LSDとは
リゼルグ酸ジエチルアミドは、非常に強烈な作用を有する半合成の幻覚剤である。ドイツ語「Lysergsäure Diäthylamid」の略称であるLSD(エルエスディー)として広く知られている。また、アシッド、エル、ドッツ、パープルヘイズ、ブルーヘブンなど様々な俗称がある。LSDは化学合成されて作られるが、麦角菌やソライロアサガオ、ハワイアン・ベービー・ウッドローズやハワイアン・ウッドローズ等に含まれる麦角アルカロイドからも誘導される。形状は水溶液を染みこませた紙片、錠剤、カプセル、ゼラチン等様々である(日本ではペーパー・アシッドが有名)。LSDは無臭(人間の場合)、無色、無味で極めて微量で効果を持ち、その効用は摂取量だけでなく、摂取経験や、精神状態、周囲の環境により大きく変化する(セッティング)。一般にLSDは感覚や感情、記憶、時間が拡張、変化する体験を引き起こし、効能は摂取量や耐性によって、6時間から14時間ほど続く。 日本では1970年に麻薬に指定された。
Appleのジョブズも使っていた「LSDの安全性」
LSDはサイケデリックな幻覚体験を引き起こす幻覚剤の一種で、日本を含む多くの国で違法な薬物として指定されています。違法薬物でありながら、LSDが引き起こす刺激的なサイケデリック体験に感銘を受けたAppleのスティーブ・ジョブズが「LSDの体験は人生で最も重要な経験の1つ」と話していたことが知られています
多くの国で違法薬物に指定されているLSDは「LYSERGIC ACID DIETHYLAMIDE(リゼルグ酸ジエチルアミド)」の頭文字をとったもの。
あまり知られていませんが、LSDに毒性はなく……中毒性もない、「幻覚剤」の一種だとのこと。
エルゴリンと呼ばれるアルカロイドの構造骨格となる化合物からできており、マジックマッシュルームなどに含まれるトリプタミンの仲間でもあります。
初めてLSDが合成されたのは1938年で、化学者アルバート・ホフマンが行っていた麦角菌の研究中に開発されました。偶然、ホフマン博士の手についた少量のLSD溶液が体内に吸収され、強烈な色彩の幻覚を体験したことから、LSDの持つ幻覚作用が発覚したとのこと。
LSDはアサガオやギンバイアサガオ(ハワイアンベイビーウッドローズ)といったありふれた植物の種子から合成することができます。
これらの種子はエルジン(リゼルグ酸アミド)などを含む10種類のアルカロイドを持っています。リゼルグ酸アミドは別名「LSA」とも呼ばれ、LSDとよく似た構造をしています。
合法的に入手できるアサガオの種子を使ったトリップ体験は、ラテンアメリカでシャーマンの儀式のため何世紀にもわたって使用されてきました。
LSDは、セロトニンの動きを模倣してセロトニン受容体から脳に入ります。

脳内の神経伝達物質として働くセロトニンの働きを模倣することで、幻覚や幻視が起こると考えられていますが、LSDによる幻覚体験の正確なメカニズムはいまだ解明されていないとのこと。
そこである科学者が、LSDを服用した30人の被験者をMRIにかけて調査を行ったところ、LSDは意識に関連する脳の領域に作用していることが判明。意識をカットすることで、服用者を自由な思考状態へ移行させるそうです。
同じく幻覚剤として知られるマジックマッシュルームは、LSDと同様の効果を持つと考えられています。ムービーの作成者はマジックマッシュルーム・LSDともに経験したことがあり「どちらも同じような幻覚体験が得られる」、と話しています。
また、これまでLSDが直接的な原因となった死亡例は1件も報告されていないとのこと。以下は身近な物質の人間の半数致死量(投与した対象の半数が死亡する用量)を表わしたもので、水なら6リットル、カフェインならコーヒー118杯分、アルコールなら40度のお酒45mlが13杯。
一方で、LSDの半数致死量は1万2000マイクログラムと考えられています。

これは標準容量のLSD120回分に相当するため、毒性はかなり低いと考えられるわけです。
致死量を超える400回分を一度に摂取したという報告も残っていますが、摂取した人が死亡することはなかったとのこと。
また、LSDは瞬時に耐性を構築する性質を持ちます。
