METライブビューイング2023-24 第9作「蝶々夫人」を観てきました音譜

 

この作品はイタリアのジャコモ・プッチーニ作曲によるイタリアオペラで、日本(明治時代の長崎)を舞台とした、日本でも最も有名なオペラ作品の一つです。

 

今年がプッチーニ没後100年の記念の年ということもあり、数々のプッチーニ作品が世界の劇場で上演されている中、「ラ・ボエーム」「トスカ」「トゥーランドット」と並んでこの作品は長年世界中で愛され上演され続けてきました。

 

 

オペラを全く知らない人でもアリア「ある晴れた日に」は聴き覚えがあることでしょう♫

 

没落藩士の令嬢でその後芸者となった15歳の蝶々さんが、アメリカ海軍士官ピンカートンと結婚しますが、この結婚はピンカートンにとってはいつでも契約破棄できる一時の関係に過ぎませんでした。

しかし純真無垢な蝶々さんは真実の愛と信じ、アメリカに帰国して音信不通となった後もピンカートンを一途に待ち続けます。

そして3年後、やっと戻ってきた彼にはアメリカ人妻がいることを知り、絶望した蝶々さんは幼い我が子を後に残して自害するという悲劇的な物語です。

 

 

今回ヒロインの蝶々さんを演じたアスミック・グリゴリアンは、近年世界中の劇場での活躍が目ざましいリトアニア出身のソプラノ歌手で、今季がMETデビューということですが、期待通りの素晴らしさでした!

 

声量や表現力など高度なテクニックが要求されるこの難役を、豊かで美しい声と役に憑依したようなきめ細やかな演技で観客を沸かせていました。

特にクライマックスシーンでの熱唱・熱演は圧巻で、涙があふれましたぐすん

今後も様々な役での活躍が期待されます。

 

 

オペラの世界で最も嫌われ者の悪役ピンカートンを演じたのは、前作「つばめ」に続いて登場のジョナサン・テテルマンです。この役では独立したアリアもなく、美声を発揮する場面は少なかったものの、自然な演技でピンカートンの心の動きを巧みに表現していました。

 

 

イギリス人演出家ミンゲラによるこの演出版は以前にも観ていましたが、着物をはじめとする衣装のデザインがかなり変わっていたり、蝶々さんの子ども役を浄瑠璃人形が演じたり、突然ちょんまげ姿の男性が登場したりと、日本人観客の目から見ると不自然に感じることもありましたが、舞台の華やかさや美しさ、インパクトの強さを狙った演出は効果を上げていると感じました。人形の表情や動きもかなり巧みに表現されていて凄いと思いました。

 

音楽においても異国情緒を出すために、プッチーニは、曲のいたるところに日本の旋律を取り入れたとのことで、突然聞き覚えのある旋律が顔を出すのは、このオペラを鑑賞する上での楽しみの一つといえるでしょう。

 

ストーリーは痛ましい悲劇ですが、美しい音楽と、最高の歌手による名演を大画面で味わいながら、日本文化の素晴らしさに思いをはせる機会にもなると思います。ぜひ映画館に足を運んでみてはいかがでしょうかニコ

 

 

(写真は全てMETライブビューイングのHPより拝借いたしました)