3月の最終日、
消費税5%最後の日。
月曜日にも関わらず、
どこのスーパーもトイレットペーパーやら
生活必需品やらを買い込む人々で混み合い、
地域で安いガソリンスタンドには
車の行列ができ、
いつになくせわしない街中を、
会社帰りのオレは原付を飛ばして
自宅に向かっていた。
残業で退社時間が遅くなり、
次の予定にギリギリになりそうだったからだ。
いつもより車の多い道を
原付は車の間を縫うように
止まることなく進んでいた。
そして、
車の量も少なくなった通りの
交差点に入った瞬間、
脳を突き刺すほどの
サイレンが一度、鳴った。
「もしや、火事か!?」
と、
消防団員でもあるオレはすぐさま
反応して火事場に直行!
する訳もなく、
心の中は一瞬で
「やっちまったーー!!!」
の一色に染まっていた。
そう。
その交差点の右側の道の
少し影になっている部分から聞こえた
そのサイレンの発信源は、
白と黒のツートンカラーのボディに
赤い冠を被ったあの車だったのだ。
オレは拳銃や防弾チョッキを
装備している彼らに抵抗するハズもなく
観念して原付を降り、
大人しく指示に従った。
相手はベテランであろう
50歳前後でおおらかな中に
どっしりとした存在を感じさせる男性と、
まだ20代前半であろう
初々しさのある若い男性の二人組だった。
他の車の邪魔にならない所に移動を促され、
ツートンカラーの車に招待されるオレ。
後部座席の左側に座り、
一息つく間もなく質問がきた。
「えーでは、
まず免許証を見せてもらえる?」
捕まったコチラの気持ちを
分かっているのだろう、
少しだけフランクに、
威圧を感じさせないような
質問の仕方だった。
この辺はやはりベテランなのだろう。
すでに観念しているオレは、
免許証を取り出そうと、
ポケットに手を入れた。
……
………
…………!
免許証が、ない!
つづく。



