個人的には今日の「ヘッドライナー」である星野源。小さいステージなので,絶対大変なことになるだろうと思い,早めに入った。その時点はまだ十数人しかおらず,また彼のファンだからキャーキャー騒ぐこともなく,のどかな感じだった。
リハーサルでは本人が登場。昨日も着ていた青いパーカーに長靴,メガネ姿。後にお客さんから「メガネ似合っていない」と言われ,「そのままの格好出てみようと思った」と言っていました。リハーサルの終わり頃には「スーダラ節」を歌い,お客さんにも「ご一緒に」と促していた。
アコギ(これがまた上手い)だけで,次々と紡がれていく「生活」の歌。時々「ポンチョにホットパンツの女性はエロい」「ナイススティック」などゆるいトークを挟みながら粛々と進んでいくのだが,これがまた何とも彼の世界観そのものというか,ロックフェスという空間を離れたような雰囲気がそこにはあった。 「どん底の時に『こんなのあるわけねぇ』と思いながら作った歌です」と言って披露された「子供」。「茶碗」,「老夫婦」など目の前に日常的な風景が広がるようなそんな力を彼の歌は持っている。強烈な描写力だ。
歌われた中の1曲,「ブランコ」。僕の大好きな歌。
人生をブランコになぞらえた曲で,押す人がいればブランコは揺れる。歌の中では押してくれる「君」が見つかるんだけど,最後まで手を繋いでくれる「君」がいる人はどれくらいいるんだろう?自分のブランコは揺れているだろうか?など,いろんなことを考えてしまった。いろんなことを考え,いろんなことに気付いた。
「諦めることもいいだろう 諦められないこともいいだろう 自分なくしてみるのも 人を失うことも」
「流れの中のひとつの光のよう 逆らうならば 命かけて泳ぐといい 川は作れるよ」(ブランコ)
もちろん「くせのうた」「くだらないの中に」も披露された。
「さびしいと叫ぶには ぼくはあまりに くだらない」(くせのうた)
「僕は時代のものじゃなくて あなたのものになりたいんだ
心が割れる音聴きあって ばかだなぁって泣かせあったり
つけた傷の向こう側 人は笑うように 」 (くだらないの中に)
言葉のひとつひとつに重みがある。でも,何か大きなことを言いたいんじゃなくて,彼の紡いだ言葉が,聴き手の心に届いて,各々の中で意味をもたらしている。これは演じる側にとっても聴く方にとってもとても幸せな関係じゃないだろうか。まさにピースフルな時間だったと思う。