Amok/Atoms for Peace | Surf’s-Up

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音楽の話を中心に。時にノスタルジックに

Amok/XL.



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Atoms For Peaceの待望の1st。


トムのソロアルバムThe Eraserをライブで,生音で再現するために作られた Atoms For Peace。フジロックでの圧巻のパフォーマンスは今なお新鮮さを持って心に残っている。あのときのトム・ヨークという「生き物」を僕らは思考が止まったまま、ただただ見守るだけだった。「最高のライブ」という言葉がなんだか陳腐に思えるような、その上を行くような。昨年のRadioheadよりもうえであったと僕は思っている。


オープニング、Before Your Very Eyes...のイントロが始まった瞬間、あの苗場で聞いた感覚がよみがえってきた。血に細胞に深く染みこんでくるような、柔らかなグルーヴ。


一音一音分解したら、無機質的なものばかりなのに、名うてのプレイヤーたちが紡いでいくとそこに魂が宿る。


エレクトロニックもソウルもポリリズムも、トムにかかってしまうと空間の中で自由に跳ね回るようになる。相反しているように見えるものでも、絶妙なバランスでハーモナイズされる。この辺が実に見事。レディオヘッドの作品ももちろんそうだが、Amokはその最高峰に位置する作品だろう。


レイヤーも凝りに凝ったという印象がなく、自分の中に生まれてきたものを素直に配置している感がある。それもまた、Atoms For Peaceという共同体のポテンシャルがなせる技。


サックスの退廃的なループ、滴のような繊細なパーカッションが独特の緊張感を生んでいるIngenue、アフロビートとトムの柔らかな歌がギリギリのところでバランスを保っているようなJudge Jury And Executionerなど、とにかく1曲たりとも聞き流せるものがない。


そして、Stuck Together Piecesから最終曲Amokまでの流れが実に素晴らしい。ひたひたと刻まれるビートが、これほどまでに情感を与えるのかと感服させられる。



(06/03/13)