Mystery Jetsの4作目。2006年にデビューしてからもう6年。当時はテムズ・ビートと呼ばれたりして、シーンの中で注目を集めていたが、アルバムごとにそのスタイルを変えていった彼ら。それ自体は珍しくないが、リリースを重ねていくごとに評価を上げてきているというのはわりと希なケースではないだろうか。
とはいえ、個人的に一番好きなのは1st。明らかに音楽性の幅を広げ、しかも見事に自分たちの音に昇華させてきたのはよくわかる。でも、無軌道なグルーヴラインを描くサイケ・ロックが一番インパクトがあった。
今作はアメリカ・テキサス州でレコーディングされている。何でもいろんな影響から開放されるような場所に行きたかったらしいのだが、そこでとあるホームスタジオをradlandsと名付け、レコーディングを始めたそうだ。そして、明らかにその影響がうかがい知れるサウンドとなっている。
オープニングを飾るRadlands。いきなりジョン・フルシャンテのような枯れたギターで始まり、切ないメロディーが熱情的に奏でられていく。60/70年代のオーセンティックなUSギターロックといった風情を感じる。続くYou Had Me At Helloもオルガンと流麗なコーラスワークをアクセントに、ブルージーなロックを聴かせている。ややラウドなFleet Foxesのような感じだ。中にはThe Balld Of Emmerson LonestarのようにさらにFleet Foxesに近いものもある。Take Me Where The Roses Growは女性とのデュエット。ゆったりとしたメロディーに柔らかにヴォーカルが絡んでいく、ソフトでメロウな1曲だ。
アメリカンロックの骨太さ、土着感を醸し出しつつも、彼ら独特のUK的ウェットメロディーがいいバランスで配合されている、というのが全体の印象。フォークやカントリーっぽいものの中でも、「もろ」って言う感じがしないのはそこが大きいと思う。ただ、各曲で見ていくと個性を強調しているものもある。たとえば、ちょっと1stの頃を思い起こさせるSomeone Purerがあったり、あっけらかんとしたポップGreatest Hits,ディスコティックなThe Hale Bopのような曲まである。
そういう意味では、ただ心地よさを追求してレイドバックしたわけではないのだろう。自分たちの冒険をしっかりやりつつ、普遍性のある音楽を作り上げる力はここでも冴えを見せている。嗅覚と技量さえしっかりしていれば、まだまだ名作を生んでいきそうな気配をこのバンドは持っている。
個人的ベストトラックは、奈落の底へと落ちていくようなガレージ・ブルース、Lost In Austin。こういうのだけでアルバム1枚作ってくれないかな。
★★★★(03/08/12)