続きです。
やっとキュヒョンさん、帰還です。(笑)
ココから先は全く二人だけの世界的内容なんで、甘過ぎ勘弁!って方はUターンお願いします。

甘々大歓迎!!って方はどぞっ!!







【甘えん坊18】



「…………何でココに…」


呆然と呟いた言葉に答えたのは、静かな寝息だけ。




中国での三週間、ギュウギュウに詰め込まれたスケジュールを何とかこなしてやっと帰国した今日。もう深夜に近い時間だが、事務所側も悪いと思ったのか明日は久しぶりのオフを貰えた。喜んだメンバー達は韓国料理が食べたいと大騒ぎだ。何処に行こうかと言う中キュヒョンだけは宿舎に戻ると言った。その理由なんて容易に想像がついたリョウクは二つ返事でキュヒョンの申し出を了承した。

というのも一週間前、ヒチョルからの着信に嫌々出たキュヒョンは告げられた内容に驚いた表情を見せて。隣にいたリョウクは漏れ聞こえたヒチョルの声からイェソンが食事をしない事や、様子がおかしいという情報を得てそれはもう心配した。
そのままキュヒョンは1人部屋に行ってしまった為、後の内容は判らなかったが。
暫くして出てきたキュヒョンの顔は最近では見ない、とても幸せそうな表情をしていて。だから多分、二人の関係が良い方に転がっているんだろうと思っているのだが。あれから一週間。電話はその一回限りだったらしいが、その分会いたさが募っているのは手に取るように判る。だから直ぐに了承して、キュヒョンたけをタクシーへと乗せてリョウクはヒョンにヨロシク!そう手を振ったのだった。

宿舎に着いたキュヒョンはエレベーターが来る時間さえ惜しむようにボタンを連打した。到着したそれに駆け込んでまた連打。目指すは11階で自分の帰りを待っているだろう相手。
チンッと小気味よい音で開いた扉から飛び出して、部屋の鍵を開けた。

「ただいま帰りました…」

何となく冷静を装って玄関から声を掛けてみる。けれどリビングに通じる廊下は真っ暗で。タタタッと駆け寄って来て「おかえりなさい!」なんてキャラでも無いし、少しガックリしながら靴を脱いだ。
取り敢えず何処に居るのだろう?靴はあったからこの階に居る事は確かだが……そう考えながら重い荷物だけでも先に置こうと自分の部屋のドアを開けて。

「………何で…」

と冒頭に戻る訳だ。
キュヒョンは入口に立ったまま、暫く自分のベットを呆然と眺めた。
まぁ正しくはベットの上で眠る相手を、だが。
キュヒョンのベットの上。そこで眠っているのは先程まで探そうと思っていたキュヒョンの想い人イェソンその人で。
iPodで曲を聴いていたのだろう。イヤホンを耳につけたまま、俯せで寝てしまっている。

「………タンコマ?」

ふと床に目をやれば、イェソンのペット基愛亀のタンコマがノソリと歩いていた。そのまま床に散らばった雑誌やCD等に目をやってアレ?と思う。
この部屋を出る時、こんなにも散らかっていただろうかと。
しかもよくよく見てみれば、それは全てイェソンの持ち物だと判って。

「………この人は何をしてるんだ…」

呆れた。そんな表情で眠るイェソンに近付いて、ドキリとした。
とても気持ち良さそうに眠っている相手は実に可愛い。のだが、眠るイェソンの腕にはキュヒョンの枕が抱えられていた。
それもギュウっと音が出そうな位に抱き締めていて。その上に乗った顔が、癒されてますという表情をしているのだ。

その姿に何となく恥ずかしくなってキュヒョンは口元を手で覆った。
普段から愛用しているその枕は、きっと自分の匂いが染み付いている。その枕をこんなにも大事そうに抱き締められたら。
まるで自分の身代わりみたいで何とも恥ずかしい感覚に陥った。

「……あれ…」

そんな事を思いながら寝顔を見ていたら、気付くイェソンの異変。

「やっぱり…痩せてる………」

きっと食べられなくなってからあまり回復出来ていないのだろう。
三週間という短い間に頬が痩けてしまっていた。そのまま身体へと目を移せば、服に包まれていても判る肉の落ちよう。これは確かに長男2人が心配をする訳だ。

「元々痩せてるのに…何やってんですか、ホント………」

呟いて、その痩けてしまった頬にソッと触れる。

「……………ん…」

ピクリと動いた相手に起きるかな?なんて思った時、足元で何かが当たる感触を感じた。

「………何してんの…お前…」

キュヒョンの足元。ガシガシと当たってきたのは他でもない。イェソンの大事な大事なタンコマ。

「別にお前のご主人様苛めてる訳じゃないって…」

何となく言い訳をして甲羅を撫でてやる。
そんなキュヒョンに満足したのか何なのか、やっと突撃を止めたタンコマに一息ついて。イェソンへと目線を戻したキュヒョンは、自分をジッと見つめる瞳にぶつかった。


