『ちりとてちん』の放送開始は、2007年10月1日。その日が間近に迫るや、ヒロインの貫地谷しほりさんも番宣のためにテレビ出演する機会が増えた。

9月27日は、関西エリアの夕方の番組「もっともっと関西」に出演。
9月29日は、朝から大阪で関西エリアの番組「ウィークエンド関西」と「オンエア直前！『ちりとてちん』の魅力大公開」に出演。その後、東京へ移動して、午後から「土曜スタジオパーク」に出演。
加えて、移動中のお昼には事前に収録した出演番組「バラエティー生活笑百科」が放送され、関西はさながら“ちりとてちんデー”の様相を呈していた。

しほりんも、9月27日のブログで次のように告知してくれている。

> 29日は『ちりとてちん』の番宣の為に朝から生番組出演です！
> 関西の方は9:00からの番組がＢＫプラザスタジオ、午後の土曜スタジオパークは渋谷のNHKスタジオパークで観覧出来ますのでお時間がある方は是非！
（中略）
> 10月から半年間『ちりとてちん』をよろしくお願いします！

出演した番組では、ドラマの見所紹介はもちろんのこと、落語指導の様子といった裏話なども聞くことができた。
なお、29日はテレビ出演終了後に、夕方から渋谷の東急本店でトークショーを行っている。
まさに東奔西走のＰＲ活動を敢行したしほりんには、ただただ頭が下がるばかり。
朝ドラのヒロインは、本当に大忙しだ。

ちりとてちん第9週「ここはどこ？私はだめ？」

草若師匠から正式に弟子入りを認められて、喜代美ちゃんがようやく落語家への道を歩み始めたと思ったら、なんと一気に落語家デビューまで決まってしまうとは！いやはや、今週も軽快に飛ばしましたね。
それに加えて、とっても切ない場面があるかと思えば、腹を抱えて笑える場面もあって、まさに涙あり笑いありの起伏に富んだ展開を楽しむことができました。

いよいよ内弟子修業が始まり、不器用な喜代美ちゃんにとっては休む暇も無い程の忙しさ。すぐに投げ出してしまうのではないかと冷や冷やしましたが・・・。
しかし、修業の意義を理解するまで落語の稽古すらつけてくれないなんて、草若師匠もああ見えて、なかなか厳しい人ですね。
心が冷え切ってしまった時に草若師匠がいれてくれたお茶の温かさに、気配りの大切さが身に染みた喜代美ちゃん。奈津子さんの言葉にはっと気が付いて、ようやく師匠から稽古をつけてもらえるようになり、ほっとしました。
草若師匠から手渡された扇子と手拭いには、徒然亭の蝉の紋が。扇子を広げてそれを見つめる喜代美ちゃん、何と嬉しそうなことでしょう！見ているこちらも感激してしまいました。

それから、ずっと気になっていたのが、喜代美ちゃんの芸名。可愛らしくて、かつ、草若師匠の「草」の字を貰うとしたら、きっと花の名前になるんじゃないかなと、勝手にあれこれ想像していたんですよ。
でも、「愛宕山」に出てくる「蓮華」や「蒲公英」には「草」の字がつかないし、そうかといって、草若師匠がおかみさんのお墓に供えていた「霞草」とか、この物語には関係ないけど「勿忘草」なんかだと、喜代美ちゃんのキャラ的には面白いかもしれないけれど、なんかいまいちだし・・・。
それなので、「徒然亭若狭」という芸名を聞いた時には、そう来たか、と感心してしまいました。草若師匠の「若」は、「若狭」の「若」だったんですね。
いい名前を貰って良かったなあ、同じように故郷をHNを使っている私にとって、一段と親近感が湧く名前で嬉しいなあ、と思ったのですが、当の喜代美ちゃんがあまりにがっかりするので・・・。
いくら小浜にいた頃の自分が嫌いだからといって、何もそこまで故郷を嫌わなくても、ねえ。だから、喜代美ちゃんが最終的に「勝訴！」と思えるようになってくれて、ほっとしましたよ。笑

さて、奮発した越前ガニを手土産に草若師匠のもとへ挨拶に訪れた小浜の両親ですが、師匠を相手に漫才を演じてしまうお母ちゃんは可笑しかったですね。
早速取材の申し込みに来た奈津子さんも交えてカニスキを囲みながら、女流落語家の明るい未来に思いを馳せて、夢見心地で眠りにつく、そんな喜代美ちゃんの幸せな一夜が明けたとたん・・・。
早朝から草々兄さんに叩き起こされてしまいましたが、掛け布団を抱えた寝相の悪さや、寝惚け眼であくびをする喜代美ちゃんの表情が笑えましたね。
内弟子修業の内容は、炊事、洗濯、掃除に、師匠の身の回りのお世話。１日中てんてこ舞いの日々が続くかと思うと、本当に大変ですね。思わず「頑張れ！」と応援せずにはいられません。

草原兄さんの意地悪な姑みたいな指導は笑えましたが、自分で気付くことが大切だとは言え、最初に修業の意義について分かりやすく説明してあげないのは、やっぱりどうかなと思いますよね。
これでは、訳も分からずに家事ばかりさせられ、落語の稽古もつけてもらえずに困惑する喜代美ちゃんが、次第に不満を募らせてしまうのも無理ないと思います。
もっとも、落語家は人を気持ち良く、楽しくさせるのが仕事だから、家事はそれができるようになるための修業だ、という草原兄さんの助言を聞いても、喜代美ちゃんにはピンとこないようでしたけど。

