チュン子との出会いは、2016年5月にさかのぼる。

 

 

 

私は趣味で釣りをするのだが、この日は土曜日ということもあり、仕事が早く終わる日だった。

 

春の暖かい日が続き、魚たちの活性も上がってきているであろう5月某日。

 

この日はナマズを狙ってみたくて、近所の河へと出かけていった。

 

水門の近くに車を停め、釣り支度を整え、川原へと降りてゆく。

 

その時、足元のほんの小さな草むらの中から何かが飛び出していった。

 

 

スズメだ。

 

 

時刻はもうじき5時になろうとしている。

 

この時期の5時はまだ明るく、他の鳥たちは活発に飛び回っている。

 

しかし、草むらから飛び出してきたスズメは、わずかに低空飛行をしただけで、少し先の地面に着地した。

 

人間が近づき、驚いて飛び立ったにしては何かがおかしい。

 

「怪我でもしてるのか?」

 

そっと近づくと、まだほんの小さい、顔も身体もまん丸としたスズメの雛らしきものがそこにいた。

 

 

 

 

さてさて、これはどうしたものか・・・

 

見たところ怪我をしている様子はないが、雛がこんなところにいれば、夜になったら猫やキツネに食べられてしまうかもしれない。

 

ヘビの餌食になってしまうことだって考えられる。

 

巣から落ちたのか? と辺りを見回すも、スズメの巣なんてそう簡単に見つかるはずもない。

 

こういう場合、どうしたらいいのか・・・ 地面の雛を見つめながら考えていると・・・

 

「ん? こいつ足を怪我してるのか?」

 

鳥の足は本来、前方に三本、後方に一本の指が伸びている。

 

しかしこの雛は、後ろに伸びているはずの指が前に来ているではないか。

 

よく見たら両足ともそうなっている。

 

 

骨折・・・

 

 

そう思ったらさすがに放っておくわけにもいかず、まずは妻に電話する。

 

 「今、釣りに来たんだけど、スズメの雛が落ちてるの見つけちゃってさ!

どうも足を骨折してるみたいなんだけど、このまま放っておけば猫とかに食べられちゃうと思わない?

どうすればいいかなぁ?」

 

妻 「どうするって言ったって・・・  連れて来たいんでしょ?笑  

   連れて帰っておいでよ」

 

 「え? いいの? わかった!  今○○にいるから、これで捕獲して帰るね!」

 

 「そのかわり、うちにあった鳥用品、みんな処分しちゃったから必要なもの買っておいで」

 

こんなやり取りの後、スズメの雛をどうにかこうにか捕獲して、なるべく車が揺れないようにそっと運転しながら帰路についた。

 

他の車には、さぞかし迷惑だったろう・・・

 

途中ホームセンターで鳥かごや餌などを購入し、帰宅したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

これが「チュン子」との出会いである。

 

今思えば、私は堂々と誘拐をしてしまっていた・・・

 

この時は「巣立ち雛」なんて言葉すら知らなかった。

 

落ちている雛は全て、育児放棄されたか、誤って転落してしまい、あとは食べられるか餓死するのを待つだけの運命なんだと思っていた。

 

巣立ち雛のことを知ったのは、チュン子と出会ってから二ヶ月程後のことである。

 

 

 

※ スズメなどは、巣立ちが近づくと数日間は地面で過ごすようになります。

  この間は親鳥が雛をしっかり見守りながら餌を運んで、雛がこれから一人で生きて

  いくにあたって、どうしていけばいいかを親鳥から教えられる期間になります。

  この期間中に人間が雛を発見してしまった場合、誤解して連れ去ってしまう事例が

  多いのだそうです。

 

  私の場合もまさにこれで、知らなかったが故の連れ去りとなってしまいました。

  詳しくは「巣立ち雛」で検索していただくと、色々な情報が出てくると思います。