【Sudden onset】の零れ話です。
本編に出てきた二人が付き合う前に一度、酷くギュを怒らせてしまった兄さん。その理由が何だったのかをココで書いております。
まぁウチのギュが怒る理由なんて一つに決まってるんですが、その理由と大泣きした兄さんが書きたくてついつい手が(笑)
少し幼めな兄さんと強ーいギュがおりますが、まだデキてなかった二人の明らかにデキてんだろ行動を読んでみてもイイかって方はどぞっ!!
【喧嘩】
「キュヒョナの…キュヒョナのバカアアアアッ!!」
イェソンの大絶叫が11階へと響き渡った。
「………で、今度は何があったの?」
自分の膝の上に顔を埋めて泣く兄に僅かに溜息を吐きつつ、リョウクはその髪を優しく撫でた。
キュヒョンとイェソンが付き合ってから久しいが、偶に二人は喧嘩をする。それも結構な大きい喧嘩。大半がキュヒョンの焼きもちから来るものなのだが、その度にイェソンはリョウクへと泣きつくのだ。いい加減イイ年した男が年下の、しかも男の膝の上で泣くのもどうかと思うが、それでもイェソンならば許せてしまうと思う辺り自分も大概この兄を溺愛しているのだろう。
「…っ…ウッ…ソンミ、ナとっ…遊んでた、だけなのに…っ」
イェソンが言うには、ソンミンと二人で映画を観ていたらしい。そこに仕事で留守にしていたキュヒョンが帰宅して、怒られた。
「………また膝枕、してもらってたの?」
「…………」
答えない所を見ると、多分当たりだろう。その事に前に1度キュヒョンが酷くイェソンを叱った時の事を思い出した。それはまだ二人が身体の関係はあったものの、付き合っていなかった頃の事。
「………何してるんですか…ヒョン。」
仕事から帰宅したキュヒョンはイェソンとソンミンの姿を見て動きを止めた。二人はリビングでテレビを観ていた。だがその姿にキュヒョンは眉根をピクリと揺らす。ソファへと座るソンミンの膝の上、そこにイェソンの頭があったのだ。そしてソンミンはその髪を優しく梳いていた。其れだけでもキュヒョンにとっては見たくない光景だというのに、ソンミンのもう一方の手、その手がイェソンの胸元へと回されていて、挙げ句その手に指を絡めてイェソンが握り締めているではないか。
「……一体二人で何をしてるんですか?」
もう一度、今度は強い口調で言われたソレに漸くイェソンがキュヒョンを見つめた。だが体制はそのまま。それがキュヒョンにとってどれだけ酷な行為かなんて、恐らくイェソンは判っていない。好きだと告げてはいた。だけどその感情はまだキュヒョンだけにしか無いモノで、イェソンはキュヒョンを特別だとは思っているものの好きまでは行かない。そんな微妙な場所にいる感情。だからこうやってキュヒョンの前で無遠慮に他の者へと甘えても仕方の無い事だとは思う。思うが……
「…取り敢えず離れて下さい。」
キッパリと言い放たれた少し大きな声にキッチンで夜食を作っていたリョウクが何事かと顔を出した。
「あれ?キュヒョナ帰ってた……」
言いかけて、此方を向いたキュヒョンの瞳に思わず口を噤んだ。そこには見た事の無い冷たい瞳があったから。こんな目を人に向けるなんて何事かと辺りを見回す。ふと止めた視線の先にはソンミンとイェソンの姿があり、コレかと合点がいった。可哀想に、ソンミンはキュヒョンからの冷たい視線に固まってしまっている。だがその膝の上に頭を乗せていたイェソンは未だ状況が判っていないらしい。
「気持ちイイから、ヤダ。」
若干唇を尖らせている辺り何歳だこの人は何て目眩を感じるが、今はそれ処じゃない。イヤだと言ったイェソンへと目を戻したキュヒョンはスタスタと二人の傍へと近付くと、イェソンの手首を掴み強引に引っ張り上げた。
突然の行動にイェソンは驚いた後で、キュヒョンを睨みつける。元々切れ長の瞳はそれだけで一気に強さを増す。だが其れすらも今のキュヒョンを黙らせる材料には成らない。
「僕の気持ち、知ってて態とやってるんですか…?」
一段と低くなった声が室内へと静かに落ちる。掴んだ手首へと力が込められて、それにイェソンは顔を顰めた。
「……何の話しだか、判らない。」
嘘だ。そんなのは判っているに決まってる。だけど引くに引けなくなったイェソンはそう口走ってしまったのだ。その瞬間、キュヒョンの瞳がスッと細められ先程よりも冷たい…見た者全てを凍りつかせるような瞳をイェソンへと向けた。
「……だったら…もう僕は何も言う事は無い…」
静かに告げられた言葉と共に離された手首。そのまま背を向けたキュヒョンにイェソンは漸く事の重大さに気付いた。今のあの瞳は、自分を見放そうとする瞳…ソコまで怒らせるつもりなんて無かったのだ。だけどこんな弟達の居る前で自分へと向けてきた感情に気恥ずかしさを感じて、だから態と気付かないフリをしただけなのに。
「っキュヒョナッ」
「その名前…今の貴方からは聞きたくない。」
放れた拒絶の言葉にイェソンは自分の体から血の気が引くのを感じた。
何時も自分を大事にしてくれているキュヒョン。好きだと、何度も甘く囁かれてそれでも動かない自分を優しく見つめてくれていた瞳が離れていく。その事がイェソンの心を痛い程締め付けて、苦しさを呼び起こす。
「キュヒョっ!!」
イェソンの呼び掛けに答える事なく、キュヒョンはリビングを後にした。
「……今回は、ヒョンが悪いって判るよね?」
ソファに座り俯いたままのイェソンにリョウクは優しく声を掛ける。
リョウクとしては、元々甘えん坊なイェソンが誰かにベタベタしていても何ら気にしたりはしなかった。それが例え自分の恋人に甘えていたとしても、それは兄として甘えているのだから全く平気だと思っている。だがキュヒョンは違う。
彼は周りが思うよりもずっと嫉妬深い。自分の好きな相手を、イェソンを他の誰にも触れさせたく無いという感情。それをリョウクはもう何度となくその目で見てきた。
「キュヒョナが怒った理由…もう判ってるんでしょ?」
あれだけ嫉妬剥き出しで見つめられたら判らない筈が無いだろう。
小さく頷いたイェソンは泣き過ぎて息を詰めている。同じように隣に座っていたソンミンはその背中を優しく撫でて、困ったように笑った。
「そんなに泣いてたら、明日の仕事に支障出ちゃうよ?ヒョン…」
ソッと上げさせた顔は涙で濡れていた。目元が酷く赤くなっていて、未だポロポロと流す涙を優しく掌で拭ってやる。そんな優しい掌にまた「ウー」なんて声を出して泣くから、リョウクはイェソンの顔を覗き込みながら柔らかな黒い髪を優しく撫でた。
「沢山泣いてもイイから、キュヒョナに謝りに行こうね?」
リョウクの言葉はまるで母親のような口調だ。それにソンミン等は苦笑するしかないが、今のこの兄にとってはその優しさが必要なのだろう。
途端に涙腺を崩壊させてリョウクの膝へと顔を埋めてしまったイェソンを、二人は暫く無言のまま抱き締めていた。
※子供みたいに泣いてポヨたんとミン君に甘える兄さん。
ギュのご立腹度に兄さんはどうご機嫌を治させるんでしょーか…
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