ローズウッドです音譜

 

数ケ月ぶりにマンマチアーのセミナーに行ってきました。

 

講師は

 

浅野裕子先生(亀田総合病院 乳腺科部長 形成外科医 乳房再建担当)

 
{C17325D7-003B-40F0-9829-1237445F2BBC}

私は温存手術の為、現時点で再建はないのですが、形成外科医である浅野先生の考え方をお聴きしたくて参加しました。
 
それと摘出箇所の凹みが気になっているので、脂肪幹細胞移植についても聴ける良い機会でした。
 
 
【1.自分の乳がんを知る】
 
◆乳がんのステージ◆
・腫瘍の大きさ
・リンパ節転移を認めるかどうか?
・遠隔転移が認めるかどうか?
 
によってステージが決まる。
 
例)ステージⅠの場合
・外科手術⇒病理診断(術後1ケ月位かかる)
 
病理結果により
・放射線療法
・薬物療法
 内分泌療法(5~10年)
 化学療法
 分子標的薬
 
が決まる。
 
◆乳がん手術◆
・6割温存手術
・3割再建手術
※東京では温存率が下がって半々くらい⇒再建については地方格差がある。
 
またインプラントの保険適用により、必要のない人も全摘しているのでは?という反省点も出てきている。
 
【2.自分に合った再建方法を見つける】
 
◆乳房再建の歴史◆
・1963年 非定型的乳房切除
・1964年 シリコンジェルインプラント登場
・1979年 腹直筋皮弁による再建
・1982年 エキスパンダー登場
・1992年 米国FDAがシリコンジェルインプラント利用禁止<発がん性の疑い>
・1999年 米国FDAが再びシリコンジェルインプラント承認
 
◆再建希望理由◆
・膨らみが欲しい
・温泉旅行したい
・服が合わない 等。
 
◆自家組織移植か?人工物か?◆
エキスパンダーを入れてる6ケ月の間で決めれば良い。
 
◆エキスパンダーとは?◆
肋骨と大胸筋の間を剥がして入れる。
・組織拡張器とも言う
・皮膚や皮膚組織を延ばす為のもの
・3種類の形状がある
・生理食塩水を数回に分けて入れ膨らませる
⇒反対側より少し大きくなった所でとどめる
 
◆同時再建◆⇒以下、一次二期再建を指す
ステージⅡ以下が条件である。
 
◆同時再建の除外基準◆
・炎症性乳がん
・術後、早期に放射線照射が必要な場合
・再発や残存を認める症例
 
◆同時再建のメリット◆
・術回数が1回少ない
・胸の喪失感が無い
 
◆同時再建のデメリット◆
・痛み
・エキスパンダー挿入に手術時間が長くなる
・感染症など合併症が起きた場合、エキスパンダーを取り出す必要がある
 
◆エキスパンダー挿入術後、注意する事◆
・出血、血腫
・人工物である為、感染に注意
・圧迫して固定
・術後の腕上げ制限⇒エキスパンダーの位置がずれない様に
 
◆エキスパンダー挿入後の合併症◆
・出血、血腫
・セローマ
・感染
・皮膚壊死
・エキスパンダーの露出、破損
・エキスパンダーの回転、位置移動
 
◆二次再建◆⇒以下、二次二期再建を指す
乳がん手術後1年程度(傷が柔らかくなるのに1年くらい掛かる為)経過して再発・転移がない患者に対して、エキスパンダーを入れる手術の事。
 
 ◆同時再建と二次再建どちらが綺麗?◆
変わらない。どちらとも言えない。
 
◆シリコンパックはどれくらい持つ?◆
漏れにくい様に改善されてきた。
何か問題が生じたら入れ替えは必要だが、10年経ったら入れ替えなければならないという事ではない。
その為にも10年間は専門医の診察を受ける必要がある。
 
◆インプラント挿入後に気をつける事◆
・腕を振り回す様な運動の制限
※1ケ月位からスポーツ可能
・バンドの圧迫(術後1ケ月は動いてしまう)
・マッサージは不要
・ワイヤーブラは避けた方が良い
※下着問題は専門医に聞いた方が良い
 