そんな喜代美ちゃんの前に再び現れたのがエーコ。同じ名前なのに、テレビ番組の収録現場でスポットライトを浴びるエーコと、現状の説明すら躊躇してしまう喜代美ちゃんとの間に存在する、光と影のような落差が切ないですよね。
わざわざ訪ねてくれたエーコを、笑顔で受け入れる精神的な余裕が無い喜代美ちゃん。彼女には来てほしくなかった場所で、会ってほしくなかった人達の前で、劣等感に駆られ、三角関係発言に心を乱され、彼女を意識するあまり失態を演じてしまい・・・。
いつの間にか脇に追いやられて、楽しそうな会話からひとり取り残されてしまった喜代美ちゃんが、「じゃませんといて！私の居場所に入って来んといて！」と、エーコに酷い言葉をぶつける姿は、彼女が心の底から悲鳴をあげているようで、見ていて痛々しかったです。
理不尽な態度を抑えられない、そんな自分がたまらなく嫌になってしまう･･･。私にもそんな経験があるので、「お店の空気を悪うして、すいませんでした。」と泣きながら謝る喜代美ちゃんの姿に胸を締め付けられる思いがして、涙がこぼれました。
そんな喜代美ちゃんの姿を見ていた草若師匠、「相手見て、言葉選んで、物言え。」という言葉で草々兄さんを叱り、熊五郎さんをうまくあしらい、自宅に戻った喜代美ちゃんに対してそれを実践するあたり、さすがですよね。

修業の意義に気付いた喜代美ちゃんがようやく迎えた初稽古。あの浴衣姿は彦八まつりを思い出します。しかし、いざ稽古をつけてもらう段になるや、嬉しさのあまり師匠の話もろくに聞かずに見台、膝隠し、小拍子といった上方落語独特の道具をいじり、まるで子供のようにはしゃぐ喜代美ちゃんって・・・。笑
おまけに、よっぽど興味を引かれたのか、取り付かれたように繰り返す、あの仕草。
“トントントン” 「こんにちは。」 “トントントン” 「開けとくなはれ。」
もうねえ、この両手を別々に動かす仕草ができずに悪戦苦闘する喜代美ちゃんの声と姿が、しばらくの間、頭から離れませんでしたよ。笑

きつねうどんを賭けて喜代美ちゃんの初稽古ネタを予想する兄弟子たちですが、相変わらず巧みな四草兄さんの算段は笑えましたね。しかし、草若師匠はなぜ、初心者には難しそうな「ちりとてちん」を選んだのでしょうか？自分が聞きたいからだと言っていたものの、いったいどんな意図があるのでしょうね。
とにかく、上下を切るのにも一苦労の喜代美ちゃんが、最後まであきらめずに取り組み、このネタを習得できると良いのですが。

それにしても、おばあちゃんのスペイン行きは本当に唐突でびっくりしましたね。喜代美ちゃんの初高座も見ずに行ってしまうなんてねえ･･･。
まあ、その代わりに、草若師匠に高座用の着物を託したんでしょうけど。喜代美ちゃんがそれを着て高座に上がる姿が楽しみですね。
おばあちゃんからいつものように、「最後までやり遂げる自信はありますのんか？」と聞かれた喜代美ちゃんが、涙を浮かべながらしっかりと頷いて笑顔を見せるシーンは印象的でした。青空高く飛びたつ飛行機を見上げて「よし！」と呟いた後に見せた、やる気のみなぎった表情も素敵でしたね。

今週は妄想シーンも盛り沢山でしたが、短いシーンでも全力投球するスタッフの心意気が嬉しいですね。
「女流落語家、その成功の軌跡」出版記念パーティーに臨む喜代美師匠や、小草若兄さんの妄想に出てくる「喜代美LOVE」「小草若LOVE」と書かれた着物姿のラブラブ「寿限無」も笑えましたが、何と言ってもやっぱり、喜代美ちゃんの芸名を巡る妄想が面白かったですね！

「徒然亭草じきでございます。ウィーン、ウィーン！」高座で掃除機をかける姿が、また可愛らしい。
「徒然亭草しきでございます。」 “チーン！”。りんを鳴らしておもむろに拝みだす神妙な表情が、何ともいい感じ。
「徒然亭草せーじでございます。うまい！」ソーセージの被りものとは！頬にペイントまで施して、芸が細かい！
「徒然亭草りがまでござる。逃がさん！」　おお、忍者ですか！これはお母ちゃんが喜ぶかも。

落語家デビューに際して新しい名前を貰えると聞いて、驚くやら嬉しいやら。そんな喜代美ちゃんの表情の変化もまた面白かったですね。それにしても今週は、しほりんの多彩な表情のお芝居を存分に楽しめましたね！
よくそんなにストックがあるなあとびっくりするくらいに、次から次へと様々な表情を繰り出してきて、本当に感心してしまいます。
「ちりとてちん」は、しほりんの高い演技力がベースにあるからこそ、ヒロインが涙するシーンを多用したり、妄想シーンで遊んだりして、泣きと笑いの幅をここまで拡げる演出が可能になっているし、また、視聴者がネガティブ思考のヒロインに対しても共感できるのだと、改めて思いました。

さて、草々兄さんの指導のもと、一番太鼓の稽古に励む喜代美ちゃんですが、来週はいよいよ落語家デビュー！
はたして、初高座で演じる「ちりとてちん」の出来がいかなるものになるのか、本当に楽しみですね！

東奔西走！