続きです。
既に長文と化してますが、中身も急展開しております。
人が人を気になり出すと急発進の如くって事ですね(は?
因みに次は限定になる…かも?

そんな急展開になってる二人をオーイなんてツッコミながらも読んでやるって方はどぞ!!






【Sudden onset3】



「……そんな目で見ても駄目なもんは駄目です。」

自分を見つめる黒い瞳にチクリと釘を差した。




風呂に入った後、スエットを履いて上半身裸のままリビングへと出てきたキュヒョンにイェソンは目を輝かせた。
そのままトテトテと近付いてきた体を言葉だけで制して。
その言葉にイェソンはプゥと頬を膨らますがソレを見て見ぬフリをする。
そうすると直ぐに諦めてくれる辺り、イトゥクのお説教が効いているのかもしれない。

「ほら。明日も早いんですから風呂、入ってきて下さい。」

今日はリョウクとソンミンはラジオの収録で帰宅が遅い。11階には今は二人だけ、となるとイェソンの面倒を見るのは自ずとキュヒョンの役目となる。イェソンは兎に角何もしない。というか出来ないに等しいのだが、ちゃんと見ていないと食事もしない時がある。
それだけ何事にも執着しない為、キュヒョンはイェソンの面倒をリョウクから頼まれていた。

「明日入るー。」

「駄目ですよ。寒くなり始めたんですから…」

大分冷え込む様になってきた朝方。イェソンは本人が思っている程体が丈夫ではない。寒かったりすると直ぐに体調を崩してしまうのだ。そんなイェソンを朝風呂に入れるなど以ての外。リョウクに怒られては堪らないとばかりにキュヒョンはイェソンを浴室へと急き立てた。

(………ったく…)

ワインを空けながらリビングのソファへと身を沈める。
なんだって自分がこんな風に兄の面倒を見なくてはならないのか。自分に対して頓着しないイェソンに溜息が出る。身なりだけシッカリしていても他が駄目なのだから始末が悪い。今日も仕事で疲れているから本当は寝たいのだ。なのにイェソンが寝るまでは見張っていないと何をするか判らない。
だから仕方なくワインを開けて飲んでいるのだけれど。

(にしても……)

何だってあんなに自分の傷跡に執着するのか。前から裸で過ごしていたのに今になって行動を起こすのもおかしなものだ。と言ってもイェソン自体が謎の多い人物なだけに、いくら考えても答えなど出る筈もないのだが。
今日だって傷跡を見るや否や飛びつかん勢いで近付いてきた。
そんなに触り心地がいいのだろうか?

キュヒョンは既にTシャツを着てしまったその上から自分の傷跡へと指を滑らせてみる。
見慣れたとはいえ、こうやって改めて触ると大きく伸びた傷跡のデカさに溜息が漏れる。コレを好きだと言うイェソンの気がしれない。イトゥク等は不謹慎でしょ?なんて言っていた位だ。自分はソコまでは思わないし、痛々しいという目を向けられるよりは遥かにマシではあるものの、何で…堂々巡りになりそうな思考に頭を振った時、イェソンのノンビリとした声がリビングへと響いた。

「気持ち良かったぁ。」

フゥと息を吐く声は確かに気持ち良さそうだ。やっと上がったかと振り向いたキュヒョンは、そのまま固まってしまった。

「?どーかしたか?」

キョトンとキュヒョンを見つめるイェソンは普段と変わらずポヤヤンとしている。が、その姿。それがキュヒョンを固まらせていた。
下は灰色のハーフパンツ、頭にはタオルを掛けていてワシャワシャと拭いている。が、上半身には何も着ていなかった。そう、普段のキュヒョンと同じ上半身裸という姿でリビングへと立っていたのだ。

「……何で服…着てないんですか…?」

何とか言葉を口にするものの、目はイェソンの肌に釘付けだった。
日焼けをしていない白い肌。それは触れば吸い付くんじゃないかと思う程見た目でも判る滑らかさで、また均等に筋肉は付いているが、普段から食事を疎かにしているせいか男性とは思えない華奢な腰が妙に目につく。
その上風呂から上がったばかりだからなのか、妙な色気を全身から発していた。

「お前が急かすから上着忘れただけだけど?」

キュヒョンの目線を気にするでもなく、テーブルに置いてあったワインに目を留めて。俺も飲むーなんて暢気に声を出して。
キュヒョンの手からグラスを奪ってワインを喉へと流し込んだ。
その仰反る白い喉がまたキュヒョンの目を釘付けにする。コクリコクリと音を鳴らして上下する喉をキュヒョンは凝視した。
冷たくて美味しいのか、グラスにタップリと入っていたワインは全てイェソンの喉へと通っていく。