◆自家組織とインプラントの主な違い◆
<手術時間>
(自)5~7時間(イ)1時間
<入院期間>
(自)2週間(イ)3泊4日
※亀田総合病院の場合
<保険適用>
自家組織、インプラント共に適用
 
◆乳房インプラントによる再建後の整容性◆
インプラント+脂肪注入した方が患者満足度は上がる。
脂肪注入する事で人工物の形状を隠す。
 
◆乳房の脂肪注入移植術◆
腹部や大腿から吸引してきた脂肪を胸に注入する。
・1980年代から行われている
・傷跡が目立たない
・自由に形を作れる
・生着率は低い⇒思ったほど脂肪が残らない
 
◆脂肪幹細胞移植術◆
脂肪組織の中に含まれる脂肪幹細胞を脂肪に混ぜて、幹細胞の多い脂肪を注入することでより脂肪の生着率を高める。
<幹細胞とは将来脂肪になる子供の細胞の事>
 
全摘手術、温存手術の両方に対応できる。
<それぞれの術式に併用する場合もあり>
 
脂肪注入は保険適用外である⇒今後は保険適用になる可能性。
 
インプラント再建後の段差が目立つ場合も脂肪幹細胞を移植する事で、なだらかな乳房にする事が可能である。
 
温存手術後、放射線照射した皮膚は「砂漠」の様な状態である。
脂肪幹細胞を注入する事は「畑を耕して種を巻く」様な感じ。
膨らみはさほどでも柔らかくなった、と言う患者が多い。
 
◆温存、全摘どちらが綺麗な乳房になる?◆
どちらとも言えない。
胸の形・大きさ・症例で違う。
 
◆自分に合った再建術を見つけるには?◆
先ずは自分のしたい再建のイメージを持って受診してくれると良い。
 
例えば「(漠然と)普通な感じでお願いします」と言われるより、「反対側も豊胸してCカップにしてください」とはっきりした希望を示してくれた方がやり易い。
 
自分にとって大切な事に優先順位をつける。
人工物を使いたくないなら自家組織による再建、入院期間が短い方が良いならインプラントによる再建。
 
◆Dr.をがっかりさせるNG発言◆
・反対はいじらず左右同じにして欲しい。
・1.5㎝の傷でインプラントを入れて欲しい。
・絶対仕事は休めません。
・忙しいので通院できません。
<=経過観察には通えません>
・保険適用で安くなったから手術のついでに再建してもらえ、と家族に言われた。
⇒ついでに??痛みはありますよ!!
・今は簡単に再建できると友達が言ってた。
⇒簡単って??段階を経て綺麗に再建ができるのですよ!!
 
◆(浅野先生より)最後に…◆
人生に起こる全ての事に意味がある。
 
がんになるのは辛い。
しかしがんの治療が人生のメインではない。
 
☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚
 
【所感】
浅野先生のお話は明瞭で判り易く、何度も聴いた事がある様な内容でも形成外科医の視点から語られるので、またちょっと違ったニュアンスを感じました。
<そのニュアンスをあまりこのセミレポで伝えきれてない感があるけど…>
 
患者の理想の希望像と形成外科医の合意点がひとつのゴールなのかもしれませんね。
 
その為には患者もクールヘッドで色んな知識を身につけ、自分に合った希望の再建をしっかり形成外科医に伝える事が一番大切な気がします。
 
また脂肪幹細胞移植を利用した乳房再建を考えられている方は、脂肪注入の経験が豊富な形成外科医を選択した方が良いと思います。
 
それにしても脂肪注入、早く保険適用にならないかな。
 
放射線照射をしている私の温存術後の胸の凹みを補充するには普通の脂肪注入だと生着しないと思われるので、脂肪幹細胞移植になるんだろうけど保険適用になったらやってみたいと思っています。
 
今叶わなくても最新の情報を得る事は先々の希望に繋がりますねクローバー