庶民だって遺言信託
少し前の朝日新聞に、表題のようなタイトルの記事が出ていました。
遺言信託とは、相続に備えて信託銀行に遺言書を預け、死後の財産分配までを任せるというものです。
かつては資産家が利用するものというイメージがありましたが、最近では広く一般に利用されるようになっているそうです。
その理由を、記事では以下のように分析しています。
① 相続争いの小額化
09年に家庭裁判所が扱った相続争いの調停・審判は過去最多の約1万5千件で、このうち調停成立件数は遺産額5千万円以上が00年度比12%減の約1700件なのに対し、5千万円以下は5割増の約5700件。
核家族化によって個人の権利意識が高まっている今、財産が少ないから遺産争いは発生しないと考えるのは、危険なのです。
② 身近な法律問題を扱うテレビ番組や雑誌の特集が増えた
③ 東日本大震災をきっかけに、いつ何が起こるかわからないという不安が高まった
確かに、あのような震災を目の当たりにすると、誰もが死について考えざるを得ません。
実際、公証役場によれば、震災後は60代以上が多い依頼者に混じって、40~50代も訪れるようになったとのこと。
さて、遺言や相続については、信託銀行だけでなく、われわれ行政書士も業務として扱うわけですが、信託銀行との違いは何でしょうか。
当然、銀行ですからブランドイメージもあり安心感もあるでしょう。
しかし、その代わり費用はそれなりに高くなります。
たとえば、大手である三菱UFJ信託銀行の場合、契約時の手数料が31万5千円、執行時の手数料は財産額で変動するが、157万5千円からとなっています。
私の事務所では、公正証書遺言を作成する場合でも、報酬は10万5千円から、遺言執行手数料は31万5千円からです。
こうしてみると、やはりまだまだ遺言信託は庶民には手が届きにくい存在のように思えます。