Avi Buffalo/Avi Buffalo | Surf’s-Up

Surf’s-Up

音楽の話を中心に。時にノスタルジックに

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 Avi Buffaloはカリフォルニアの男女2人ずつの4人組。ソングライターであったAviは若干21歳と若いバンドであるが、レコーディング音源が反響を呼び、名門サブポップと契約。今回紹介する1stも大きな反響を呼び、Amazonの上半期ベストアルバムでは、LCD Soundsystemに次いで2位となっている。


 音自体は、最近のUSインディの流れにある、柔らかなサウンドプロダクションとメランコリックなメロディーを基調としたもの。しかしながらこのバンド、非常に個性的な魅力を放っている。


 まず特筆すべきは、その瑞々しいメロディーだ。時にドリーミーに、時にメランコリックに。作り込んだ、というよりは最初から「そのままの形」で生まれたような感じで、手垢にまみれていないピュアネスを秘めている。個人的にはDaniel Johnstonの楽曲にも通じるものがあるように思う。才能の成せる仕事だろう。


 そしてそこにギター・ポップ、フォーク・ロック、またはトロピカルなどアナログっぽい音作りで肉付けをしているが、そのさじ加減も絶妙。アヴィの歌の世界を損なうことなく、むしろ多彩な光を放つような効果を生み出している。アヴィの歌声は非常に中性的なハイトーン・ヴォイス。個性的であり、個人的には苦手な部類であるはずなのだが、まったく抵抗なく聴けてしまう。というよりも、むしろ「この歌声でなければならない」と思うくらい、曲のコンセプトを体現するのに相応しい。優しげだけど、どこかヒリヒリと痛々しい面も覗かせるアヴィの歌。どれもこれもが、必然の中で鳴っているようなのだ。


 代表曲であるWhat's In It For?のアンセミックなナンバーももちろん良いが、個人的にはOne LastやSummer Cum、Where's Your Dirty Mindといった穏やかなフォーク調の曲が特に好きである。トーンは似ていても幅広い曲想を描いているところも素晴らしい。心地よいだけでは終わらせないような強烈なフックをどの楽曲も持っている。


 「奇跡のような1stアルバム」と言ってしまうと、この先が何だか重くなってしまうのだが、とにかく本当の意味での「自然体」なアルバムを作ってしまった、と思う。これってすごい達成感を味わうんじゃないかと勝手に想像してしまうのだが、次の作品を作る上でのモチベーションをどう高めていくのだろう。これも勝手な詮索である。


 おすすめ度★★★★☆(26/07/10)