「旅行先の図書館」


旅先で偶然見つけた古風な図書館。足を踏み入れると、まるで中世ヨーロッパに迷い込んだかのような錯覚に陥った。しばらく内部を探索するうち、ふと一冊の本が目に留まる。『呪いの本』――そのタイトルに、ホラー好きな僕の胸は高鳴る。僕はすぐに管理人へ歩み寄り、この本の貸し出しを懇願した。
「すみません、この本を借りてもいいですか? 一応、僕、旅行者ですが、必ず一年後には返却しますので」
「ああ、構わんよ。ただし、一年後には必ず返してくれればの話だがね」
本を借りた僕は、すぐにその街を後にした。
あの本を借りてから、気づけば三年もの月日が流れていた。さすがにこれはまずいと思い。一刻も早く図書館へ返そうと決意する。
「あれ? 確かこのあたりに……」
以前訪れた街は、なぜか地図から消えていた。記憶だけを頼りに向かった場所に広がっていたのは、朽ち果てた廃墟のみ。
「一体、僕はどこで、あの本を借りたんだ……」
恐怖が込み上げ、急いで来た道を戻る。道中、どうしても本の存在が気になり、ページをめくった。そこは真っ白な紙面ばかり。だが、最後のページにだけ「お前が悪い」と書かれている。僕は恐ろしさに震え、思わず車から飛び出した。直後、けたたましいブレーキ音が響き、意識は遠のいていく。
朦朧とする意識の中、どこからか一つの言葉が聞こえた。「返さなかった。お前が悪い」。