Deerhunterのギタリスト、ロケット・パントのソロ名義、Lotus Plazaの2nd。何せフロントマンのブラッドフォード・コックスの存在感が大きすぎて、正直このアルバムを聴くまでは名前さえ知らなかったのだが、このアルバム、素晴らしいです。Deerhunterのアルバムでは「Microcastle」がダントツに好きなんですが、あのアルバムにあった繊細さと浮遊感は、この人に寄るところが大きいのではないだろうか。
オープニングのUntitledだけ聴くと、ありがちなアンビエントアルバムなのかと思ってしまうが、続くStrangersでシンプルなギターサウンドと、どこかドラッギーなヴォーカルががっぷり四つに組んで不健康な中毒性を撒き散らす。これが何とも心地よい。Out Of Touchはかなり王道のシューゲイザー。RideやSlowdiveあたりのバンドが想起される。
Dusty Rhodesは近年のTFCのようなじわっと系のナンバー。こういうものがある一方で、White Galactic Oneのように、もろDeerhunterなガレージサイケがあったりと振れ幅はかなり大きい。その分、若干の散漫さも見られるのだけど、この手のサウンドが好きな人には気にならないだろう。ラストナンバー、Black Buzzのローファイな歌から消えゆくようなエンディングへ展開していくところもたまらない。Girlsみたい。
基本となるメロディーはシンプルでリフレインを多用しているが、これがLotus Plazaの個性として光り輝いている。その分、サウンドの構造的には過去のフォーマットの再利用の色が強いものの、不思議と手垢にまみれた感じがなく、清廉として聞こえるのだ。その清廉さはDeerhunterの作品からは感じられないもので、やはりブラッドフォード・コックスの放つ抗えないほどの背徳性が核となっていたんだなと改めて思った。この作品には、わずかな水の量にも気を遣っているような、淡いタッチの水彩画のような魅力がある(それが「Microcastle」では良い具合に反映されていたんだろう)。個人的には大好きだし、こういうギター勝負なアルバムがしっかり今の時代に世に出されることを、リスナーとしては大事にしたいなと思う。
★★★★☆(27/10/12)