続きです。
大分甘度が増し始めた二人。前話をきっかけに接近率が高くなってますねハイ。

虫歯になる程では無い甘さだから読んでやるよって方はどぞっ!!






【Sudden onset6】



リビングの扉からそっと覗き込む瞳にキュヒョンはヤレヤレと息を吐いた。


「何してるんですか…」

半分呆れ口調で言ってしまうのは仕方無いと思って欲しい。
数日前にキュヒョンはイェソンを抱いた。その時はとても甘い雰囲気で互いを熱く求めた。だが次の日、キュヒョンのベットで目覚めたイェソンは酷く狼狽えてしまったのだ。酔った勢いとはいえあんな事をした自分自身にショックを受けたらしい。それからというもの、イェソンは何かと物陰からキュヒョンを伺っていた。

「コッチに来たらどうです?」

言われてビクリと揺れた肩にまた息が漏れる。
今日は自分とイェソンだけがオフという何ともタイミングの悪い組み合わせとなっていた。

「別に襲ったりしませんから。」

興味の無いフリをして、イェソンへと手招きしてみる。
それにコトリと首を傾げて、恐る恐るではあるが近付いてくる相手に油断は禁物なんだけどなぁと苦笑した。
直ぐに信じてしまうのもどうかと思う。隣にオズオズと座った腰を態と引き寄せて、キュヒョンはその驚いた瞳を覗き込んだ。

(…癖になるかも…)

細い腰は抱き心地がいい。引き寄せて抱き上げれば、自分を跨いで座る相手にまた苦笑が漏れる。

「そんなに油断してると、また抱かれちゃいますよ?」

僕に。そう言ってやれば、アーだのウーだのと唸り声を上げながら。それでも自分の上から退かない体をそっと抱き締めた。
慌てて逃れようと藻掻く体を今度は強く抱き締めて、イェソンの肩に顔を埋めた。

「何もしないから…少しこのまま……」

落ち着いた低い声にイェソンの体が動きを止める。
そのまま肩口に置かれた頭をそっと抱き締められて、優しく撫でられた。

「……お前、疲れてたのか?」

労わるような声音に苦笑する。そう、確かに自分は疲れていた。ラジオにバラエティ番組。持っている番組の仕事もこなしながら、でも歌を疎かには出来ない。だからだろうか、久しぶりのオフで兄と二人きり…
酷く甘えたくなってしまったのだ。
ヨシヨシと子供をあやすような手付きに笑みが零れた。

「疲れてるって言ったら…甘やかしてくれますか?」

モゴモゴと動く肩口が擽ったかったのか、イェソンは笑いながらその背中を優しく摩る。

「お前が甘やかして欲しいんだったら…」

甘やかしてやるけど?

独特な低い、少し掠れた声が妙に落ち着く。
前からこの声が好きだと思っていたけれど、あの日。あのイェソンを抱いた夜から余計に好きになった。もっとその声が聞きたい。自分だけに向けられる優しい響きが欲しくて、キュヒョンは肩口から顔を上げた。


「じゃあ…僕の良いところ、言ってみて下さい。」


突然言われて面食らったイェソンに笑った。甘えて来るだろうと思っていたのに全く違う事を言われて、イェソンは少し悩んだ後で目の前の少し色素の薄い瞳を見つめた。

「お前のこの目の色…綺麗だと思う。」

男にしては小さな手が近付いてきて、そっと指で目元を撫でられる。

「………後は?」

優しく撫でられる感触に軋んだ心が緩んでいく。

「…今の髪の色、一番似合う。」

栗色に染めて緩くかけたパーマ。その髪を撫でる指は酷く優しい。

「………次は?」

「ステージで歌うお前は、好きだ。」

好きと言われてドキリとした。黒く切れ長な瞳が嘘では無いと伝えてくる。どんな風に好きなのかを聞けば、表現するのが難しいのだろう。
ムゥと尖った唇がやけに可愛く思えた。

