In This Light And On This Evening/Editors | Surf’s-Up

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 Editorsの3rd。今や英国でも1位を取れるバンドへと成長した彼ら。今作でも見事に1位を獲得したようだ。すごいなと思うのは、Editorsのようにクールで暗黒的な世界観を持っているバンドが、このように評価されるということ。多くの大衆の支持を得ているということだ。


 プロデューサーにFloodを迎え、今作ではサウンド面で劇的な変身を遂げている。聴けばわかるが、まずシンセサウンドの色合いがとても強くなっている。今まで聴けたような切れのあるギターサウンドはほとんど出てこない。彼ら自身が「ギターを使ったサウンドに飽き飽きしていた」そうであるが、それにしても見事なまでにギターサウンドは押さえられている。


 オープニングであるIn This Light And On This Eveningではギターがほとんど登場しない(たぶん)。リードトラックであるPapillonなんかはOMDやHuman Leagueみたいな温度低めのシンセポップのように聞こえた。Bricks And Mortarはメロディー展開はまさにEditorsという感じなんだけど、ここも推進しているのはシンセサウンド。あのたたみかけるようなソリッドなギターは出てこない。You Don't Know Love、Like Treasureでは官能的なギターが若干見られる。控えめであるが、やはり彼らのギターサウンドには計り知れない魅力がある。


フックのあるメロディーをリフレインしながら高みへと上り詰めていくEditorsらしさは健在であるし、闇で息づく情念や魂の彷徨を描いたような世界観は失われていない。むしろ、より奥行きが出てきたというか、暗闇が増し、絶望や悲しみがより深くなったようにも感じられる。


それでも率直に言うと、やはり攻撃的なギターが失われたのは残念。「今までにないようなものを作り上げる」という意気込みは評価するが、決して聴いたことのない様なロックではない。既聴感のあるサウンドは決して相性は悪くないが、決定打とは成り得なかったような気がする。


おすすめ度★★★☆(13/11/09)