ローズウッドです音譜

 

NPO法人ブーゲンビリア主催のセミナーに参加してきました。

 

乳がんの個別化医療

より効果的に より副作用を少なく

~患者中心の医療の普及やQOLの向上を目指して~

 

 

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第一部 基調講演

 

中村 清吾 医師

※本年度のKSHS全国大会及びジャパンキャンサーフォーラムでの講演内容とほぼ同様。

 

【歴史】

・ハルステッド<1900年初頭>

乳房切除

 

・フィッシャー<1980年代~顕微鏡の時代>

乳房温存療法

 

・分子遺伝的アプローチ<2000年以降>

非手術の可能性

 

◆1983年 タモキシフェン登場

・再発リスクが下がる。

 

◆ハーセプチンの登場<HER2陽性の人>

・パージェタ+ハーセプチン併用により生存期間が3年で16%改善された。

・ホルモン陽性の人と同等の予後の良い方に入ってきている。

 

◆オートファジー<自食作用>の登場

・オートファジーとは細胞内の一部を分解してリサイクルする作用のこと。

⇒T-DM1という薬<カドサイラ>

 

【次世代シークエンサー】

・演算スピードがあがる。

・一度に多くのDNAの塩基配列を読める様になった。

 

【その他】

CDK4/6阻害薬<パルボシクリブ>

がん細胞増殖するのを抑制する効果がある。

 

・免疫チェックポイント阻害薬<オプジーボ>

がん細胞を攻撃する免疫機能を高める薬。

※トリプルネガティブタイプにキイトルーダ⇒臨床段階。

 

・PARP阻害薬<オラパリブ>

遺伝性乳がんや卵巣がんの原因であるBRCA1/2遺伝子の機能不全によりがん化した細胞に対して効くのでは?と開発が進められている分子標的薬。

※先ずはBRCA遺伝子変異陽性卵巣癌が保険適用へ。

 

ワトソンやニューラルネットワーク等の人工知能を活用する時代へと変わってきた。

 

しかし…

「ロボットは命令で動く」

「人は共感で動く」

 

ということを忘れてはならない。

 

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第二部 講演 

高野 利実 医師

 

伝えたいこと。

 

◆腫瘍内科を日本中に広めたい。

 

◆世界をリードする臨床研究を行う。

<日本は臨床研究が遅れている。>

 

◆HBMを実践する。

 <HBMとは高野先生が作った言葉で「人間に基づく医療」という意味。>

 

【ザンクトガレン国際会議で語られたこと】

早期乳がん治療について、これまではひたすらエスカレーション<積極的に治療拡大>

これからはデスカレーション<治療の縮小傾向>となっていくだろう。

 

大事なのはひとりひとりに合った個別化医療ということ。

 

【必要な治療を見極める】

・サブタイプ別の治療法選択。

・効果予測に基づく個別化。

・臨床試験とは新治療の「安全性」と「有効性」を調べること。

・臨床試験の結果がエビデンス。

 その最先端が「標準治療」と呼ばれるものである。

 

新治療開発を企業主導ではなく、今後は医師主導の治験で!

 

プレシジョンメディシン

・医療は確実に進歩している。

・新薬も次々と開発されている。

・TVでは「夢の治療法」として特集された。

 

今の恩恵を受けている実感がないのでは?

今の恩恵に感謝できていないのでは?

現実よりも期待の方が上回っているのではないか?

⇒もっと良い薬があるはず!

・アメリカだったら…。

・10年後だったら…。

 

しかしそれはみんなの心持ち次第だと思う。

 

治療は人生の全てではなく一部である。

 「治療の目標」は「人生の目標」の中にある⇒「生き方」を考えることが大切である。

 

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山内 照夫 医師

 

腫瘍内科医として…

 

「再発乳がん」の人の全身治療において、患者と医療現場にギャップ<ジレンマ>がある。

 

あなただけのSTORYを尊重したい。

 

【治療のゴール】

・延命

・症状の緩和

・QOLの維持、向上

 

より長く、より心地よく!

