I Heart California/Admiral Radley | Surf’s-Up

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 グランダディのジェイソンとアーロン、アーリマートのアーロンとアリアナ、この4人による新バンドAdmiral Radleyの1st。このようなバンドが活動していたことを全く知らなかったのだが、Grandaddyは自分にとってすごく思い入れのあるバンドだった(2006年に解散)。解散後、Grandaddyの中心人物だったジェイソン・リトルはソロアルバムをリリース。まさにGrandaddyの「断片」とも言えるような簡素なパーツで綴られた、シンプルな作品であったが、すごく心を打たれた作品でもあった。シーンとは全く無縁なところに、こんなにも素晴らしく美しい歌が流れている。それが自分にとってはすごく大切なことのように思えたのだ。そして、未だ持ってGrandaddyのような音を出すバンドに巡り会わない。それ故、アドミラル・ラドリーの存在にはすごく期待が持てる。


 アーリマートはGrandaddyとは若干毛色が違って、どちらか言うと「美メロ」系で歌そのものの表現力が高いバンド。サウンドもGrandaddyよりも厚い。なので、この2バンドが融合するとなると、単純計算では全方位的に力がアップしたようなバンドになるが、実際のサウンドは予想とかなり印象が違った。


オープニングのI Heart Californiaはピアノとシンプルな歌から始まり、そこにチープな電子音とディストーションギターが被さって来るという、まさにGrandaddy直系のハンドメイド感たっぷりのサウンド。そして自分にとってめちゃめちゃツボな音。ローファイテイストながら広がりのあるサウンドスケープを描いていく、独特のレイヤーサウンドは健在。しかし、このアルバム決してGrandaddy色が強いわけではない。例えば2曲目Ghosts of Syllablesの輪郭がはっきりとしたメロディーは、まさにEarlimart。また、Sunburn Kids、I'm All Fucked On Beerは両バンドがこれまでやったことがないようなデジ・ロック調のナンバー。


 といったように、それぞれの魅力を融合させるというよりは、Grandaddy,Earlimartのサウンドテイストを楽曲によってチョイスしたり、自分たちの音楽性から離れたところでちょっと遊んでみたりだとか、自由な雰囲気で楽しみながら作ったような感がある。だから、スプリットアルバムに近いかもしれない。でも、個人的にはその手法が上手くはまったと思う。元々とても素晴らしいものだから、無用なビルドアップを避け、自分たちの良さを足し算しない方向で表現したことで、彼らの音楽の奥底にある、美しいけど、手にした途端に壊れてしまいそうな「はかなさ」がすごくリアルに伝わってくる。


 ただ、まだまだこんなもんじゃないだろう、とも思う。曲の出来のばらつき、フォーカスの甘さがもう少し修正されたら大傑作を作れるんじゃないか、と期待している。これからも追いかけていきます!


 おすすめ度★★★★(19/07/10)