Farther,Son,Holy Ghost/Girls | Surf’s-Up

Surf’s-Up

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 Girls、待望の2nd。1st「Album」はおそらく自分にとって「生涯」の一枚となるであろう、最高の作品。奇跡的なほどピュアで瑞々しいメロディー、でもその源流をたどっていくと傷ついたクリストファーがポツンとギターを抱えている。そのコントラストの痛々しさがあってこそ、彼らの音楽はまばゆい輝きを放つ。このファーストはまさにそんな「奇跡」的な瞬間の「軌跡」であった。

 本作の前にリリースされた「Broken Social Club」から、録音環境がグッと向上し、音質がかなりクリアになった。また、音色の数も増えたことで、様々なタイプの曲を作ることができるようになったようだ。


 昔からのファンがまず驚いたのはDieだろう。Black Nightかというような骨太なハードロック調の曲を誰がやると想像しただろうか。歌詞は100%ネガティヴな、まさにクリスそのものなんだけど、さすがに面食らってしまった。でも後半の荒涼とした感じはすごく好き。Vomitも彼らにしてはかなりヘヴィーな部類かもしれない。ひたすら重いメロディー展開がGirlsっぽくないと思う人もいるようだ。2曲目のAlexもギターの音がずいぶんクリーンで、Girlsっぽくない、すごくまっとうなロック・チューンに聞こえる。


 もちろんGirls本来のロマンチシズムは健在。クリスの歌声は相変わらず頼りなげで今にも泣き出しそう。美しく60’sのポップソングを思わせるようなシンガロング・メロディーは1曲目Honey Bunnyから全開。個人的にはSaying I Love Youのシンプルさが最高。Hellohole Ratraceを思わせるMy Maの堂々っぷりもいい。


 ややファットになったサウンド面や冗長に感じられる曲展開に批判が結構あるようだが、個人的にはさほど違和感を感じなかった。確かに途中で曲調やテンポが良く変わる曲が、今作では多い。そういう曲が増えると、どうしてもトラックの完成度に注目しがちになる。お世辞にも洗練されているとはいえないサウンドプロダクションは確かに改善の余地があるかもしれない。


 しかし根本の魅力的な部分は変わっていないと思うし、どの曲にもクリスの癒えることのない傷の疼きがある。ざっくり言ってしまうと、愛する人にそばにいて欲しい、一貫してそれだけを歌っている。それは単なるワンパターンなのではなくて、クリスにとって音楽をやることだけが愛の渇望から来る痛みや苦しみを和らげてくれる手段なんだと思う。その疼きが消えない限り、Girlsは自身の音を鳴らすことができるだろう。


★★★★☆(30/10/11)