「…そんな風に飲んだら…酔いますよ…」

出た言葉は何処か気のないもので。それにイェソンはコトリと首を傾げてからフッと微笑んだ。

「俺、結構ワイン飲むけど?」

自分はコレ位では酔わない、そう言いたいのだろう。
そう言って微笑むイェソンは見た事の無い艶を帯びた表情をしていた。
それに思わず喉が鳴ってハッとする。
今、自分は何を見ていた?キュヒョンは目の前の男を改めて凝視した。
そしてふとファンや兄達が偶にイェソンへと口にする、可愛いや色気があるという言葉を思い出す。

その度に何処が?なんて思っていたのに、今目の前に居る兄は確かに色気があった。というか、あり過ぎる。
普段から肌を余り見せないイェソンの体を見てしまったせいなのか。
それとも既に自分が酔っているのか…
目の前に置いたボトルに目をやればまだ半分程しか飲んではいなかった。
という事は酔っていない、筈だ。


「さっきからどした?」


黙り込んだままのキュヒョンをおかしいと思ったのだろう。イェソンはヒョコヒョコと近付いてキュヒョンの目前で膝を屈むと、そのまま額と額をピタリと合わせた。そんな突飛な行動にまたキュヒョンは驚いて目を見開く。
目の前には黒い切れ長な瞳。こんなに至近距離でこの瞳を見た事などあっただろうか?

「んー…熱は無さそうだけど……」

そう言って離れていく瞳へとそれまで黙っていたキュヒョンが口を開いた。


「…そうだヒョン…傷跡…触りますか?」


そのままイェソンの手首を掴み力任せに引っ張った。
油断していたイェソンの体は最も簡単にキュヒョンへと落ちてきて、ソファへと座るキュヒョンを跨ぐ形で座らされてしまった事にイェソンは僅かに目を見張った。

「え…急に何…」

「ああ、その前にワインを飲みましょうか。」

戸惑う姿がなんだか面白い。普段からイェソンの行動に思考を掻き乱される立場としては、こうやって戸惑っている姿が拝めるのは気分がいい。
飄々としていて何を考えているのか判らない相手を自分の思考へと引きずり込んだ気がして、キュヒョンは笑みを浮かべた。

「ほら、ワイン…酔わないんでしょう?」

未だ戸惑いに動けないイェソンの手首を掴んだまま、グラスへと並々に注いだ赤ワインを目の前でチラつかせる。返事をしない相手に僅かに首を傾げて見せて、ポカリと開いていた唇へとグラスを触れさせた。
そのまま傾ければ零れる事を阻止しようと慌ててイェソンはワインを喉へと流し込む。

「コレ結構高かったんですよね…」

上下する喉を見つめながらクスリと笑って。苦しいのか眉間に寄せられた皺が余計に色気を醸し出しているのは何故だろう?
三分の一を残した辺りでやっと離されたグラス。息が出来ていなかったイェソンは途端にハァハァと息を吸い込んで、息苦しさで潤んでしまった瞳をキュヒョンへと向けた。

「っ何、すんだよ……」

恨めしそうに見られても潤んだ瞳に迫力など無い。頬を膨らませて膝から降りようとする体に、手首を離してその細い腰へと腕を回した。
そのまま自分へと一層近くに引き寄せて、キュヒョンは残ったワインを飲み干す。

「たまにはこんな飲み方も、悪くないでしょう?」

自分で何を言ってるんだと思う。だが、今目の前の体を手放すという事に名残惜しさが先立ってしまったのだ。咄嗟に腕を回した細い腰がより一層その気持ちを増長させた。空になったグラスへとまた並々とワインを注いで、イェソンの唇へとグラスを触れさせる。それにイェソンは難色を示して顔を背けた。

「もう要らないから…離せ。」

声の響きが弱々しいのは、少し酔いが回り始めているのだろう。一気に二度もワインを飲み干したのだ。元々酒に強い方では無いイェソンがアルコール度の高いワインで酔わない訳がない。

「ああ、もう酔ったんですか…」

キュヒョンは態とらしく鼻で笑ってみせた。だってこのままでは自分の腕からすり抜けて行ってしまいそうだったから。だから態と挑発するような言い方をすれば、案の定イェソンはムッとした表情を見せた。


「酔ってなんか、ない。」


そのままキュヒョンからグラスを取り上げて、三杯目となるワインを一気に飲み干した。






※兄さんの色気に早くもヤラれ気味なギュの暴走度(汗)何でこんなに展開が急なのかを過去の私に聞いてみたい。




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