「………起きちゃいました?」

言って、彼の耳にイヤホンが入っていた事を思い出す。枕に押し付けていない左側のイヤホンだけを取ってやって。そこから聞こえてきたのは、自分の歌声……

「……僕の歌を聴いてたんですか…?」

どうしようもなく心臓が高鳴る。自分の部屋で、自分の枕を抱き締めた相手が。自分の歌を聴いている…それがどういう事か。


「………淋しかった…ですか………?」


探るようにイェソンの瞳を覗いて。近付いてきたキュヒョンの頬に、イェソンの手が伸びる。そのままソッと触れてきた指…少し体温の低いその手をキュヒョンの温かい手が包み込む。



「………ホンモノだ……」

「………当たり前です」


暫くその温かさを感じて、フッとイェソンの瞳が細められた。
そのまま横を向いたイェソンは、今度は無言で両手を差し出してきて。
抱っこ。そう言っているようだ。
その行動に笑みを零しながら、求められるままにイェソンの身体を抱き起こす。伸ばされていた腕がキュヒョンの首へと回り、力が込められる。


「………おかえり…キュヒョナ………」


「………ただいま…ヒョン」





「貴方…どれだけ食べて無いんです?」

抱き締めた身体が思いの外細い。最後に抱き締めた時よりも遥かに痩せたその身体に驚いた。

「……果物は…食べてる」

バツが悪そうに言って、キュヒョンの肩口へと顔を埋める。
そんな行動が可愛いなぁとか思うけれど、今はそんな事を言っている場合じゃないだろうと自分を叱咤した。
寝ていた理由を聞けば、最近やたらと眠いのだと言う。普段あまり寝ないこの人が、だ。そして自分に回された腕の力。酷く弱々しいソレから考えても、恐らく食事をしていない事によって体力が著しく減少している。
未だ少し眠そうな相手に、少し待ってて下さいと言い残しキュヒョンはキッチンへと立った。


「………何なんだこの中身…」

冷蔵庫を開けて呆然と声を上げる。ギュウギュウに詰められた中身。肉、魚から果物まで。ありとあらゆる食材が揃っている。
中には何故かお菓子まで混ざっていて。恐らく長男二人がありったけの物を放り入れたのだろう。

「……過保護すぎる…」

何度目かになる溜息をついて、キュヒョンは腕まくりをした。







「……美味しそうな匂い」

サイドテーブルへと置いた土鍋からは熱そうな湯気が立ち上っている。

「おじやです。胃に優しいですよ?」

フゥとベットへと腰を下ろして起きれますか?聞かれて困ったように笑うイェソンは相当に弱っているらしい。
少し考えて、起き上がらせたイェソンの背後へと回ったキュヒョンはそのままイェソンの身体を自分の体へと凭れかけさせた。

「僕をイス代わりに出来るのは貴方位ですからね?」

そう笑顔で言われて、悪いと思っていたイェソンは少し気持ちが楽になる。スプーンで掬ったおじやをキュヒョンが冷まし、イェソンの口へと運ぶ。
自分で食べれなくもなかったけれど、何となくその行動が嬉しくて。素直に口を開いた。

「ん………旨い…」

「そうですか?」

小さな口には少しデカかったらしいスプーン、半分残されたスプーンの上のおじやはそのままキュヒョンの口の中へと消える。
一人分と作ったけれど、恐らくイェソンは食べきれないだろう。元々小腹も空いていたしと、当たり前のようにモグモグしているキュヒョンを、少し低い位置のイェソンが見上げてきた。

「お前、料理出来たのな?」

悪戯な笑みを浮かべるから、次のおじやを冷ましていたキュヒョンは目の前の額にチュッと態と音を立ててキスを落とした。

「貴方以外に作る気は毛頭ありませんけどね。」

そう男の表情を見せて。思わずイェソンの顔が赤くなる。
それには見ないフリをして、ほら、食べないと。唇にスプーンをチョンッと当てれば開く口。
そんな事でさえ可愛いと思う自分はアウトかも。また残ったおじやを口に入れながら、イェソンを見つめた。


「もう食べれませんか?」

何度目かのアーンを首を振って断る。半分食べたか其処らだが、食べないよりはイイかと残りを食べようとして。横から伸びたイェソンの手がスプーンを奪っていく。

「俺も…する」

何を?と見つめていれば、スプーンで掬ったおじやを一生懸命フーフーと冷ましだして。食べさせ難かったのだろう。上半身だけをキュヒョンの方へと向けて、アーンとイェソン自身の口が開いた。
どうやら口を開けと言いたいらしい。
素直に口を開けてやると、スプーンが口の中へと入れられる。モグモグしているキュヒョンの口をジッと見つめてくる瞳。
ゴクンと飲み込んだのを確認して、またスプーンに乗せたおじやを冷まし始める。