例えば、同じ種類のLSDを毎日摂取したとしても、十分な効果が得られるのは1日目だけで、2日目に続けて摂取しても効力は50%しか感じられず、3日目に摂取しても何の効果も表れないとのこと。つまり連続で服用しても効果がないため、中毒に陥ることがないようです。
よくあるLSDとしては、以下のような何か絵柄のついた紙片にLSD溶液を染みこませたものが知られていますが……
これは街中のディーラーなどが違法的に販売しているもので、LSDに似せた有害物質が含まれている可能性が高いそうです。例えばLSDとして販売されることがある25i-NBOMeという薬物なら、わずか2回分を摂取するだけで死につながる恐れがあります。
そもそもLSDが違法化されたのは1960年代のこと。
そのため、LSDに関する新しい研究はしばらく行えない状態にありましたが……
近年では「MAPS(Multidisciplinary Association for Psychedelic Studies)」と呼ばれる研究組織が、LSDの有用性を研究しているとのこと。イギリスでもイギリスでもLSDを被験者に投与してもよいという許可を得た科学者が40年ぶりに現れました。
また、過去には多くの有名人がLSDを経験しています。Appleの創始者であるスティーブ・ジョブズもその1人。
LSDについてジョブズは「LSDの体験は私の人生のなかで最も重要な体験の1つでした。LSDの体験は、効き目が切れたあとはあまり明確に思い出せませんが、コインに別の側面があることを示してくれました。その結果、LSDはお金を稼ぐことよりも重要な、私のセンスを強化したのです」と話しており、Apple製品のデザインや戦略にLSDの体験が関係していることを明かしています。
他にも、DNAの螺旋構造を発見した科学者フランシス・クリックや……
アメリカのアルコール依存症を克服するための自助グループ「アルコホーリクス・アノニマス」の設立者であるビル・ウィルソンもLSDを使用していたことで知られており、ウィルソンはアルコール依存症克服プログラムにLSDを検討していたほどだったとのことです。
LSDの誕生
LSDは1938年11月にスイスのバーゼルにあるA・Gサンド社(現・ノバルティス)の研究室でスイス人化学者アルバート・ホフマンによって合成された。その幻覚剤としての発見は1943年4月16日になされ、これがLSD発見の日とされている。ホフマンはリゼルグ酸化合物の研究中、眩暈を感じ、実験を中断せざるを得ない状態に陥ってしまった。そして実験を中断して帰宅した後も軽い眩暈に襲われていた。帰宅するなり横になっていたが、極めて刺激的な幻想に彩られていた。日光が異常に眩しく感じ、意識がぼんやりとし、異常な造形と強烈な色彩が万華鏡のようにたわむれるといった幻想的な世界が目の前に展開していた。その状態は2時間ほど続いた。これがLSDの幻覚作用発見の瞬間であった。
LSDとサイケ
1960年代LSDが大衆の間に広まると、LSD摂取時におこる幻覚に影響を受けたサイケデリック・アートが起こった。 LSDを体験した画家180人の調査では、ほとんどの画家がLSD影響下で書いた自分の絵を「技術は損なわれているが、線が大胆になり、色が鮮やかになり、情緒的により拡張されたものである」と評価し、114人が「LSDを体験してからは自分の作品が色をより大胆に使用し、情緒的な深みを獲得し、より熱狂的に創作できるようになった」とLSDが自分の作品に影響を及ぼしたと評価した。しかし、日本にはアメリカにおけるようなLSD体験やそれに伴う社会的な断絶は存在していなかった。そのため「サイケ」は単なる流行として非常に短命に終わり、1970年代中頃にはすっかり忘れ去られたものとなってしまった。
LSDの身体的作用
LSDを服用すると、精神症状発現前に散瞳、深部反射の亢進、心拍数や血圧や体温の上昇、軽い目眩あるいは吐き気、悪寒、疼き、振戦、緩徐な深い呼吸、食思不振、不眠等、交感神経系の症状が起こる。また、子宮収縮作用があるので妊婦は服用に際し注意を払わなければならない。なお、身体依存は全く無いか、あってもごく僅かとされている。なぜLSDが幻覚を引き起こすのかについては未だに分かっていない。
LSDの逮捕者
- いしだ壱成(モデル・俳優)
- 今井寿(BUCK-TICK)






















