あいつと一日家の中で過ごせればもう十分だ。

あいつは、端的に言って好きにならないほうがいい男だ。
優柔不断。気まぐれ。結構なgoing my way タイプ。さらには、彼女がいながら他の女(私)ともグレーな関係を持っていたという女好き。
そのグレーな関係になってから半年。
お互い探り合い・駆け引きし合いでこっちは正直疲れている。
でも、それでも、
あいつの目を観るとそんなことも許してしまう。
「ごめん」と言われると胸が痛んで何も言い返せなくなってしまう。
あいつの体温、無言の優しさ、安心感、そして唇。
認めざるを得ないほどに欲している自分がいる。
先月泊まりに来たが今月は来るのだろうか。
ずるい奴め、悔しい。


そこまで思った女は最後に「会いたい」と一言だけ呟いて、まだ暖かい浴室から寒い部屋に戻ってきたのだった。