1円会社の使い勝手は?
会社設立の際の資本金をいくらにするかという昨日の記事の続きです。
さて、昨日は、法律上は資本金を自由に決めてよいということを書きました。
では、初期投資を抑えるために、資本金は1円でも大丈夫なのでしょうか?
結論から言うと、「法律上は大丈夫です」ということになります。
以前は商法で「最低資本金額」が定められており、株式会社の資本金は1千万円以上でなければならないとされていました。
しかし現在の会社法では、この最低資本金の規定はなくなったため、資本金1円のいわゆる「1円会社」も設立できることになりました。
これによって、手持ちのお金の少ない人でも簡単に法人格を手に入れられるようになりました。
少し前の法律をご存知の方は、「資本金1円で設立しても、5年以内に1千万まで増資しなきゃいけないんでしょ?」とおっしゃいますが、そのような規定も現在はありません。ずっと資本金1円のままで大丈夫です。
では、この1円会社、実際の使い勝手はどうなのでしょうか。
実は、私の事務所では今のところ1円会社を作ったことはありません。
なぜなら、一円会社では社会的信用が得られにくいため、あまりお勧めしていないからです。
資本金の額は登記簿に記載されますので、法務局で請求すれば誰でも見ることができます。
ある会社と取引をしようと思った人が、その会社の登記簿を調べたときに、もし資本金が1円しかなかったとしたら、どう思うでしょうか。
「この会社、大丈夫かな?」と思うのが通常の感覚だと思います。
実際には会社にもっと資金力があるとしても、外部から見て判断材料にされるのは資本金です。
一般の方の信用もさることながら、金融機関からの信用も重要です。
事業を大きくしたいとか、資金繰りが苦しくなったというときに、金融機関から融資を受けたいと思っても、資本金が1円の会社では、よほどの事情がない限り融資は難しいでしょう。
ですから、このようなリスクを犯してまで、わざわざ1円会社を設立するのは、お勧めしないのです。