ライジングサン日記~8/14 真夜中のボヘミアンガーデン | Surf’s-Up

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 この日の最後は仲井戸麗市。ボヘミアン・ガーデンは、広い会場の中で一番奥にある小さいステージである。そして、割と近くにテントがある。というよりは、テントの中にステージがあるようなそんなロケーションなのだ。しかし、僕はこのステージが結構好きである。サマソニで言うと、Riverside Garden的な。小さい故にアーティストと近い距離で観ることができる。好きな人にはたまらないステージだと思う。



 サックスの片山広明も札幌でジャズのライブを終えてから参加するということであったが、まずはチャボが一人で登場。登場するなり「ここはウッドストックみたいだな」と言って、Woodstockのカバーを歌った。



 ギタープレイももちろん素敵だが、僕はチャボの声が好きだ。チャボの声を聴いていると何とも言えない気持ちになるのだ。男があこがれてしまうようなハスキーがかった声。そして、どことなくその裏に悲しみや怒りを持っているような所があって、でもそれを吐き出すようなことはしない。飄々としてそれらを背負っている感じがかっこいい。清志郎が亡くなったときにも、彼は僕らの前にあまり悲しさを表現しなかったように思う。清志郎の死に対してコメントしているのを見たのは、ロッキン・オンの特別号であるが、そこでも少ない言葉でできるだけシンプルに語ろうとしていた。それで十分なのだ。そういう「チャボという人間が、歌声に宿っている」と、彼の歌を聴くたびに思う。


 前半はカバー曲が中心。途中から片山広明が参加。片山さんはどう見ても呑んでいるように見えました。真っ赤っかなんだもん。観客から「ひろあきー」って呼ばれたときはめちゃめちゃ嬉しそうで、チャボにつっこまれていた。ちなみにチャボの方が年上なんだそう。

 自分で「適当に日本語で歌詞をつけた」というカバー曲は、チャボが歌うだけで完全にチャボの曲となる。そして、その歌たちは、この奥深いステージにはとても良く合っていた。ストレイキャッツやビートルズのカバーもありました。チャボはとてもご機嫌で、観客にほめてもらうと、そっちを向いて「おまえ中心にやる」と、予想以上に観客に語りかける場面が多かったです。




フライングキッズの浜崎貴司と一緒に「All My Loving」を歌った後、聞こえてきたのは「激しい雨」のリフ。



「RCサクセションが きこえる」


 そうチャボが歌った後、いくつかRCの曲を歌わせてほしいと言って、「君が僕を知ってる」を歌い始めた。周りにいる人たち、清志郎が好きな人たちの万感の思いを受け止めるように歌い出すチャボ。Leyonaが加わっての1曲であったが、「わかっていてくれる」をチャボと掛け合いながらみんなが歌う。夢のような、といったら陳腐かもしれないが、その場にいた人にとっては疑ってしまいたくなるような瞬間だったと思う。



 続いて、「キモチE」。これは意外だった。RCの中には、「これは清志郎以外ありえない」という感じの曲があるけど「キモチE」はその一つだと思っていたからだ。しかし、アコギ一本で見事にやりきった。あまりのやりきり振りに終わった後「見たか、クロマニヨンズ!」「アコギでもロックできる」と言っていた。ちなみにチャボはマーシーとメル友だそうです。




 そして、「自分は清志郎みたいなすごいシンガーじゃないけど、大好きな曲なんで歌っていいかな?」と語ってから、片山さんに「スローバラード」と耳打ちする。そう、チャボが「スローバラード」を歌ったのだ。この最高のロッカバラードを傍らで聴き続けた身として、自分で歌うことに相当な思いがあったと思う。その思いを込めて歌われた「スローバラード」は、少し冷えてきた石狩の夜空に舞い上がっていった。歌い終わった後、夜空を指さすチャボ。もちろんその指さす向こうには、きっといたんだろうな。



 悲しみを表に出さないチャボも、このときばかりは感極まっていた。片山さんが「チャボ泣いちゃうから」と優しくフォローしていた場面が良かった。



 この後、再びカバー曲I Can't Get Over You を歌った後、最後は清志郎に関わったWessのスタッフなどを呼んで、みんなで「雨上がりの夜空に」を歌った。普通であれば、清志郎は清志郎であって、代わりは誰にも務まるはずもないのだけど、この日のチャボのライブは、清志郎がそこにいてもおかしくないような幸せな空気でいっぱいだった。こんなライブは生まれて初めてである。泉谷ではないけど、本気で「生きてるんだぁ」と思った。



Woodstock
Everybody I Have The Blues
Blue Moon
Lonely Summer Night
All My Loving(with 浜崎貴司)
君が僕を知ってる(with Leyona)
キモチE
スローバラード
I Can't Get Over You
雨上がりの夜空に



鳴りやまぬアンコール。応えられることはなかったが、とても満ち足りた気持ちになったライブだった。ありがとう、チャボ。