Fleet Foxesの2nd。2008年にリリースされた1st「Fleet Foxes」が各雑誌やメディアで軒並み高い評価を得、バンドの存在がシーンの中で大きくなっていく中、アルバム制作は難航。当初2010年リリースだった予定は大幅に延び、やっと世に出ることとなった。
「救いようのないブルース」と名付けられた今作。良いタイトルだなと思う。というのは、自分たちが無力であるということを嘆いているものなのではなくて、無力であるからこそ大いなる崇高なものへ身を委ねてみようという彼らのイデオロギーが感じられるからである。
そしてそのイデオロギーの体現として音楽がある。実に自然体で音楽と向き合っているというか、無理や歪みの全くないサウンドは、ロック的なものを求める人にはひどく物足りないものだろう。しかしながら、このアルバムで鳴っている音は、今ここで鳴るべき理由を持っている。逆に言うと理由がなければここでは何も鳴らないのだ。
美しいメロディーと、それを彩るコーラスワーク、オーガニックな響きを持つアコギやマンドリン達。サウンド面で前作から特に大きな変化はない。ただ、サウンドのレイヤーは前作よりもより洗練されたものとなっている。やや簡素になったように聞こえるかもしれないが、その分歌の強さが前面に出るようになった。
シンプルでありながら、彼らの音楽は独特の神々しさを放っている。それは、教祖様や高い位置にいるような存在ではなく、僕らの日常に宿っていて、ふとした瞬間に、誰の前でも現れるようなものだ。まさに現代のゴスペルと言っていいかもしれないし、多くの人々にとって必要とされる音楽かもしれない。
★★★★(2/11/11)