<がんを抱えながら…治療を受けながら…>

 

【敵を知る】

・治療選択

・再発の場所

・症状

・治療標的の有無

 

【再発転移の治療法は?】

◆局所療法

・外科治療<手術>

・放射線治療

 

◆全身療法

・ホルモン療法

・化学療法<抗がん剤>

※化学療法の奏効率<治療効果の程度を示したもの>は30-50%。

 

【化学療法】

・一次化学療法

単発療法と併用療法<例)パクリタキセル+ベバシズマブ>がある。

・二次化学療法

一次化学療法での未使用薬剤を使用。

 

大切なことは…

どう生きたいか?

負担が少なくて大きな効果。

何を大事に生きますか?⇒それが大事。

「患者を知る」⇒よく患者を観察する。

あまり頑張り過ぎない⇒ケモホリデーも必要ではないか?

 

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奥山 裕美 薬剤師

 

【問題点】

・ホルモン療法を継続服用している人より、途中で止めた人の方が副作用・負担を強く感じている。

・薬物治療開始時の説明不足。

・サポート体制が少ない。

・副作用は医師から過小評価されがち。

 

【結語】

・家庭、職場の疾患に対する理解が必要。

・副作用に関する医療者の理解が必要。

 

【今後の展望】

PC、タブレット、スマホなどに可視化ツールを入れて副作用の状況を客観的に知ることの手助けをし、医療者と連携しながら治療を続けている為のサポートを目指す。

 

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NPO法人ブーゲンビリア代表 内田 絵子氏

 

患者の視点を尊重する時代になってきたと共に、患者の自己責任も問われている。

 

【患者主体の医療とは?】

①正しい情報を得る。

②エビデンスがないのに「高額であれば効く」という信仰から解放される。

③「患者はチーム医療のひとりである」という自覚を持つ。

 

【患者が抱えている悩み】

医師に対して近寄り難く、質問しそびれる。

<本当はもっと説明を聞きたい。>

⇒医師と患者のコミュニケーション問題が大きい。

 

薬の副作用に対して医療者の過小評価は副作用対処の遅れ、それが時には重症化して治療中断に至ることもあり、QOL低下に繋がりかねない。

 

患者の幸福・満足感を追及することが医療の本質である。

 

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第三部 パネルディスカッション

 

中村医師:N  山内医師:Y 高野医師:T  奥山薬剤師:O  

杉山:S  玉置僧侶:TA  代表・内田:U ※敬称略

※一部参加者変更。

 

個別化医療とは?

 

N:薬をより効果的に副作用は少なく。

 

T:エビデンスに基づく個別化医療。その人なりの幸せを目指す。ひとりひとりどう生きたいのか?の価値観を大切にする。

 

Y:人としてバッググランドが違うことを医療者として認識することが大切である。

 

O:副作用は個人差が大きい。これだけ薬を使っているのだから、その副作用を防ぐ薬を更に飲むことに抵抗を感じている患者が多い。

 

Y:例えば肺がんの場合、DNAレベルで異常がないか?を調べ、遺伝子変異を確認し適応があればイレッサなども使用できる。

この様に治療薬選択の幅は広がったが、効くか効かないかは判らない。

効いていても効かなくなる場合もある。

そしてまた次の薬が開発されていく。

コンパニオン診断とは医薬品の効果・副作用を投薬前に予測する為に行なわれる臨床検査のことで、個別化医療を推進する。

 

TA:「個別化医療」⇒「選択」ということが課せられる。

「迷い」「後悔」がくっついて来る。<それに伴う心の苦しみを背負うことになる>

それに引っ張られ過ぎると、本来得られる医療の恩恵を受けられない部分が出て来る。

 

オンコタイプDX検査について

 

S:遺伝子を使って情報を得ることで、化学療法を積み重ねなくても良い場合が判る。

再発スコア<低>⇒ホルモン療法+化学療法加えても効果が低い。

再発スコア<高>⇒ホルモン療法+化学療法加えると上乗せ効果あり。

しかし中間リスクだと白黒はっきりしない⇒ひとりで悩まず医療者と話し合う。

 

全ての人が受けた方が良い検査か?と言えばそれは×。

最初から化学療法は受けないと決めてる人。

化学療法は受けたくないけど受けるべき。

と考えている人には不要ではないか?

