続きです。
久々連投ですが、前のお話的に早めに上げた方がイイかなと。
レラも登場して兄さんの周りには体の事を知ってる人が増えましたね。
ホノボノ話から一気にシリアスモードとなりましたが、レラが出てきて何処までシリアスが保てるのか(笑)

ホノボノじゃなきゃヤダッて方には申し訳ないのですが、もう少しお付き合い頂ければ幸いです。


それではレラと兄さんの久々対面見たるって方はどぞっ!!










【キュヒョン君の憂鬱20】



預かっていた合鍵で宿舎の扉を開ける。カチャリと聞こえた音がやけに響く気がするのは、周りが嫌に静かなせいだろう。
上がり込んだソコは人の気配がしない。目的の人物が眠っていると聞かされた部屋へと足を運び、ノブへと手を伸ばして一瞬動きを止めた。

(……やな役回りだなぁオイ…)

誰に聞かれる訳でも無いのに、吐きかけた大きな息を思わず止めてしまった。普段はこんなキャラでも無いのになぁとボンヤリ思いつつ、目の前の扉を見つめる。この先には目的の人物が居る筈だ。だがもし此処を開いて、その人物が息をしていなかったら?
考えるだけで背筋がゾッとする。嫌な想像を拭い去るように、ヒチョルはノブへと手を掛けて一気に扉を開け払った。


「……ヒチョリヒョン…?」


飛び込んで来た相手の姿と声にヒチョルは思わず声を上げ掛けて飲み込む。扉を開けた先、キュヒョンのベットの上には布団を膝まで掛けて、チョコリと座り首を傾げたまま自分を不思議そうに見つめる小さなイェソンの姿があった。






「……お前…ホントにその…ジョンウンなのか…?」

ベットの縁に座り真下の方にある小さな頭を見つめる。イェソンは喉が乾いたとヒチョルに持って来て貰った牛乳をストローを使って美味しそうにコクコクと飲んでいた。
実はイェソンが子供の姿になって1週間が過ぎた頃、イトゥクからヒチョルへと話しが通っていたのだ。事が事だけに、ヒチョルには話しておくべきだとイトゥクが判断しての行動だったのだが、それが今回は幸を成したらしい。丁度公務が休みだったヒチョルへとイトゥクから緊急の連絡が入った。

話し合いの事も聞いていたヒチョルは緊迫した状況かもしれないと、言われるままに此処に来たのだが。

「お前…意外に元気だな…」

コチラの心配どこ吹く風といったイェソンの佇まいにヒチョルは全身から力が抜けるのを感じていた。一刻を争う事態になってるかもとまで思ったのに、苦しそうに呻く訳でも無く。美味そうに牛乳を飲む姿は何処からどう見ても健康なお子様ではないか。

「げんきだよおれは。」

ケロリと言う姿にまた力が抜けそうになる。急いで此処に来た自分の努力を返してくれ…肩を落として溜息を吐き出したヒチョルにイェソンはキョトン顔のまま、小さな手でヒチョルの服をツンツンと引っ張った。

「なんでおれがイェソンだって、わかったの?」

チョコリと首を傾げる姿は何とも愛らしい。実は話しと共に小さくなったイェソンの姿を写した写真をイトゥクから携帯に送られて来ていたのだ。
それを見た時には流石のヒチョルも座っていた椅子から転げ落ちかけた。
送らて来た画像は確かに今目の前に小さなイェソンと同じ顔の人物。しかも写真を見ただけで、彼だと判ってしまった自分にヒチョルはその日の夢で唸された程ショックを受けたのだった。

「……この俺様に判んねぇ事なんざねぇんだよ。」

実物を目にして動揺した自分を隠す為に態と強気に出てやる。そうすれば、イェソンは一瞬ポカンとした後で困ったように微笑んだ。

「トゥギヒョンはホント、おせっかいだなぁ…」

自分の為ならヒチョルまでもを動かす。イトゥクの心配性には本当に頭が下がる。

「今更だろーがそりゃ。」

確かに。二人は顔を見合わせて肩を竦めた。



「んで?体はもう痛くねぇのかよ?」

ぶ遠慮に聞いてくる辺り、そこまで話が通っている事実を隠すつもりはヒチョルには毛頭無いらしい。
皆には言うなと口止めしておけば良かった。思うものの、こんな形であれひさしぶにヒチョルに会えてイェソンはご機嫌だ。

「んー……いたい。」

また困ったように笑って、イェソンは短い腕をスイッとヒチョルへと掲げて見せる。

「みためはさ、かわらないんだ。」

だけど中からミシミシと押し出されるような痛みが体中に走るのだとイェソンは言う。それはキュヒョンにさえ言っていない事。
そこまで言って心配をさせたく無かった。背中を撫でてもらって、優しく抱き締めて貰っていたら痛みも朝より落ち着いた気がするのも事実。

「ふーん……プヨプヨだな」

「……ちゃんと人のはなしきいてる、ヒョン?」

ツンツンと啄いてくる指に、イェソンはヒチョルをジトリと見やる。
此処に来た時の緊迫した表情は何処に行ったんだと言ってやりたいが、それを言ったらまた面倒な事になりそうだしと口を噤んだが、それでも気になっていた事だけは伝えておかないと。
イェソンは呑気にペットボトルを傾けている顔を見上げて、静かに口を開いた。


「ヒョン…おれは、しなないよ?」


瞬間、動きを止めたヒチョルがイェソンの顔を見つめる。その瞳は先程までの緊迫したようなモノでも無く、だからといって驚きを湛えてもいない。
冷静で、どこまでも真実を見通そうとする瞳。その瞳を真っ直ぐに見つめて、イェソンはもう一度同じ言葉を繰り返した。

「おれは、しなない。」

皆がその事を心配していた事は何となく判っていた。自分を壊れ物のように扱う事からして、前とは明らかに違っていたから。
そして昨日ドンヘとウニョクが言っていた言葉で確信した。

『どんな姿でだって、傍に居てくれればイイ。』

それは、生きていてくれればイイの裏返しでは無いか。
自分が生きて存在してくれているだけでイイ、そう言われているのが手に取るように判った。その気持ちが嬉しかった事も事実だし、心配していてくれる皆には本当に申し訳無い事だと思うけれど。

「みんなにはわるいけど…おれはしなないじしんがある。」

自分の体は自分が1番良く判っている。痛みを発する体の原因は判らないけれど、それが自分の生死に関わる事かどうか位は判るつもりだ。
この痛みの原因が判らなくて、確かに不安になってキュヒョンへと甘えた。でもそれは自分が消えるからとか、そんな不安からでは無い。それだけは確かだから、イェソンはヒチョルへと満面の笑みを見せる。


「みんながバカみたいにしんぱいしたって、それはただのむだあしだ。」


俺は、居なくなってなんかやらない。
心配なんてバカみたいな取り越し苦労、勝手にしてればいい。

「あとでわらいばなしにしてやる。」

体の痛みにさえ負けない強い瞳に、ヒチョルは苦笑して柔らかな髪をワシワシと撫で回した。


「それでこそ、お前だよ。」


全くお前にゃ叶わねぇ。頭を撫でくり回す手に笑いながら、イェソンはしばし体の痛みを忘れた。






※AB型コンビの久々の顔合わせ。
レラはきっと兄さんの心の強さを認めつつ、その兄さんの脆さも知っててそれを支えてやろうと思ってるんでしょーね。

この後きっとちっこい兄さんにデレデレになりますよレラ様!(所詮は私の中じゃ息子に弱いレラパパイメージ



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