この作品はBLを含む妄想小説になっております
ご不快に感じられる方は進まずにUターンをお願い致します
お話し始まります
後ほどシリーズとして項目整理します。
゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚
■潤くんとの出会い(Nside)■
「あれ?」
俺がいつものように体育の授業をさぼって美術室に行こうとしたら、誰かが中庭の木の下に蹲っていた。
面倒だなって思いつつも、学校内だし無視するわけにはいかない。
「具合悪い?
保健室でいい?」
そいつの横に立って聞くと、小さく首を振ったけど、立ち上がろうとはしない。
はぁー、本当面倒だなあって思って、同じように横にしゃがみこんだ。
「水がいい?何か、スポーツ飲料系?それとも炭酸?」
「・・・炭酸」
ふーんって思いながら俺は立ち上がって、近くの自販機から炭酸飲料をかって戻った。
さっきと若干体制が変わったそいつに、蓋を開けたペットボトルを差し出す。
「・・・・りがと」
聞き取れないぐらい小さな声でお礼を言われて、そいつは気だるそうにペットボトルを持ち上げてコクリと飲んだ。
黒縁の眼鏡と長い前髪、顔を隠そうとしてても、その整った顔は丸わかりだ。
確か名前は、松本、潤だったかな?同じクラスでいつもひっそりと教室の隅に座っていた背中を思い浮かべる。
ふーっと小さくため息をついた松本は、顔を上げて、あっという表情を浮かべる。
「・・・二宮くん?」
「そうだけど?なに?」
「・・・ううん、優しいね。ありがとう。ちょっとすっきりした」
ペットボトルと濡れた水滴を指でなぞりながら、松本はそういうと目を反らした。
「・・・ここ暑いから、移動するけど、お前は?」
「そうだね、外はもう暑いんだね・・・。夏もそろそろかな。
アジサイの花も終わりかな」
この学校の誰もが目に止めない、綺麗に咲いているアジサイを見て松本は寂しそうに笑った。
俺の数少ないこの学校に好きな所が、緑が多くて季節ごとの花が見れるところだった。
中庭は綺麗に手入れされていて、心地よい。
「だな」
俺も松本と同じようにアジサイに視線を向けてから立ち上がった。
「俺は行くけど。どうする?」
大野さんはこいつを美術室に連れ行っても怒らないだろう。
そもそも、あの人が怒ったところを想像できない。
あれから俺は結構頻繁に美術室に顔を出している。
妙にあの人との空気は心地が良い。ずっと黙ってて心地いいし、なぜか何でもない話題もあって盛り上がったりもする。
そして念のため調べた見たら意外にあの人は、成績も良くて、運動神経も良くて、絵もコンクールで入賞するほど上手いことを知った。
だからあんな感じで学校にいれるんだろう。本当、意外性のかたまりの人だった。
「・・・一緒に行ってもいいの?」
「まぁ、いいんじゃない?」
俺がそういって背を向けると、松本も立ち上がった気配がして俺の後をついてくる。
俺はいつもよりゆっくりと美術室を目指した。
「すごいね」
松本はさっきから美術室を見渡しては「すごいね」を連発している。その様子は無邪気で可愛らしかった。
そんな松本の様子を見て、これは過保護な保護者が裏にいるんだろうなぁ、とその保護者の心配に同情する。
「俺がすごいんじゃなくて、大野さんがすごいんだけどね」
「・・・そうなんだ」
大野さんと言う言葉に松本は目を見張って、もう一度、イラストをジッと見つめた。
その姿になぜか俺は、胸がツキンとした。
「ねぇ、ニノってゲームする?」
美術室に入って、俺の事を二宮君と言う松本に、俺はニノでいいと伝えた。
松本は嬉しそうに笑って「2人の時はニノって呼ぶね」と言われ、こいつはやっぱ頭がいいなって自分の勘を褒めた。
「僕は潤でいいよ」と言われたから、俺は「分かった」と返事をした。
「ゲーム?まぁ、するかな?」
本当はものすごくゲームをする。
この美術室にもパソコンを持ち込んでいる。何ならWi-Fiまでこっそりと完備した。
松本が言っているゲームも、まぁswitchとかプレステとかのゲームだろうと思いつつ、普通の感じで返事をした。
そんな俺を松本はじっと見て、じっと見て、小首をかしげて見て、やっぱりコイツはこの黒メガネと前髪がいるなってって俺は思った。
「・・・もしかして、パソコンとかでゲームする人?ニノって」
美術室の片隅に置いてあるパソコンを見て松本は言った。
あぁ、なるほど、やっぱりこいつは察しがいいわ。
「だけど?」
「FPSとかする?」
松本の顔がパーッと輝いた。
「するよ」
「うっわー、俺、リアルでゲーム出来る人に会ったの初めて!
今度一緒にしよう!!」
口調が俺になってるし、スマホ出すの早いし。って、学校ってスマホ禁止だよな。
自分のスマホを出しながら、思っていると、松本は「許可済みだよ」と笑った。
ごく少数の生徒には例外的にスマホを持つのが許されていた。
ただその生徒は、表だってスマホを触るような事はしない。
だから一般の生徒たちは、持っていることを知らないはずだ。
ちなみに一般の生徒は、登校時にスマホをロッカーに預けるようになっていた。
「これが俺のIDね?」
慣れた手付きで、俺にIDを送ってくる。
「これって?アレのID」
「そう、アレのID。だからフレンド追加お願い。
いつでもいいから、一緒に遊ぼう?」
そのIDを見て、こいつは結構ゲームやり込んでいるなって思う。
見覚えがあるアルファベットと数字の羅列を眺めながら、あんな時間にプレイしてたら、この暑さで外にいればバテるわ。
でも体力はあるんだろうなぁ。休みの日とか、オンラインゲーム上で、そのIDは朝も見て、夜も見る事がある。
「OK」
俺が画面をみて、潤くんと目を合わせて返事をすると本当に嬉しそうに笑った。
これが俺と松本潤との長い付き合いの始まりだった。
*おしまい*