 

薬の副作用ついて

 

O:薬の承認、ハードルが高い。

薬剤師は医師と患者の間を繋ぐ役割を担う。

受付の人に「薬剤師と話したい」と申し出てみる。

疑問に思っていることに応えてくれる薬剤師を探してみる。

 

TA:生活のコントロール・症状のコントロールについて、1日5分で良いから外に向かっているアンテナを自分に向けて自分と静かに向き合うことが大切である。

 

最後に…

 

Y:遺伝子検査をしたからと言って自分に最適な薬が見つかるとは限らないことを知る。

 

N:乳がん学会のホームページを来年1月から少しずつリニューアルして、患者がタイムリーに最新の情報を得られる患者向けページを増やす予定である。

 

T:個別化医療を理解するのは難しい。

完璧な医療というものはない!

個別化医療は多様な医療であり、ひと言で説明できるものではない。

 

U:道具はたくさん提示されるが、ひとりひとりが主体的にそれぞれの価値観で選択して行くことになる。

判らなくても繰り返して学ぶことが患者にも必要である⇒応分の責任を持つ。

「医療は不確実性なもの」であることを自覚する。


【所感】

内田代表が「個別化医療の話を聞いて判りましたか?」と会場参加者に問うと、大半の人が判らない方に手を挙げました。

<私もそうです。>

「判らないことが判った」という感じ。

 

治りたいという気持ちは皆一緒。

でも再発・転移の場合や薬の副作用が強く現れた時、どの様な治療を受けて行くかはその人の価値観の問題やどう生きたいか?という個人の希望も複雑に絡んできます。

だから確かに「個別化医療」の方向に…と言ってもその分、重い自己責任で選択をしなければならないということですよね。

 

医師も患者も悩ましい。

 

ただセミナーに参加されてた医師は別として、果たしてどれだけの医師がひとりひとりの患者の価値観に耳を傾けて患者を知ろうとしてくれているのか?については甚だ疑問。

それはあまりに医師が疲弊していて、そういう余裕がないと感じるからです。

だから現実は厳しくて、患者自身がベストな選択をできる様に日頃から情報や知識を身につける努力が必要だと実感しました。

その努力をしていても選択に迷いは生じると思うので。

 

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今年最後のセミナー聴講となりました。

 

NPO法人ブーゲンビリア主催のこのセミナー、偶然に新聞欄で見かけて独りで初参加してから3回目。

 

「ホルモン薬の副作用」を取り上げてくれるセミナーはないので、毎年欠かさずに参加しています。

 

今年は「個別化医療」というテーマでしたが、聴けば聴くほど「個別化」という言葉の重みを感じました。

 

セミナー参加も回数を重ねると、テーマや参加医師が同じであれば語られることも自ずと重複してきます。

 

ただ同じ内容でも二度聴くと少しはすんなりと頭に入ってきたりするので、来年も無理のない程度に参加できれば、と思っていますスマイル

 

でも実際のところ、セミレポに書いているややこしいカタカナの薬剤名は殆ど頭に入っていません苦笑

 

「あれ、何だったっけ??

 

と後で自分のブログを読み返して

 

「なるほど!!

 

と復習したりしてエヘヘ

 

だから公けの場に書いてますが、自分の為の備忘録なんですよね。

書かなきゃ汚い文字のメモを後から見直すことは絶対ないし、せっかくの貴重講演ですからね、残しておきたい気持ちもあって。

<日本でも有数な各分野の医師のお話を聴けるのは恵まれていると思っているので>

 

それがちょっぴりでも同病のどなたかの参考になれば幸いですクローバー