続きです。
更新し始めると怒涛の投下となる自分ではありますが…
今日も朝から深夜まで仕事なんで今日はココまでにしようかと。

淋しん坊兄さんを全面に出してる回です。
そんな兄さんも美味しいねって思ってくれる方はどぞ!!





【Sudden onset9】



子供の頃、熱が出ると決まって朝まで母親が手を握って看病してくれた。
その時だけは自分だけの母な気がして…
もう少し熱が下がらなければイイのになんて思ってた。




食事も済ませて薬も飲ませ終えたキュヒョンはイェソンをまたベットへと寝かせた。まだまだ皆は帰らないからユックリ寝るようにと促されるままに瞳を閉じる。まだ点滴が効いているのだろう、横になると直ぐに訪れる眠気にイェソンは逆らわず意識を手放した。


(………まだ熱が高いな…)


寝たのを確認してからイェソンの脇に入れた体温計。それは39度を指している。病院に連れて行った時には40度近くまで上がっていただけに、下がるにはまだ時間がかかりそうだ。一つ息を吐いてキュヒョンは座っていたイスから立ち上がった。
まだ帰宅しない兄達にイェソンの状態を報告しなければならない。鍋も洗いたいしとイェソンが起きないようにそっと部屋から出て行った。




「ええ、今薬を飲ませた所です。」

洗い物を済ませて電話をしようとしたら、丁度着信の音が鳴った。休憩時間になったのだろう。イトゥクからの着信に通話を押して、状況報告をする。明日までに熱が下がる可能性が低いと告げると、イトゥクから苦笑の声が漏れた。

『アイツの回復力の無さは知ってるつもりだよ?』

困ったように、でも優しく笑っているだろう顔が思い浮かぶ。
明日はイェソン無しでも大丈夫なようにしたと告げられて、やはり自分達のリーダーは凄いと改めて思った。仕事の早さは天下一品だろう。

『お前には悪いけど、今日は遅くなりそうだから面倒頼むね?』

それに返事をして通話を切った瞬間だった。イェソンの部屋から何か重い物が落ちる音が響いてギョッとする。まさか…嫌な予感に足早に部屋へと向かったキュヒョンは、部屋の中へと入ると同時に驚きに足を止めてしまった。ベットの脇、その床へとペタリと座り込んだイェソンが俯いたまま肩を僅かに震えさせていたのだ。

「……ヒョン…?」

何事かと声を掛けて近寄ると、ユルユルと上げられた瞳から大粒の涙がこぼれ落ちていた。

「…ヒョン………」

自分を見上げる瞳が何だか幼い。ポロポロと零れる涙を止められないのだろう、イェソンは泣きながら無言で両腕をキュヒョンへと差し出した。
まただ。見た事の無い甘え方…そんなモノを見せられたら、振り払える訳無いじゃないか。
イェソンの目前で組んでやると、スルリと首筋に熱い腕が絡められる。
その体を抱き締めてやって、背中を優しく叩いてやった。


「……淋しかったんですか?」


肩口に顔を埋めたままコクリと頷く行動にキュヒョンは思わず口元が緩んでしまった。こんなに素直なイェソンは初めて見る。
頭を撫でてやると泣き腫らした顔を上げて、自分ををジッと見上げてくるから。その瞳に軽く唇を寄せた。

「ほら…もう淋しくないでしょう?」

涙に濡れた頬にもキスを落として黒い瞳を覗き込んでやれば、コトリと首を傾げてきた。その行動が可愛くて、鼻の頭にもキスを落とす。擽ったそうに身動ぐ体を引き寄せて、額にもキスを落とした。

「ベットから落ちたんですか?」

優しく問えば、黒い瞳からまた雫がポロリと零れた。


「…だって……キュヒョナが、居ないから…」


目が覚めた時、居る筈のキュヒョンの姿が無かった。何処に行ったのか判らなくて、探しに行こうとしたのだ。だけど熱で体に力が入らずベットから落ちてしまった。

「いつも…夢、見るんだ……」

ボンヤリとした瞳が涙を零したままキュヒョンを見つめる。


「暗くて…真っ暗で……誰もいない……みんな、俺から離れていくんだ…」


ポロポロと零れる涙が何だか綺麗だと思った。背中に回った手がキュヒョンのシャツを握り締めている。逃げないようにと、自分から離れて行かない様にと震える手で握ってくるから、その体を強く抱き締めた。

「僕は………離れて行きませんよ……」

昔から睡眠が浅いイェソン。それはきっと今言った夢が原因の1つだったのだろうかと気付く。
暗闇の中で一人取り残される。その夢を見る事が嫌であまり眠れないのだろう。震える体を抱き締めて、キュヒョンはイェソンの落ち着ける低い、だけど優しい声で囁く。


「貴方を一人にはさせませんから…だから、不安に思う事は無いんです。」


シャクリ上げる程泣いて苦しいだろうに。それでも離れないでとしがみついてくる背中を優しく撫でる。何度も何度も撫でてやって、それにやっと落ち着いたのだろう。イェソンがソロリと顔を上げた。


「……ホントに…傍にいる?」


コトリと首を傾げてくるから、それに微笑んでやって。


「貴方が嫌がっても、離れてあげません。」


噛み締めて余計に赤みを増した唇へとキスを落としてやると、イェソンは嬉しそうに。そう、メンバーさえ見た事の無い幸せそうな表情で微笑んできて。そのままキュヒョンの頬へとお返しとばかりに唇を寄せた。チュッと音を立てて離れたイェソンの目元は涙では無い赤みが差している。


「今日は……一緒に寝てくれる?」


キョトリと見上げてきた瞳に心臓が大きく跳ね上がった。
抱いている時でさえこんな甘えた言葉などイェソンは言わない。
おねだりしてくる瞳が酷く幼くて、なのに醸し出す雰囲気は妖艶な事にキュヒョンは一瞬息を飲んだ。

(……だから、卑怯だってソレ……)

好きだとか、そんな甘い関係でも無い自分達。なのにこうやって自分へと甘えてくる姿を見せられたら自惚れそうになる。
もうイェソンを兄としては見れなくなるじゃないか。
既に自分の中で大きくなっているイェソンの存在。それに気付かないフリはもう出来ない。そんな自分に苦笑しつつ、こちらを見つめてくる瞳にまたキスをして。


「貴方が望むなら……」


その熱い体を抱え上げた。







※もう自分の気持ちに正直になるしかないなぁと腹を括っちゃうんですねギュは。

兄さんの睡眠が浅い理由がこんなだったら凄く悶えるとか思って書きましたが…ぼっちが嫌いって甘える兄さんどっかに落ちてませんか←



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