Go Tell Fire To The Moutain/Wu Lyf | Surf’s-Up

Surf’s-Up

音楽の話を中心に。時にノスタルジックに

Surf’s-Up
 Rockin' On 2011年2月号に「今こそUKロックが聴きたい」という特集で新人バンド7組が紹介されていた。で、そのテキストを元にネットなどで視聴したのだが、その中で1番興味を引いたのがこのWu Lyfであった。白い布で顔を覆い、メンバーに関する情報もほとんど無し。最初の印象は「Polyphonic Spreeみたいな感じかな」。マンチェスター出身とはいえ、同じ地元出身の偉大な先達たちとは似ても似つかぬスタイルのバンドだということだけはわかったが。

もちろん興味を引いたのは、その謎めいた素性だけではない。荘厳なオルガンにメランコリックなギター、なんともあくの強い濁声のヴォーカル、と音源もまた強烈であった。良いとか悪いとか判断する前の段階で「なんだこれは?」という思いで止まってしまうのだ。


 それから若干の時間を挟んで、ファーストアルバムがリリースされた。ここでは、自らの音楽性を「ヘヴィ・ポップ」と例え、幾分輪郭のはっきりした10曲が収録されている。しかし、あくまで「幾分」であって、相変わらず「?」が幾つも浮かんできそうなスタイルに変わりはない。スケールの大きい世界観をゴシック的に描いていくのかと思ったが、そうではなくてどちらかいうとコミュニティー的なレベルの世界観をアルバムから感じる。ざっくり言うとミステリアスなフーリガンのユナイト・ソングみたいな。

 ここでもやっぱり圧倒的な存在感を放っているのがオルガンとヴォーカルである。この二つはWu Lyfの世界観を体現するのに必要不可欠なものとなっている。つまりはそれだけ、この二つの描写力がすごいと言うことなのだが、裏を返すとギターやリズムがやや弱いとも言える。


 個人的にはいかにもUK的な薄いリヴァーヴのかかったギターは好きだし、良い味を出していると思うのだが、ここではサウンドスケープの一部として何とか存在している程度にとどまっている。リズムもそうで、もう少しインパクトのある何かが欲しいところだ。


 トラックのテイストやメロディーは結構光るものがあると思う。また、個性的な武器も持っているのだから、これよりもまだまだすごいものを作る力はある。もう一伸び、「聴かせる」何かを。


 ★★★☆(29/10/11)