(いや……ホント天然で煽り過ぎ………)

自分の肩口の服をギュッと掴んでいる手が異常に可愛い。
フーフーと小さな口で一生懸命冷めたおじやを冷ましている天然さ。
アーンと自分と同じタイミングで開く唇は犯罪級………

(ヒチョリヒョン…今日こそ絶えられない…かもです……)

そんな事をキュヒョンが思ってるだなんて知る由もないイェソンは、おじやが無くなるまでその作業を一生懸命続けた。



「はー…お腹いっぱい。」

満足そうにまたキュヒョンの背中に全体重を預けて。
少量のおじやでお腹一杯って…成人男性としてどーなんだろうなんて考えながら、その腕はちゃっかりイェソンの腰に回っている。


「あれ?そいえば皆は?」


満腹になったせいか、目のパッチリしたイェソンがキョロキョロと辺りを見回す。
この部屋に居たらコッチが驚くわ。なんて思いつつ、食事に行った事を告げて。そっかーなんて言いつつタンコマーなんてペットを呼んでいるイェソンに不意打ちのキスを仕掛けた。

「…っ……お前なぁ…」

キスをされた頬を押さえながら、チラリとコチラを見てくる。
その顔は何だか赤くて。さっきも何かの拍子に赤くなったイェソン。
何時もとは違うその反応に、やっぱり……と感じる。


「ヒョン……」

イェソンの顔を覗き込んめば、プイッとソッポを向く。

「イェソンヒョン…」

向いた方を覗けば、今度はまた反対を向くから。



「………ジョンウニヒョン………」



その顔が動かないように顎を押さえて。優しく呼んだ彼の名前。
ビクリと身体が揺れて、覗いてきたキュヒョンと目を合わせる。


「やっとコッチ見た………」

「…………何だよ…」

顎は捕らえたまま、赤い唇へと親指を滑らせる。


「……何で…僕の部屋にいたんです?」

「…………別に…」

目が泳ぎそうになって、それを咎めるようにまた顎を引く。


「じゃあ…何で僕の歌を聴いてたんですか?」

「…………き…聴きたかった…から…」


モゴモゴと言う口が嘘を紡ぐ。


「……僕に会えなくて…淋しかったんでしょう?」


自身過剰っ!言おうとするけれど、言葉の代わりに瞳が揺れた。


「僕の声が聞きたかったから…歌を聴いてたんですよね…?」


揺れた瞳が涙を溜め始めて。


「僕に……追い付いてくれて………」


ありがとう………


言われた瞬間、大粒の涙がイェソンの頬を伝った。
それは言葉よりも正直な返事。
静かに涙を流すイェソンを、優しい胸が抱き止める。



「自覚したのは…何時ですか?」

「………ちょっと…前…」

胸元で喋られるから擽ったい。うー…と泣いている背中を優しく撫でてやって。ちょっと前ってのは判りにくいなぁとキュヒョンは苦笑する。
まぁ兄達の話しから察するに、自分が居なくなってからかなぁとは思ってみるけれど。



「……お前が……」

「……え?」

考えを巡らせていたキュヒョンは、また胸元の擽ったさを感じた。

「お前が行って……一週間して……ご、飯…食べれなく、なった…」

嗚咽を混じらせて、それでも一生懸命喋ろうとする背中をまた撫でて。
それは自分が気長に待とうと決めた一週間後の出来事。まさかそんなに早くに気持ちが繋がっていたとは思いもしなかった。


「………気付けなくて…すみませんでした」


ご飯も喉を通らなくなるなんて。そこまで想われていた事に、信じられない気持ちの方が大きい。


「おま…が……連絡…くれな……て、」

「………ええ…」

「………苦し…かった」


その言葉と一緒に、イェソンは顔を上げる。
泣き腫らした目元は赤くなっていて、ソッと涙を拭ってやった。

「………追い付いた…から…」

「はい………」

「………キュヒョナが………好き…」


真っ直ぐ自分に向けられた言葉。
ハッキリと告げられたソレが、キュヒョンの胸を熱くする。
きっと泣きそうになっているだろう自分の顔を、小さな手が包み込む。


「好きだから……離すな……」


コツリと額が合わせられる。
互いの息が掛かる距離に、鼓動が早くなる。


「言われなくても、離してあげません…」

覚悟して下さい?



そんな言葉にお互いが笑って。
どちらからともなく、唇が重なる。


今までで一番甘いその味に、心が満たされた。





※長らく待たされたギュとやっと告白した兄さん!
甘過ぎて編集しながら大丈夫かコレ?とか思いましたよエエ。
しかし兄さんがまた甘えたに……(激汗)

次はちょーっとえっちい感じなんで限定にさせて頂きます。







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