「…低いけど、優しい響きと…甘く歌う声が……好き。」

仄かに目元が色付いている事に本人は気付いているのだろうか?
しかも微妙に恥ずかしい事を言ってくれるその唇がまた欲しいとキュヒョンは思った。

「後は、無いんですか?」

イェソンがしたように目元を優しく撫でてやれば、キュッと瞳が細められる。その表情が色気を放っているなんて、きっと本人は知らない。
何か言おうとしてそのまま言い淀むイェソンに首を傾げて、早くと促せばまた唇を尖らせた。

「…お前の……唇が……」

「…………唇が?」

その先が気になる。きっと彼は今自分が一番欲しいだろう言葉を言おうとしているから。互いの息が掛かる距離まで近付いて、黒い瞳を覗き込んだ。

「唇が、何ですか?」

「………くちびる、が……好き…」

言葉を聞くと同時に目の前の赤い唇を塞いだ。
一瞬引きかけた体は、でも今日は甘やかすと言ってしまったから。逃げずにオズオズとキュヒョンの首筋へと腕を絡める。
甘い吐息に混ざって湿った音が室内を満たし、優しく絡んでくるキュヒョンの舌にイェソンも応えて互いの唇を甘く貪る。

「…っ…ァ……コレ、も…ンッ……すき…」

キスの合間に言われた言葉にキュヒョンの腰が疼く。キスが好きだと、自分とのキスが好きだと言われて。喜ばない男なんて居るだろうか?

「…それ、卑怯ですよ……」

甘く下唇を吸い上げて離れてやれば、赤い舌がチラリと見え隠れした。
それがどれだけ自分を誘っているように見えるかなんて、考えてもいないだろう。

(天然でエロい身体とか……)

どうしてやろうか?そんな風に考えていたら、乱した息のまま潤んだ瞳が恨めしそうに見つめてきた。

「…襲わないって、言った……」

吸い上げた唇が赤みを増して、唾液で照っている。
その唇を指で拭ってやりながら、態と優しく微笑んだ。

「でも、甘やかしてくれるって…言いましたよ?」

イェソンの苦手な優しい笑み。これに弱い事位、この数日で判っていた。
自惚れではなく、きっとこの笑みもイェソンは好きだ。
案の定イェソンは潤んだ瞳のまま諦めの溜息を吐く。

「……そういうお前も…嫌いじゃないからヤなんだ…」

呟かれた言葉に嬉しそうに微笑むキュヒョンにまた溜息が漏れる。
甘えてくる中にも強引さがあるキュヒョンが苦手だった。だってそれを断れないから。
どんな事をされても、許してしまえる位にはそんなキュヒョンを自分は嫌いじゃないと思っている。


「嫌いじゃないなら…このまま進めちゃいますよ?」


強引な言葉の中に拒絶してもイイと優しさを残される。
相手を尊重しようとするその気持ちが、拒絶出来ない一番の要因かもしれない。そう思いながら、イェソンは目の前の唇へと軽くキスを落とした。
返事の代わりに降りてきた唇にキュヒョンは満足そうに微笑んで、そのままソファへと細い身体を押し倒す。

「今日は少し、離せないかもしれません…」

前置きは欠かさない。だって今日は自分だけを見つめてくれる瞳が欲しいから。自分を呼ぶ掠れた声を長く聞いていたいから。
だから離せないかもしれない。
色素の薄い瞳に込められた熱を受けて、イェソンは困ったように微笑んだ。


「まだ慣れてないんだから……優しくしてくれ…」


観念したように言われて、その瞳へと唇を落とす。
そんな事を言われたら、優しくする自身が無くなりそうだ。
無けなしの理性を総動員させて、キュヒョンは細い腰を撫で上げる。



「努力はしてみます…」



そのまま自分の腰を引き寄せてくる腕に、イェソンは苦笑のままそっと瞳を閉じた。








※甘えん坊ギュ!兄さんの甘やかし度マズイだろー
たまにはこんな押し方をするギュもイイかと。



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